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医療・介護のよもやま話

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2008.10.31 金曜日

ショートストーリーⅡ-⑩

医療・介護のよもやま話 — admin @ 10:58:45

●●Gさん搬送●●

家でくつろごうとした矢先に病院から呼出を受け、外泊しているGさんを自宅まで迎えにいくことになったN次長・・・
Gさんの心境やいかに・・・

Gさんの奥さんに電話を入れた後、アクセルを踏みGさん宅に向かいます。
サイレンは仰々しいので、赤色灯のみ回転させます。

「N次長、呼出御苦労さまです」

「いえ、H技師も仕事中でしょ?」

「今、検査も一段落したところだから」

「今日も、時間外の患者さま多いですね」

「全く、24時間休みなし・・・」

「救急病院の定めですね」

「ただし、救急じゃない患者さんも多いけれどね」

「ははは、そうですね・・・」

などと話をしていると、Gさんの家に近付いてきました。
家の前を見ると、Gさんの奥さんが俯いたまま立っています。

「あの女の人が立っている家?」

「そうです」

「綺麗な家だね?」

「中も綺麗でした・・・」

「そうか、新築なんだろうね・・・家のローンも大変だ・・・」

何故か現実的なH技師・・・でも、一家の大黒柱を失ったら、精神的にも金銭的にも大変でしょう・・・

「さあ、着きました。H技師よろしくお願いします」

「じゃあ、ストレッチャーは私が出すから、家族とのやりとりは任せたよ」

「了解です」

車を家の前に着け、ドアを開け、車外に出ます。

「奥さん、Gさんのお迎えにあがりました」

「すみません。夜遅くに・・・」

「いえ・・・で、Gさんの様子はどうですか?」

「体を動かすと痛みが走るようで・・・」

「そうですか・・・」

「本人は家に居たい様なんですが・・・見るに見かねて・・・でも、主人も我慢の限界だと思います・・・」

「それで、病院に電話したことは、Gさん知っているんですか?」

「ええ、申し訳ないが、病院に戻るって言っています・・・」

「わかりました。それなら結構です」

奥さんに先導されて、居間に入ると、眉間にしわを寄せたGさんの横でみーちゃんとあっちゃんがパパの手をさすっています。

「Gさん迎えにきましたよ」

「おじちゃん、パパ、体が痛そうだから、病院に連れて行ってあげて」

「みーちゃん、こんばんは、そうさせていただきます」

「お願いします」

「Gさん、自分でストレッチャーに移れますか?」

「無理です・・・」

「そうですか・・・奥さんこのシーツごと病院にいきますけれど、いいですね」

「はい・・・」

ベッドの高さにストレッチャーを合わせ、間を開けることなくベッドに並べて、ベッドのシーツをマットから外します。
シーツに包んだまま、ストレッチャーに滑らせるのですが、Gさんも大の男ですからシーツが破れることもあります。
H技師が頭の方、奥さんが足の方のシーツの端を持ち、Gさんの腰の下にはN次長が手を入れて移動です。

「一、二の三」

「イタッ!痛い!もっと優しくしてくれ!バカやろー!」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「あなた、我慢して」

「少し動くだけで痛いんダ!」

「我慢して、お願い・・・」

「じゃあ、Gさんストレッチャー上げますから、H技師、お願いします」

「はい、じゃあ上げますよ」

「ガチャ、ガチャ」

「痛いって言ってるだろ!ウー!痛い!静かにやってくれ、バカやろー!」

どうも、体に振動が伝わる度に体が痛いようです・・・
何とか、振動が伝わらないようにストレッチャーを半分持ち上げるようにして運び救急車に乗せました。
その間もGさんは、バカやろーの連発です・・・
顔は歪み、形相が変わっています・・・
普段のGさんとは思えません・・・
奥さんは 「あなた、頑張って」 の連発です。

