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医療・介護のよもやま話

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2009.8.31 月曜日

“や”の付く稼業68

医療・介護のよもやま話 — admin @ 15:18:37

●●YさんとN事務長●● 

○×病院の看護部長からの電話を切ったYさんは、肩をすくめながらN事務長を見つめ、N事務長は、ほら見たことかとYさんを見返します。

「あーあ、Yさん。ついに捜査の手がここまで来ましたね」

「何や捜査って?まるでN事務長を拉致、監禁してるみたいやな」

「そうです。病院に一本連絡入れさせて頂ければ、こんなことにならなかったんです」

「そんなら、今から連絡入れーや」

「今からですか?」

「そうや今すぐや!」

「今、Yさんに連れまわされています。って言うんですか?」

「しゃーないな」

「そうですね、看護部長のあの様子だと警察に捜索願を出しそうな勢いです」

「ホンマに、あの女は何仕出かすか分からんからな」

「それは、そうですね。ハハハ」

「笑いごとちゃうで」

「確かに、そうですね。で、どうしますか?」

「5分後に電話くれって言ったから、掛けてくるやろ。なんて言おうか?」

「N事務長は、こちらで預かっている。返して欲しければ金用意しろ!じゃないですか?」

「幾らくらいにするんや?」

「まあ、病院だからお金あんまりないし、事務長なんてものは、そもそも使い捨てのポストですから、出して、せいぜい10万ってとこでしょう」

「10万?それは安いやろ!そんなんで、オレ警察に捕まるのいややで」

「イヤと言われても、私の病院での価値はそんなものです」

「可哀相な奴やな・・・そんな価値か・・・」

「Yさん。冗談ですよ。10万なんて・・・実は、そんな価値も無くて、病院はお金を一銭も出さないと思います」

「・・・価値ゼロか・・・ホンマにホンマ、可哀相なやっちゃな」

「はい、そんなものです」

「で、どうする?」

「電話掛かってきたら、N事務長はここでお茶飲んでるわと言ってくださって結構です」

「ええんか?」

「ええ、ご馳走にもなりましたし、例え実際、Yさんに連れまわされて、電話も掛けさせて貰えませんでしたが、食事してお茶しているのも事実ですから」

「ほな、そうさせて貰うで」

「ええ結構です」
と、N事務長とYさんが話していると、Yさんの携帯電話が鳴り始めます。
Yさんが着信表示を見ると、先ほどと同じ番号、間違いなく看護部長です。

以下 ●●N事務長発見●● は69に続く


2009.8.30 日曜日

“や”の付く稼業67

医療・介護のよもやま話 — admin @ 11:17:19

●●看護部長の電話Ⅳ●● 

ついにN事務長行方不明事件の容疑者の本命であるYさんにたどり着いた看護部長。
これから、Yさんとの本当の会話が始まります。

「おや、○×病院の看護部長さまがオレに何の用や?」

「あら、お言葉ですね」

「と言うよりも、この携帯の番号、何処で仕入れたんや」

「私を誰だとお思い?」

「○×病院の鬼の看護部長さまやな」

「鬼ではございませんことよ。強いて言うならば○×病院の白衣の天使でしょ?」

「白衣の天使ならぬ、悪意の天使や!」

「相変わらず、失礼な物言いですわね」

「まあ携帯番号は、どうせ○×病院の看護師から聞いたんやろ?」

「さあ、どうでしょうか?」

「で、何か用?まさか、この前したオレの検査結果が間違ってたとか言うんじゃないやろな?」

看護部長は、Yさんのカルテをめくりながら、
「えっと・・・先日は胃カメラしてらっしゃるのよね」

「そ、そうや・・・何か?」

「大丈夫、今、カメラの写真見せて貰っているけれど、綺麗な胃されてるわ。これなら焼き肉にしても食べられそうよ」

「や、焼き肉・・・」

「Yさんみたいな病院好きな方は、長生きされますわ」

「そうか・・・」
ホッとした顔付きに戻るYさん。

「今日、お電話させて頂いたのは・・・今、お1人かしら?」

「いや、客人と一緒や」

「あら、お電話していてもよろしいの?」

「ああ、構わん」

「どちらさまとご一緒かしら? もしかして私の知っている人?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「あら、お返事が無いところをみると図星かしら?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「今、どちらにいらっしゃるの?」

