職業は?Ⅱ-③
●●患者さまの家族とT君●●
患者さまの家族からは、○×市民病院に転医したいという要望があるものの、現在の病状だと○×市民病院が転医要請に難色を示すだろうと思われる為、自らは転医の電話連絡をしてくれない院長と転医したい家族さまの間に挟まれる形となったT君。
N事務長に助けを求めるものの・・・
N事務長からは、転医させればと冷たくあしらわれます。
更に、もう少し待って貰うように言いなさいと言われています。
いつもながら、T君は辛い立場です。
何故、○×市民病院が転医を受け入れないかというと・・・
一般的に病院は大きくなればなるほど、患者さまの入院日数を短縮しなければなりません。
詳しいことは省きますが、要するに医療・看護技術を駆使して病気を早く治して、入院費が増えない内に早く退院させなさいという厚生労働省からの命令です。
その命令に従わず、のんびり、ゆっくり、だらだらと入院日数を延ばしていると、病院に入る入院費用がどんどん安くなるという仕組みです。
日本国の医療費抑制に、最も有効な方法であり、国民のほとんどがあまり知らない医療の闇の部分。
病院にとっては、頭の痛い至上命題です。
ちなみに、これを平均在院日数って言います。
そして、病院にとっての大きな収入源は入院費ですが、患者さまがただ寝ているだけでは収入は増えません。
患者さまには入院するに値する?手術や処置を受けて貰わなければ、病院の収入アップは期待出来ません。
となると、この患者さまは既に胃カメラ(内視鏡)で止血されており、あとは、点滴など打ちながらの観察入院。
○×市民病院が、素早い動きをしないことにも頷けます。
ましてや、赤字垂れ流しの市民病院なら、動きが遅いのは当然です。
無駄に事務系職員の人数が多いから、それぞれに与えられる権限が民間病院に比べて極度に少ない。
情報伝達速度が遅いことは歴然です。
民間病院のように、医療連携室から担当医に直接、入院要請ありますが・・・なんて言えないでしょう。
市民病院には、市民の雇用を創出する役割もありますから???当然か!
事務系職員は、よき市役所からの天下り先?
いや、天下り先は言い過ぎかな?転出先です。
さて、ケースワーカーのT君は、冷たいN事務長の元を去り、患者さまと家族の待つ病室に向います。
T君も、このケースの転医を○×市民病院がなかなか受けないことは何度も経験済です。
なんとか、いい方法がないかと考えながら歩いていると病室に着いてしまいました。
病室に着くと、患者さまの家族が待ち構えています。
「Tさん。転医は出来ますか?」
「ええ、今、その方向で動いています」
「○×市民病院には、連絡して頂けましたか?」
「はい。医療連携室に連絡しまして、先方の返事待ちの状態です」
「なんで、すぐに転医させて貰えないの?」
「うちの病院はいつでも対応出来ますが、○×市民病院さんは受け入れ準備がありますから・・・」
「だって、いつも通院しているんですよ!」
「そ、そうですか・・・」
(だったら、救急搬送時点で○×市民病院を指名すればよかったのに・・・)
「○×市民病院ならば、家から歩いて5分で行けるけれど、この病院に来るには家から駅まで5分、電車で10分、駅から病院まで歩いて10分も掛かるから遠くてしょうがないわ」
「そうですか・・・」
(25分で着けば充分近いと思うけれど・・・僕なんか通勤に1時間掛かります・・・)
「それで何時に転医出来るのかしら?」
「今日中には返事が来ると思います」
「今日中?そんなに時間掛かるの?」
「多分・・・」
以下 ●●家族の言い分●● はⅡ-④に続く