救急車になんとか乗せ終えるまでに、Gさんから、バカやろーを10回は言われたでしょうか・・・
もう少しの我慢ですからね、Gさん・・・

救急車で搬送中も、救急車の走行の衝撃が伝わる度に、「イタッ!」 と言うGさんの声が聞こえてきます・・・

救急車が病院に到着してから、ストレッチャーを下ろす時、病室へ移動する時、ベッドに移す時、Gさんの顔には脂汗がにじみ、「痛い」の連発が続きました・・・

以下 ●●Gさん頭上げて●● はⅡ-⑪に続く


2008.10.30 木曜日

ショートストーリーⅡ-⑨

医療・介護のよもやま話 — admin @ 11:27:25

●●夜間呼出●●

午後、外泊許可の下りたGさんを自宅まで送り、その後、病院での業務を終えて自宅に戻ったN次長・・・
時計を見ると夜の9:00です。
TVを見ながら、ビールでも飲もうと冷蔵庫のドアを開けた時・・・

「タタラタッタタター・・・」 (一応ゴジラ登場の音)

携帯がゴジラの登場音を唸っています。
病院からの呼び出し音です。
ビールは諦め、しぶしぶ携帯に出ます。

「N次長ですか、当直事務のFです」

「どうされましたか?」

「当直のW医師から電話繋いでくれということですので、お待ちください」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「N次長?」

「はい、W先生どうされましたか?」

「家でくつろいでいるのに申し訳ない。病院に戻ってくれないか?」

「ええ、構いませんが・・・どうされましたか?」

「いやー、Gさんなんだが・・・やっぱり、体中が痛んでSOSだ・・・」

「本人からの電話ですか?」

「いや、奥さんからだった・・・」

「そうですか。それでどうしたらいいですか?」

「申し訳ないが、家まで迎えに行ってくれないか?」

「・・・分かりました。今から病院に向います」

楽しい家族の団らんを過ごしていると思ったら・・・
Gさんもさぞ無念でしょう・・・

ビールは諦め、TVを消して、病院に向います。
病院に着き、医局でW先生の指示を仰ぐと・・・

「N次長、申し訳ないな・・・
やっぱり、無理だったみたいだ・・・
本人が体中が痛いと言って、我慢出来ないようだ・・・
せっかく家に帰って寝ていてはと言うから、薬を弱めにしたのが災いしたな・・・」

「じゃあ、これから家まで迎えに行ってきます」

「そうしてくれるかな・・・」

「一人じゃちょっと無理ですね」

「そうだな・・・当直の検査技師にお願いしておいたから・・・」

「わかりました」

「救急車もスタンバイしているはずだ」

「それでは、行ってきます」

救急搬送口に向かうと、救急車がエンジンを掛けて赤色灯を着けています。

「N次長、こっちこっち」

「Hさん、お待たせしました」

「さあ、行こうか!」

運転席に座り、救急車を出す前に、W医師から渡された電話番号に電話を掛けます。

「○△病院のNです」

「すみません。夜分に・・・」

「奥さんですね。W先生から指示を受けまして、今から迎えに行きますのでお待ちください。10分で着くと思います」

「すみません。よろしくお願いします」

腕時計を見ると10:00を回っていました・・・

以下 ●●Gさん搬送●● はⅡ-⑩に続く


2008.10.29 水曜日

ショートストーリーⅡ-⑧

医療・介護のよもやま話 — admin @ 11:38:13

●●Gさんの送迎●●

Gさんの外泊のために救急車で送迎をすることになったN次長・・・
病院内でのGさんの移動は、看護師もいれば看護助手もいるけれど、Gさんの家で何かあったら、一人では少し無理があります。
幸いなことに、病院とGさんの家が近いので、看護師を一人応援に頼みます。
救急車のストレッチャーの移動は、民家など段差のあるところでは力が要りますが、何故か?男性職員よりも看護師の方が絶対的に力があったりします・・・

翌日の午後、Gさんを病室まで迎えにいくと

「N次長、よろしくお願いします」

「Gさん、具合はどうですか?」

「まあ、見てのとおり・・・良くも悪くも・・・いつもどおりかな」

「・・・じゃあ、行きましょうか?」

「お願いします」

病室のベッドから、ストレッチャーへの移動は看護師の手を借りて、何とか自力で出来ましたが、力を入れる度に、Gさんの顔は苦痛でゆがみます。
主治医のW先生は、その姿を見て