「今、□□県だけど・・・」

「□□県とは、随分遠出されてるんですね?」

「ああ、ちょっと野暮用でな」

「どんな野暮用かしら?」

「看護部長に用まで話さんとあかんか?」

「出来ればお願いしたいわ」

「おっ、ちょっと電話掛かってきた。また後で電話くれるか?」

「何ですって?」

「5分後に、もう一度電話くれや! じゃあ! ガチャ・・・ツー、ツー、ツー」

「電話切られたわ」
看護部長はそう言うと、院長、S君、栄養課長に目配せをします。

以下 ●●YさんとN事務長●● は68に続く


2009.8.29 土曜日

“や”の付く稼業66

医療・介護のよもやま話 — admin @ 18:18:36

●●看護部長の電話Ⅲ●● 

Yさんの入院中に、Yさんのお気に入りだったA看護師の携帯電話に無理やりメモリー登録させた、Yさんの携帯電話番号をゲットした看護部長は、院長に向かってガッツポーズを決めています。

「さすが看護部長です。看護師の携帯電話の中身までご存じとは・・・」

「そんなことは、当たり前のことですわ」

「これぞ、労務管理の見本ということですね」

「そういうことですわ。院長も先生方のプライベートまでとは言いませんが、院内での医師と患者さまとの関係にはお気を配りくださいませ」

「これは、まいりました。ハハハ」

「もう、笑いごとじゃありませんことよ」

「失敬」

首脳陣2人の話を黙って聞いていた医事課のS君と栄養課長は、顔を見合わせて苦笑いをしています。
そして、S君が待ちきれない様子で、看護部長に話しかけます。

「看護部長、折角Yさんの携帯番号が分かりましたので、早速、Yさんにご連絡をお願い出来ますか?」

「そうね、そちらが先ね」

「お願いします」

「出来れば、17:00迄にN事務長と連絡を取りたいんです」
保健所へ書類の提出が迫っている栄養課長もS君に続きます。

「何ですの?栄養課長まで・・・あーそうでしたね、保健所の提出書類の件かしら?」

「はい、お願いします」

「でも、まだYさんとN事務長が一緒だと決まったわけじゃないことよ」

「そうですが・・・」

「まあ、掛けてみましょう」

看護部長はそう言うや、携帯電話を持ち直し、A看護師から聞いたYさんの携帯番号をプッシュします。
「090-□□□□-○893・・・プルル、プルル、プルル・・・」

その頃、YさんとN事務長は、人工池からのいい風を受けながら、ホッコリと寛いでいます。
N事務長も、もうすっかり病院のことを忘れ、のんびり気分です。
その時、Yさんの携帯電話が突然鳴り始めました。
携帯電話を取り出したYさんが、怪訝な顔をしています。

