ブローカーも青田刈り?⑫
●●Bさんの抵抗●●
「Bさん御理解いただけましたか?」
「なんで、退院なんだ!」
「先ほどお話しましたとおりです。お家がないなら、あと1日、2日様子を見ますけれど、帰るところがあるなら退院というのが主治医の意見です」
「先生を呼んでくれ!」
「今、診察中ですから無理です」
「先生の言うことなら聞くけど、事務長の言うことは聞かないぞ!」
「その先生と相談して決めました」
「どこに帰れと言うんだ! どこに帰るところがあるんだ!」
「いえ、ちゃんと分かっていますから」
「何を分かってるんだ! 何を調べたんだ! 暴れるぞ!! この野郎!!」
「暴れてもいいですけれど・・・ 暴れて、警察が来て困るのはBさんですよね」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「ところで、Bさんお姉さんいらっしゃるでしょ?」
「あんな奴はこっちから縁を切ったんだ!!」
「そうですか・・・ お姉さんに連絡が付けば一番いいのにね・・・」
「なんでだ?」
「Bさん、私はBさんが一番いい方法を取りたいんだけれど・・・」
「どういうことだ?」
「身内が身元引受人になるのが一番いいんでしょ?」
「なんだ、全部知ってるのか?」
「大体のことは・・・」
「Wから聞いたのか?」
「そうですね」
「あいつがどんな奴か知ってるか?」
「詳しくは知りませんが、何となくは・・・」
「死んでも、Wとあの教会には戻らんぞ!!」
「なんでですか?」
「宿泊施設なんていうのは、名前ばかりだ・・・ 行先のないホームレスを集めてきて、6畳に10人位詰め込んでやがる・・・ あの匂いを思い出すだけで気持ち悪くなる・・・ 更生施設なんて笑わせやがる!! 体のいいタコ部屋だよ!! 体の丈夫な奴は作業員として働かせ日当をかすめる・・・ 体の悪い奴は病院に送って生保申請をする・・・ 俺みたいな奴は当面住まわせて更生施設ということで、国から金を取る・・・ 飯なんてな、昔から教会はパンとスープだとか言って・・・ どこかから安く買ってきたパンの耳と薄い味噌汁だぜ!! 奴ら、和洋折衷でご馳走だなんて笑ってやがる・・・ 俺なんか持ってた金まで半分取られたんだぜ!! 本当に塀の中のほうがどれだけましか!!!」
「そうですか・・・ でも、このままだと、どうしようもないですね・・・」
「事務長さん、見逃してくれ!! お願いだ!!」
「見逃してくれってどうするの?」
「逃げるの手伝ってくれ!!」
「それは無理です! 見て見ぬふりする位ならできますが・・・」
「Wはどうせ、病室の外の廊下にいるんだろ?」
「そうですね」
「ちくしょう!!」
「取りあえず着替えてくださいね・・・ それと、これは救急搬送された時に、救急隊から預かったBさんのポケットに入っていたWさんの携帯電話番号の紙です」
「これさえ持ってなかったらな・・・」
「まあ、今さらしょうがないですから、取りあえず着替えましょう! 着替えてるってWさんに伝えてきますから・・・」
やっぱり、そういうことなんですね・・・ でも、病院で出来ることは何もない・・・ 嫌な役目です・・・
以下 ●●Bさん最後の抵抗も空しく・・・●● は⑬に続く