ショートストーリーⅡ-⑩
●●Gさん搬送●●
家でくつろごうとした矢先に病院から呼出を受け、外泊しているGさんを自宅まで迎えにいくことになったN次長・・・
Gさんの心境やいかに・・・
Gさんの奥さんに電話を入れた後、アクセルを踏みGさん宅に向かいます。
サイレンは仰々しいので、赤色灯のみ回転させます。
「N次長、呼出御苦労さまです」
「いえ、H技師も仕事中でしょ?」
「今、検査も一段落したところだから」
「今日も、時間外の患者さま多いですね」
「全く、24時間休みなし・・・」
「救急病院の定めですね」
「ただし、救急じゃない患者さんも多いけれどね」
「ははは、そうですね・・・」
などと話をしていると、Gさんの家に近付いてきました。
家の前を見ると、Gさんの奥さんが俯いたまま立っています。
「あの女の人が立っている家?」
「そうです」
「綺麗な家だね?」
「中も綺麗でした・・・」
「そうか、新築なんだろうね・・・家のローンも大変だ・・・」
何故か現実的なH技師・・・でも、一家の大黒柱を失ったら、精神的にも金銭的にも大変でしょう・・・
「さあ、着きました。H技師よろしくお願いします」
「じゃあ、ストレッチャーは私が出すから、家族とのやりとりは任せたよ」
「了解です」
車を家の前に着け、ドアを開け、車外に出ます。
「奥さん、Gさんのお迎えにあがりました」
「すみません。夜遅くに・・・」
「いえ・・・で、Gさんの様子はどうですか?」
「体を動かすと痛みが走るようで・・・」
「そうですか・・・」
「本人は家に居たい様なんですが・・・見るに見かねて・・・でも、主人も我慢の限界だと思います・・・」
「それで、病院に電話したことは、Gさん知っているんですか?」
「ええ、申し訳ないが、病院に戻るって言っています・・・」
「わかりました。それなら結構です」
奥さんに先導されて、居間に入ると、眉間にしわを寄せたGさんの横でみーちゃんとあっちゃんがパパの手をさすっています。
「Gさん迎えにきましたよ」
「おじちゃん、パパ、体が痛そうだから、病院に連れて行ってあげて」
「みーちゃん、こんばんは、そうさせていただきます」
「お願いします」
「Gさん、自分でストレッチャーに移れますか?」
「無理です・・・」
「そうですか・・・奥さんこのシーツごと病院にいきますけれど、いいですね」
「はい・・・」
ベッドの高さにストレッチャーを合わせ、間を開けることなくベッドに並べて、ベッドのシーツをマットから外します。
シーツに包んだまま、ストレッチャーに滑らせるのですが、Gさんも大の男ですからシーツが破れることもあります。
H技師が頭の方、奥さんが足の方のシーツの端を持ち、Gさんの腰の下にはN次長が手を入れて移動です。
「一、二の三」
「イタッ!痛い!もっと優しくしてくれ!バカやろー!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「あなた、我慢して」
「少し動くだけで痛いんダ!」
「我慢して、お願い・・・」
「じゃあ、Gさんストレッチャー上げますから、H技師、お願いします」
「はい、じゃあ上げますよ」
「ガチャ、ガチャ」
「痛いって言ってるだろ!ウー!痛い!静かにやってくれ、バカやろー!」
どうも、体に振動が伝わる度に体が痛いようです・・・
何とか、振動が伝わらないようにストレッチャーを半分持ち上げるようにして運び救急車に乗せました。
その間もGさんは、バカやろーの連発です・・・
顔は歪み、形相が変わっています・・・
普段のGさんとは思えません・・・
奥さんは 「あなた、頑張って」 の連発です。
救急車になんとか乗せ終えるまでに、Gさんから、バカやろーを10回は言われたでしょうか・・・
もう少しの我慢ですからね、Gさん・・・
救急車で搬送中も、救急車の走行の衝撃が伝わる度に、「イタッ!」 と言うGさんの声が聞こえてきます・・・
救急車が病院に到着してから、ストレッチャーを下ろす時、病室へ移動する時、ベッドに移す時、Gさんの顔には脂汗がにじみ、「痛い」の連発が続きました・・・
以下 ●●Gさん頭上げて●● はⅡ-⑪に続く