「どうしたんですか?」

「いやな、知らない番号からだからな・・・滅多にないことだから・・・この携帯は仕事用じゃなくてプライベート用だから、知らない番号から掛かることは滅多にないんや」

「でも、出たらどうですか?」

「そやな、ほな出るわ」
そう言って、携帯電話を着信します。
「Yやけど、どちらさん?」

「あら、Yさんお元気ですか?」

「どなたや?」

「あら、お忘れになったのかしら?」

「お忘れになったも何も、あんたの声は聞き覚えないわ」

「そんなこと言って、毎日お顔合わせているじゃない」

「毎日?」

「ええ、ほぼ毎日ね」

「誰や!」

「もう、イケズね。Yさん!」

「ホンマに誰や?」

すると、いつもの口調に戻った看護部長は、
「Yさん、本当にお分かりになられませんこと?」

「んっ! その話し方は・・・もしかして・・・あんたは」

「そう、○×病院の、看・護・部・長」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

以下 ●●看護部長の電話Ⅳ●● は67に続く


2009.8.28 金曜日

“や”の付く稼業65

医療・介護のよもやま話 — admin @ 16:03:26

●●看護部長の電話Ⅱ●● 

Yさんのカルテに記載してあった電話番号はYさんの会社・・・Y企画の電話番号でした。
Yさんとは連絡を取れませんでしたが、まだYさんを探す手段が残っています。
Yさんが自分の連絡先を無理やり押し付けた、Yさんのお気に入り看護師Aさんに、看護部長は連絡を入れます。

「もしもし、Aさん。夜勤明けに電話してゴメンなさい。もう起きてた?」

「は、はい・・・先ほど・・・起きました」
どうやら、この電話で起きたようです。

「今、話せるかしら?」

「は、はい・・・ちょっと待ってください」
ゴゾゴゾと動く音がしています。

「大丈夫?」

「だ、大丈夫です。なんでしょうか?」

「Aさん、前にYさんが入院した時、無理やりYさんから連絡先渡されたでしょ?」

「は、はい。Yさんて、あのYさんですか?」

「そうそう。あのYさん」

「ええ、無理やり渡されて、しつこく食事に誘われました」

「その連絡先は携帯電話番号だった?」

「ええそうです」

「それどうした?」

「まだ、携帯の開かずの要注意グループにメモリー登録してあります」

「その番号教えて頂けない?」

「ええ、構いませんが・・・どうされたんですか?」

「ちょっとね、Yさんに聞きたいことがあってね」

「そうですか、じゃあ、すぐ掛けなおしますね」

「そうしてくれる」

「はい」

看護部長は一旦電話を切って、院長に話しかけます。

「Yさんの携帯電話番号が分かりそうです」

「そうですか。でも看護師も大変ですね。患者さまから電話番号押し付けられたりして」

「そうなんです。院長を含め先生方には、もう少し看護師の大変さを分かって貰わなければいけませんわ」

「ははは」

「笑いごとじゃありませんわ」

「失敬・・・」

と会話をしていると、A看護師から看護部長の携帯に連絡があります。
「もしもし、Aさん?」

「はい。今から電話番号言いますね」

「はい、どうぞ」

「でも掛けたことありませんから、本当に繋がるかは知りませんよ」

「分かりました。番号お願いします」

「090-□□□□-○893です」

「ありがとう」

「どういたしまして。でも、もしYさんに繋がっても、私から番号聞いたって言わないでくださいね」

「もちろんよ」

以下 ●●看護部長の電話Ⅲ●● は66に続く


2009.8.27 木曜日

“や”の付く稼業64

●●看護部長の電話●● 

N事務長とYさんが隣の県のログハウス造りのカフェのデッキテラスでくつろいでいる頃、
○×病院の応接間では、看護部長がT君の持ってきたYさんのカルテに書かれた電話番号に電話を掛けています。