「Gさん、家で何かあったり、痛みが我慢できなかったら、すぐに病院に連絡しなさい。いいですか?」

「はい、W先生・・・でも、今日一晩は我慢しますよ・・・せっかく、皆さんに外出許可いただいたのですから・・・」

「うんうん・・・今日は楽しい時間にしてきて・・・」

「W先生、行ってきます」

「じゃあ、N次長、お願いするよ」

病室を出て、救急搬送口から、救急車にストレッチャーを乗せます。その間も段差などでストレッチャーが上下する度に、Gさんは顔がゆがみます。
大丈夫かな?

ゆっくり、ゆっくり救急車を走らせ、なるべく振動がないように気を配りながらGさんの自宅に向います。
道中、Gさんはずっと目を閉じたままです。何かに思いを寄せているのか、痛みに耐えているのか・・・

「Gさん着きましたよ」

「久しぶりだな・・・何か月振りかな?」

「奥さんと娘さん達が玄関で手を振っていますよ」

「ありがとう・・・」

「何のお礼ですか?」

「家まで送ってくれて・・・」

「何言ってるんですか、患者さまの送迎は、どなたにでもしますから」

「・・・今日は、楽しい時間を過ごさせてもらうから・・・」

「そうしてください。さあ、家に入りましょう」

「うん・・・」

救急車を家の前に止め、ストレッチャーを下ろします。
Gさんの家は、新築で買ったのでしょうか・・・
小さな庭がある、建坪30坪くらいの可愛らしい家です。
小さな子供達と若い夫婦が似合う家・・・
幸せな家族が毎日を過ごすための家・・・

ストレッチャーを玄関から入れ、居間に入ると、居間にベッドが用意されています。
奥さんがベッドを居間に移したようです。

「Gさん、特等席が用意してありますよ」

「本当だ・・・居間が狭くなったな・・・」

「今日は、みーちゃん、あっちゃん、奥さんと水入らずで楽しい時間を過ごしてくださいね」

「そうさせて貰うよ・・・ありがとう・・・」

「また・・・お礼はいいですよ」

「そうだったね・・・」

今日がGさんにとって楽しい時間となりますように・・・

以下 ●●夜間呼出●● はⅡ-⑨に続く


2008.10.28 火曜日

ショートストーリーⅡ-⑦

●●主治医からの要請●●

Gさんの娘達と友達になってから1か月が過ぎました・・・
娘達は毎日元気よく、病院に通っています。
それと反比例するかのように、Gさんが病院内を歩く姿を見かけることが減ってきました。
元気な娘達を連れているGさんの奥さんも、笑顔が少しずつ無くなり、顔も一回り細くなった気がします。
看病疲れでしょうか・・・

「みーちゃん、こんにちは」

「おじちゃん、こんにちは!」

「今日も元気だね?」

「はい、みーちゃんはいつも元気です。でも、パパはお昼もずっとお休みしています」

「そうか・・・パパはお話してくれないの?」

「うん。疲れているから、お休みしているから・・・だから、パパの手をずっと握っていてあげました」

「そうしてあげてね。パパも喜んでいるよ」

「うん。これからもパパが起きるまでずっと手を握ってあげることにするね」

「そうしてあげてね」

Gさんは、疼痛管理のために徐々に薬の量が増えています。
そんなある日、整形病棟から電話で呼び出しがありました。
ナースステーションに行くと、Gさんの主治医のW医師と病棟師長が待っていました。

