医療訴訟60
●●B弁護士の本意●●
B弁護士からの電話連絡で、軽いジャブを打ちあったあと、話は本題に入っていきます。
「ところで、B弁護士、今日の本題は何でしょうか?」
「そうそう・・・そうでしたね・・・」
「カルテ開示の件でしたら、いつでも申請・請求してください」
「それは、そうさせて貰いますが、開示手数料はどのくらいですか?先日頂いた、カルテ開示のしおりには、手数料+実費となっていましたが・・・コピー代だけでよろしいのですか?」
「手数料として、5千円とコピー代、1枚10円になります」
「なるほど・・・」
「意外と高いですね・・・」
「そうですか?コピーを200枚も300枚も取って、それを綴じて・・・その行為に人が掛かりきっりになるわけですから・・・人が労力をかけるわけですから当然の金額じゃないですか?」
「そうですか・・・まあ、妥当でしょうね・・・私はそう思いますが、依頼者はそう思わないわけでして・・・」
「そういうことですか・・・」
「そういうことです」
「と言われても、これは、日本医師会の診療情報開示にかかる指針に基づいて決定しました、院内規約ですので変えるわけにはいきません」
「まあ、そうでしょうね・・・ところで、N事務長は今回の件のことをどう思っておられますか?」
「どうとは?」
「ことの成り行きから考えて、どうお考えになられますか?」
「W氏が亡くなられたことの原因ですか?」
「それも含めて、W家の訴えについてもです」
「W氏が亡くなられたことは、残念だと思いますが、そのことを当院に責任を取れというのはどうかと思います。当院で亡くなったのなら、まだ分かりますが、現実に、転医してから1か月も△△病院さんに入院されていたわけですから」
「そうですか?」
「そうです」
「○×病院さんでは、治療について絶対の自信があるということですね?」
「まあ、そういうことです・・・もちろん、先日、医師から説明があったとおり、治療方針はその都度変更もあり得ますが、現在の医療でのスタンダードな医療行為はしたということです」
「でも、家族は納得していない」
「それは、承知しておりますが、家族さまへの説明も充分にさせて頂いたと思っております。先日、カルテの一部をお見せしたとおりです」
「説明も充分であったと・・・しかし、相手が理解していなければ充分ではないのかも・・・」
「そうとも、取れますが・・・しかし、これもまた言った言わないの世界ですから」
「そこでですが、これは、私の提案ですが、このややこしい状況を打開するためにはお互いが譲歩しなければいけないと思います」
「どう、譲歩するのですか?」
「W家は、病院で何があったのかは分からないが、W氏の死を受け止め、今後は病院とのいらぬ争いはしない」
「そうですね・・・」
「病院さんも、どちらが正しいかではなく地域で医療を続けていく上で、地域の方々と諍いをすることはマイナスでしょう」
「そうですか・・・それで、どうしろと?」
「和解ということで、どうでしょうか?」
「和解?まあ、それにこしたことはありませんが・・・」
「それでは、私が責任を持って書面を作成しますから」
「ちょっと待ってください。B弁護士が間に入って書面を作るということは、その費用、はたまた和解金ってなことになりませんか?」
「それは、当然でしょう。カルテをコピーするのに手数料がかかるのと同じと考えて頂きます」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「それでは、その方向で進めさせて頂きますから」
「B弁護士・・・残念ですが・・・お断りさせていただきます」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
案の定、そうですか・・・
A氏と一緒じゃないですか・・・
そんな要求飲めるはずがありません!
以下 ●●B弁護士の説得●● は61に続く