「看護部長、落ち着いてお願いしますよ」
と言う院長に、看護部長は二コリと微笑み返します。

「プルプル、プルプル、プルプル、かちゃ」

「もしもし」

「はい、Y企画です」
野太い男性の声です。
どうやら、病院にYさんが示した電話番号はYさんの会社?のようです。

「○×病院ですが、Yさんはいらっしゃいますか?」

「社長ですか?」

「そうかしら、社長さまかは分かりませんけれど・・・YKさんです」

「社長です。社長は、今、外出中です」

「そうですか・・・」

「どんなご用件でしょうか?」

「大した用事じゃありませんけれど、少々お聞きしたいことがありまして」

「急ぎの用なら、ご連絡致しますが」

「今日は、お昼から外出かしら?」

「朝からずっとですが、何か?」

「何時頃御戻りでしょうか?お帰りになられる頃にもう一度お電話させて頂きますわ」

「さて、何時になるかは、分かりませんが、連絡は取りますよ」

「そう・・・またご連絡させていただきますわ」

「そうですか、社長から連絡入ったら、○×病院から連絡があったことは伝えておきます。ちなみに○×病院のどちらさんですか?」

「○×病院の看護部長のAです」

「これはこれは、看護部長さまですか。承知いたしました。ご連絡があったことは必ずお伝えさせていただきやす」

「ご丁寧にありがとう」

「どういたしまして」

「かちゃ」 「カチャ」
受話器を電話に戻し、院長に頷きながら話始めます。

「Yさん会社にはいらっしゃらないようですね」

「と言うことは、N事務長と一緒にいる可能性はあるということですね」

「そういうことになります」

「それでは、携帯番号が分かれば、N事務長のこと分かるかも知れませんね」

「はい。番号を知っていそうな看護師に電話してみます」

「そうしてくれるかな」

「はい」
そういって、一旦机の上に置いていた携帯を再び手に持ち、Yさんからしつこく食事に誘われていたという夜勤明けの看護師を検索します。

以下 ●●看護部長の電話Ⅱ●● は65に続く


2009.8.26 水曜日

“や”の付く稼業63

●●YさんとN事務長●● 

病院では、N事務長を連れ去った第一容疑者をYさんとして、S君が持ってきたカルテを元にYさんに連絡先に電話を掛けようとしている頃。
当のN事務長は、Yさんに連れられて隣の県にある山小屋風のカフェに居ます。
カフェはログハウスで、人工的造られた大きな貯水池に面しています。
ログハウスの貯水池に面したデッキに置かれたデッキテーブルにYさんとN事務長は貯水池に向かって並んで座って、食後のカフェを楽しんでいます。

「どや、N事務長。静かで落ち着くやろ」

「そうですね・・・」

「親父の店の後は、いつもここに来るんや」

「そうなんですか・・・」

「俺も、たまには自然に囲まれて気分を落ちつけたくなるってことや」

「自然はいいですね。心の鎮静作用があります」

「そういうことや。ここは貯水池で前が開けてるから特に気持がいい」

「これは自然湖じゃないんですか?」

「そうなんや、これは貯水池なんやぞ」

「普通、貯水池だともっと人工的な感じがするのに、自然に調和してますね」

「そうやろ。ロケーション抜群や」

「でも、貯水池の回りって、普通はこんな商業施設は建てられないんじゃないですか?」

「アホか。そんなもんどうにでもなるわ」

「どうにでもなる・・・ということは・・・」

「なんや?」

「こちらのカフェを経営されておられる方も、Yさんとご同業ですか?」

「同業?」

「いや、お知り合い? いや、ご友人? いや、お仲間ですか?」

「そうらしいな・・・」

「そうらしい?」

「俺も本人はよく知らんけれど、昔そうやったらしい」

「なんですか?もしかして、その道の方々のお店の梯子ですか?」

「こらっ!その言い方はないやろ」

「すみません。でも、皆さん引退されると自然の多い場所に住まれるんですね?」

「まあ、人付き合いに疲れたんやろ」

「Yさんもそうなんですか?」

「俺は、最期まで、死ぬまで街中で暮らすわ」

「そうですか」
早く引退して落ち着かれたらいいのに・・・

などと、ログハウス造りのカフェのデッキテラスでのんびりしている頃、病院では看護部長の持つ電話がYさんのカルテに書かれた連絡先に繋がっています。

以下 ●●看護部長の電話●● は64に続く


2009.8.25 火曜日

“や”の付く稼業62

医療・介護のよもやま話 — admin @ 20:11:46

●●看護部長の提案●● 

院長を交えた作戦本部会議で、N事務長を連れ去ったのはYさんではないかとの意見が出ます。
看護部長は、その一本気?な性格から、Yさんに間違いないと思い込んでいますが、慎重な院長は、Yさんと決めつけないで他の可能性も考えるべきだと促します。
でも、看護部長の頭の中は、Yさんが犯人?であり、どうしたらいいかと考えを巡らせています。