「N次長、お願いがあります」

「W先生、何ですか?」

「実は、Gさんのことだが・・・」

「Gさんですか?」

「N次長も知っているとおり、病状が悪化しています。今日の回診の時に、本人から一度、一晩でいいから家で家族と過ごしたいと要望が出たんだ」

「そうですか・・・それで、どうしたらいいのですか?」

「今、病棟師長とも相談したんだが・・・認めようかと・・・」

「そうですか・・・」

「それで、Gさんの送迎の手筈をN次長にお願いしたいんだ」

「そういうことですか・・・分かりました。車は、乗用車でいいですか?」

「そうだな、今、相当体が痛いようだから、救急車で寝たままの方がいいな」

「分かりました。いつですか?」

「早い方がいいな・・・明日とか大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫です」

「それじゃあ、明日の午後、15:00に出発ということで、手配をお願いします」

「了解しました・・・でも、家で・・・外泊しても大丈夫ですか?」

「痛みさえ出なければ大丈夫なんだが・・・」

「お迎えは?」

「翌日の午後13:00で・・・」

「了解しました。どちらも救急車ですね?」

「それで、お願いする」

「運行予定表に入れておきます」

Gさんからの要望ということで、外泊を認めたW医師・・・
多分、Gさんにとって、我が家で過ごす、最後の家族だんらんになるのでしょう。
一晩だけでも、何事もなく、楽しい時間を過ごして貰いたいものです。

以下 ●●Gさんの送迎●● はⅡ-⑧に続く


2008.10.27 月曜日

ショートストーリーⅡ-⑥

●●Gさんの娘達●●

当直の夜、Gさんから思いもよらぬ話を聞き、戸惑いを感じたN次長・・・
次の日は、病院内でGさんに会いましたが、いつものとおり、挨拶を交わし少し立ち話をしました。
その翌日のお昼過ぎのこと・・・

「事務のおじちゃん!」

振り返ると、Gさんの上の娘が立っています。
その数歩後ろには、Gさんの奥さんが下の娘と手を繋いでいます。
2人とも微笑みながら、こちらを見ています。
Gさんの奥さんが会釈をしたので、会釈を返すと・・・

「おじちゃん、こんにちは」

とGさんの上の娘が言い、そのポニーテールにした小さい頭をペコリと下げます。

「こんにちは。今日もお見舞いですか?」

「はい。パパにお昼ごはんを食べて貰いにきました。」

「そうですか。お手伝いしてきたの?」

「はい。でも、みーちゃんも一緒に食べました」

「そうなの?美味しかった?」

「パパがあんまり食べないから。みーちゃんが食べてあげました」

「そうか・・・みーちゃんって言うんだ?」

「そうです。みよこだからみーちゃんです」

「みーちゃん。はじめまして」

「あっ、そうか、おじちゃんとお話するのははじめてでした」

「そうですね」

みーちゃんは、年の割にしっかり話ができます。

「それで、みーちゃんはおじちゃんに何かご用ですか?」

「はい。パパがこの前おじちゃんとお友達になったって言っていたから、よろしくお願いにきました」

「そうなんだ。こちらこそヨロシクお願いしますって、パパに伝えてください」

「はい」

そう言って、みーちゃんのモミジの葉のように小さい手を取り握手をすると、みーちゃんが何かを思い出したようです。

「パパがね、みーちゃんとずっとそばにいたいなっていうから・・・病院にお友達はいないの?って聞いたの・・・そしたら、おじちゃんとお友達になったっていうから、ごあいさつにきました」

「ありがとう・・・みーちゃん。これからよろしくお願いします。みーちゃんとも今日からお友達だね」

「そうだね、パパのお友達だったら、みーちゃんともお友達です。それじゃおじちゃん、さようなら」

「はい、さようなら」

「あっ、おじちゃん、ちょっと待って!」

と言うと、みーちゃんは妹の手を取り戻ってきました。

「おじちゃん、妹のあっちゃんです」

「あっちゃん、はじめまして」

「こんにちは」

「あっちゃん。パパのお友達だからごあいさつして」

「お姉ちゃん、何て言ったらいいの?」

「よろしくお願いしますって言えばいいの」

「うん、わかった。おじちゃん、よろしく」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

Gさんの奥さんが微笑みながら近づいてきて、2人に言いました。

「さあ、帰りましょ。おじさんはお仕事中だからね」

「はーい」「はーい」

Gさんの奥さんはN次長に向い、頭を下げ

「今後とも、主人の話相手になってやってください。よろしくお願します」

「いえ、とんでもありません。そんなに改まって言われる程のことではありませんから」

「はい、ありがとうございます。それじゃあ、一旦家に帰りますので・・・2人ともおじさんにご挨拶は?」

「おじちゃん、さようなら」「さようなら」

「さよなら」

なるほど、Gさんが、家族に自分のこと忘れて欲しくないと言った意味が理解できます。
この娘達、本当に可愛い・・・
本当にいい娘達・・・

以下 ●●主治医からの要請●● はⅡ-⑦に続く


2008.10.26 日曜日

ショートストーリーⅡ-⑤

医療・介護のよもやま話 — admin @ 12:12:42

●●当直の夜●● 

初めて、Gさんと会話を交わした日から1か月が過ぎようとしていました。
その間も、病院内で度々言葉を交わし、患者さまと職員という関係が何事もなく過ぎ去っていました。
ただ、日を追うごとにGさんの歩く姿は痛々しくなり、見ているこちらにまで、その体の痛みが伝わってきます。
疼痛管理をしているからか、日中も寝ていることが多くなっているような気もします。
病室から出ても、病棟の談話室で下を向き、痛みに耐えながらソファーに腰を下ろしています。

家族はというと、まだ20代かという笑顔の可愛い奥さんと2人の娘が毎日、朝、昼、夜と食事時間に合わせて病院にお見舞いにきます。
2人の娘はその愛くるしさのせいか、病院中の人気者・・・
その姿がGさんの喜びなのかな?

そんな日々を過ごしていると、N次長に当直の依頼が舞い込みました。
どうしても、当直者の都合が悪く、急遽登板です。
いつものように、時間外診察の受付、救急対応に追われていると・・・

「N次長、今日は当直ですか?」

「あっ!Gさん、こんな時間にお散歩ですか?」

「そうなんだ・・・日中は他の患者さんが一杯いるから・・・」

ロビーの時計に目を向けると夜の11:00を回っています。

「いいじゃないですか、他の患者さまがいても・・・」

「僕はいいけれど、他の患者さまに迷惑が掛かるから・・・この通り、普通の人の歩く速度の1/3だから・・・」

「そんなこと気にしなくてもいいですよ」

「まあ、そうだけど、実際は歩いては休み、歩いては休みだから僕にとってもこの時間がいいんだ」

「そうなんだ・・・」

「それに、昼間寝ているから、この時間に寝られなくなるし・・・」

「それならばいいです」

「それに、昼間は家族の相手もしなくちゃいけないから・・・」

「娘さん達可愛いですね」

「ありがとう・・・それが、今の僕にとっての心の支えであって、そして悩みでもあるけれど・・・」

「悩み?」

「娘達が僕のこと忘れないかな?って」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「忘れられることが、一番怖い・・・死ぬことは、しょうがない・・・でも、家族にだけは僕のこと覚えていて欲しい・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「僕が死んでも、毎日じゃなくてもいいから、時々でもいいから僕のこと思い出して欲しい・・・こんなこと勝手な言い分だと思うけれど・・・」

「Gさん・・・Gさんの話を聞くだけしか出来ないし、そうですよねとか、コメントも出来ません・・・」

「いいです。それでいいです。だから、N次長に話しているんです」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「Gさん、聞いていいですか?」

「何でもどうぞ」

「娘さん達は、Gさんのこと・・・Gさんの病気のこと理解しているんですか?」

「上の娘は、何となく・・・下の娘は?です」

「そうか・・・」

「今日もね、下の娘が、パパもうすぐ天国に行くの?って聞くんだ・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「天国へは、お仕事でいくの?だって・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「そうだね、天国に行って、お仕事しなきゃねって言っておいた」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「その程度の理解です・・・でも、いいんだ、それでも・・・僕が居なくなっても、パパは天国で仕事してるって思ってくれたら」

「そうですか・・・」

「ごめん。こんな話して・・・夜になると、誰かと無精に話したくなるんだ!この年になって、夜一人になるのが怖くて・・・なんて言えないしね・・・」

「いつでも、話聞きますよ。それしか出来ないけれど・・・」

「ありがとう・・・」

「看護師や医師に言えないこともあるでしょうし・・・」

「そうそう、先生にこんなこと言ったら困るだろうし、看護師に言ったら、何言ってるのなんて怒られるからね」

「そうですね・・・皆、優しいから・・・でも、応えられないこともあるから・・・話聞くだけでいいのなら、暇な事務員の私にしてください」

「そんなことはない・・・N次長も、いつも忙しそうにしているから、今日当直って聞いたから、降りてきたんですよ」

「それじゃあ、当直の回数増やしましょうか?」

「そうしてくれる?それは有り難い、僕の寝られない夜の話相手が出来る!」

「じゃあ、考えておきます」

「ははは、ちゃんと考えてくださいよ!」

「分かりました。明日、次長命令でも出しておきます」

「お願いしますよ」

「了解しました。Gさま」

「ははは・・・」

以下 ●●Gさんの娘達●● はⅡ-⑥に続く


2008.10.25 土曜日

ショートストーリーⅡ-④

●●Gさんの家族●●

Gさんの主治医であるW先生の話しを聞き、Gさんの置かれている状況が理解出来ました。
だから、あのような達観したような振舞いが出来るのでしょうか・・・
W先生に話を聞いたあと、看護部との当直時間帯の新入院患者数などの確認をするために整形病棟にあがると、当直看護師が話掛けてきました。

「N次長、お疲れさま」

「お疲れ様です」

「それにしても、深夜の救急搬送のラッシュには参った、参った・・・」

「そうですよね、日付が変わってから、交通事故4件で、全て入院ですものね」

「やっと、今になってカルテの記入が終わりそうな状況よ」

「それはそれは、ご苦労さまです」

「ところで、昨晩Gさん下に降りていたでしょ?」

「ええ」

「何か言っていた?」

「余命、数か月だって・・・」

「そう、自分で言ったのか・・・」

「確かに、ご自身で言われましたけれど、何か?」

「うん、いいの・・・N次長のこと、戻ってから話していたわよ」

「そうですか、何て?」

「同い年なんですよーって」

「それだけ?」

「んっ!後は、N次長さんておせっかいな人?って笑って言っていたわよ」

「ハハハ、それは言えてる」

「まあ、後は取り留めのない話。あの人はあんまり余計なこと話さないから・・・」

「ご家族がいらっしゃるんでしょ?」

「そうよ、奥さんとお子さんが2人」

「子供はまだ小さいわけだ・・・」

「そう・・・5歳と3歳の女の子。毎日、昼、夜とお見舞いに来ている・・・」

「女の子、2人か・・・」

「この子達がまた可愛いの・・・2人ともポニーテールにして、ニコニコ笑って・・・看護師のお姉さんこんにちはって・・・」

「そうなんだ・・・」

「Gさんも、体痛いはずなのに、子供をベッドに乗せて、いろいろと話をしたりしているわ・・・」

「何だか、切ないですね・・・」

「そうね、一生懸命、時間を惜しむように話しているわ」

以下 ●●当直の夜●● はⅡ-⑤に続く


2008.10.24 金曜日

ショートストーリーⅡ-③

医療・介護のよもやま話 — admin @ 11:26:07

●●主治医に聞く●● 

あと数か月しか生きられないと自分で言うGさん・・・
何の病気なのでしょうか?
同じ年齢の同じ男性として気になります。
こういう時は、主治医に直接聞くに限ります。
病気を知ってこそ、事務系は事務系らしく患者さまに対応出来るというものです。

Gさんと初めて会った、当直明けの朝、Gさんの主治医のW医師が出勤してきたところを見かけ、医局を直撃しました。
W医師は、白髪混じりの病院一温厚なダンディー整形外科医です。

「G先生、おはようございます」

「N次長、おはよう・・・どうしたの、朝から不精ひげなんか生やして?」

「すみません。昨晩、急遽当直入りしたもので・・・」

「そうなの・・・それは、ご苦労さま・・・昨晩の救急搬送患者のことなら、これから病棟に診にいくよ・・・」

「あっ!違います。そのことじゃなくて・・・」

「何ですか?」

「実は、昨晩、整形病棟に入院されているGさんが降りてこられまして、お話少ししたんです」

「あー、Gさんか・・・Gさん、何かあった?」

「特別何かあった訳ではありませんが・・・」

「どうしたの?」

「タバコを吸いに降りてきたのですが、自分は後数か月しか生きられないって言われたから・・・」

「そう・・・自分で言ったんだ・・・」

「はい、それで整形病棟に入院していて、後数か月の寿命って何の病気なのかなって・・・」

「それを聞きに来たの?」

「はい・・・」

「まあ、Gさんが自分で余命数か月と言ったのなら構わないか・・・N次長にはこれからいろいろとお願いすることもあるだろうし・・・」

「お願い?」

「まあ、お願いする時が来たら看護部を通して連絡するから・・・」

「はあ・・・」

「そうか、GさんとN次長は年齢的にも同じくらいだね」

「ええ、全く同じ年です」

「そうか・・・これからもGさんが望んだら、話相手になってあげてくださいね」

「それは、心得ています」

「Gさんは、簡単に言うと骨癌、骨に癌が転移してるんだ・・・」

「骨に癌?」

「そうだよ、ほらそこにある本に詳しいこと書いてあるから、勉強するなら持っていっていいよ」

「あとで、お借りします」

「もう、完治はしないのですか?」

「そうですね・・・私の大学で出来る限りの治療はしたんだが、効果がなくてね・・・家に近いこの病院に転医になったんだ・・・もちろん、家族も本人も承諾の上で・・・」

「つまり、この病院では、積極的な治療はしないと・・・」

「そういうことです」

「理解しました・・・」

「そういうことがから、N次長は年も同じだし、院内でGさん見かけたら声掛けてあげてください」

「了解しました」

そういうことですか・・・

以下 ●●Gさんの家族●● はⅡ-④に続く


2008.10.23 木曜日

ショートストーリーⅡ-②

医療・介護のよもやま話 — admin @ 11:08:05

●●Gさんの病気●● 

顔をしかめながら、歩行器を使って歩くGさんは、喫煙室でタバコを吸うわけでもなくソファーに座っています。
こんな時は、生来のおせっかい癖が出ます。

「ライター忘れましたか?」

「さっきの事務員さん?」

「そうです・・・火、貸しましょうか?」

「ライターは持っています」

「そうですか・・・」

Gさんが、首から下げているネームプレートを見て言います

「Nさん、事務次長さんですか・・・今日は泊まりですか?」

「そうです・・・今日の当直予定だった人が急に来られなくなりまして、急遽リリーフです」

「じゃあ、今日は24時間勤務?」

「そうなりますね・・・」

「体力ありますね・・・うらやましい・・・」

「・・・新聞でも持ってきましょうか?」

「すみません・・・ありがとう・・・」

そう言ったあと、喫煙室の隣にある待合室の新聞ホルダーから、朝日新聞とサンケイスポーツを取り、喫煙室に戻ろうとすると・・・
Gさんが、歩行器に摑まりながら喫煙室を出てきます。

「タバコ吸わないのですか?」

「やっぱり、吸うの止めました・・・そんなに吸いたいわけでもないし・・・」

「そうですか・・・まあ、タバコは百害あって一理なしです・・・」

「まあ、私の場合、百害あろうが千害あろうがあまり関係ないですけれど・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「Nさんは、私の病気はご存じないですよね?」

「ええ」

「私は寿命を宣告されています」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「この病院には、家が近いから・・・家族が病院に通い易いから、昨日から入院させて頂いています」

「・・・お家はどちらですか?」

「○○町です」

「そうか、それなら歩いて10分掛からないですね」

「あと数か月間になると思いますが、宜しくお願いします」

「・・・ええ、何かありましたら、何でも言ってください。事務員の私に出来ることはさせて頂きます」

「ありがとう。ところで、その新聞、病室に持っていってもいいかな?」

「ええ、もう入院中の皆さん誰も読まれませんし、0時を回ったら処分しますから・・・でも、他の病院職員には内密に!」

「了解、了解。ところでNさんはお幾つですか?」

「35歳です」

「同い年ですか・・・今後とも、宜しくお願いします。それじゃあ、おやすみなさい」

そう言って、Gさんは新聞ホルダーから新聞を外し、病室に戻っていきました・・・
新聞は歩行器を持つ手に挟み込み、歩行器にすがり付くように歩くGさん・・・
歩く姿は、後ろ姿を見ても痛々しいです。
自分で、自分の寿命があと数か月と言いきるGさん・・・うーん、同じ年齢なのに・・・
あと、数か月の寿命のGさんは整形病棟に入院?何の病気?

以下 ●●主治医に聞く●● はⅡ-③に続く


2008.10.22 水曜日

ショートストーリーⅡ

いい病院には、必ずドラマがある。
医師、看護師、コ・メディカル、事務系職員・・・
働く者が人で、患者さまも人・・・
人間同士だから、感情がある・・・
感情を顔には出さないが、心は揺れる・・・
だから、小さなドラマがそこにある。
そんな、ちょっとした話。

まだ、N事務長が事務長ではなく、事務次長の頃・・・
夜間救急事務当直勤務に当たった夜のこと・・・

夜も10:00を過ぎると、病院は静まり返ります。
しーん・・・てな感じです・・・
9:00が消灯時間で、お見舞いに来ていた人達も三々五々家路に着き・・・
眠くなくとも、患者さまは看護師に病室に押し込まれます。
けれど、整形病棟の患者さまは元気な方が多いから、こんな時間に眠れないよなんて不満もちらほら・・・

そんな訳で、10:30を過ぎると、眠れない整形病棟の患者さまが一人、二人と外来受付に降りてくる。
多少は大目に見てやり、新聞など読んでいる姿を監視するのも、仕事の内です。
当時はまだ、喫煙室など病院内にあった頃ですから、タバコ片手にロビーをウロウロする患者さまも・・・

そんな中で、年の頃30代半ばの男性の姿が・・・
初めて見る患者さまです。入院したてかな?
歩行器で、ゆっくりゆっくりロビーを歩いてきます。
顔をしかめながら・・・体中が痛そうです。
大丈夫かな?と思いながら、見つめていると目と目が合いました。

「こんばんは!大丈夫ですか?」

「ええ、なんとか・・・」

「どちらに行かれますか?」

「ちょっと寝られないから、タバコを1本吸おうと思って・・・」

「喫煙室、分かりますか?」

「ええ、分かっています。ご心配なく・・・」

「何かあったら、声掛けてくださいね」

「ありがとう・・・」

それにしても、一歩一歩、歩くたびに激痛が走るのか、顔をしかめながら歩いています。
大丈夫かな?お名前だけは確認しておくのが賢明ですね・・・

「ナースステーションに声掛けてきましたか?」

「はい・・・」

「何病棟でしたか?」

「整形です・・・」

「そうですか、力になれることがあれば、遠慮なく言ってくださいね」

「はい・・・」

そう言って、彼は喫煙室に入っていきました。
一応、確認だけはしておくのが、事務当直の役目です。

「ぷるぷる」 (かちゃ)

「整形病棟です」

「事務当直のNです」

「お疲れさまです。何かありました?」

「今、整形病棟の患者さまが喫煙室に来ておられますから、確認を・・・」

「Gさんですね・・・」

「病棟も把握しているなら結構です」

「主治医のW先生がなるべく好きにさせてやれって言うから・・・」

「そうなんですか・・・」

「何かあったら、連絡お願いしますね」

「はい、了解しました・・・」

医師が好きにさせてやれって、どんな病気なんでしょう?

以下 ●●Gさんの病気●● はⅡ-②に続く
 


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