「院長、警察に連絡入れましょうか?」

「そうですね、でもまだ、拉致とか誘拐と決まったわけじゃありませんし・・・もしかして、N事務長が単なる時間つぶしをしていることも考えられますから、もう少し様子をみましょう」

「でも、警察はいつも初動捜査が重要なんだっていっておられますけれど・・・」

「確かにそうでしょうが、まだ失踪?いや姿が見えなくなってから4時間です。今日一日連絡がないようであれば、警察に相談しましょう」

「じゃあ、タイムリミットは、何時ですか?」

「夜の20:00としましょう」

「分かりました」

「他に何か、いい方法はありますか?」

それまで、院長と看護部長の話を黙って聞いていたS君が意見をいいたそうです。
「S君、何かあるかな?」
院長の言葉に、待っていたとばかりにS君が応えます。

「院長、ここは可能性のあることを一つ一つ潰していくのがいいと思います」

「そうですね。例えばどの可能性を潰すのですか?」

「まずは、我々が怪しいと思っているYさんに連絡を取るのは如何でしょうか?」

「連絡先は分かりますか?」

「カルテがあります」

「そうですか、じゃあ早速調べてください」

「はい」
そう言って、S君は事務室にYさんのカルテを取りに席を立ちます。
すると、看護部長が、

「そう言えば・・・Yさんといえば、入院した時に病棟の看護師を気に入って、何度も食事に行こうって誘っていたって内科病棟師長から報告を受けていたわ」

「ほう、じゃあ、その看護師に連絡先を渡している可能性がありますね」

「はい、確かに携帯番号を渡されて困っているって言ってました」

「じゃあ、看護部長もその看護師を当たってください」

「はい」
そう言うや、看護部長はその場で白衣のポケットから院内PHSを取り出し、内科病棟師長に電話を入れます。
「師長。私。以前、Yさんが入院した時に看護師を誘っていて困るって言ってたわよね
・・・そうそう、その時の相手は誰だった?
・・・ああそう。Aさんね。今日は出勤だったかしら?
・・・今日は明けね。分かったわ、自宅に電話してみるわ。ありがとう」

Yさんが携帯番号を教えたA看護師は今日は夜勤明けで、院内には居ないようです。
看護部長が、A看護師の携帯電話番号をメモリーから探している時にS君がカルテを持って帰ってきました。

「はい、これがYさんの電話番号です」

「そうか、じゃあまずその番号に掛けてみよう」
院長がS君に電話をするように促します。

「どういう理由で掛けましょうか?」

「なんでもいいよ」

「なんでも良いといっても・・・」

「貸して、私が電話するわ」
そう言って、看護部長が受話器を取って、Yさんのカルテに書いてある番号をプッシュします。

以下 ●●YさんとN事務長●● は63に続く


2009.8.24 月曜日

“や”の付く稼業61

医療・介護のよもやま話 — admin @ 17:14:31

●●作戦本部会議●● 

看護部長が院長に電話をした後、5分もしない内に院長が看護部長の指定した応接間に顔を出します。

「おやおや、皆さんお揃いで・・・」
と院長が切り出すと、すかさず看護部長が、

「院長、そんな呑気なこと言ってる場合じゃありませんわ」
と返します。

「すまん、すまん。それで、N事務長は一体どうしたんだい?」

「院長、これから医事課のS君に報告させますけれど・・・院長と笑い話で、昼寝でもしてるんじゃないかと言っていた状況とは大きく違ってるようですわ」

「何か大問題かな?」

「そのつもりで聞いて頂いたほうがいいと思います」

「そうか、じゃあ早速、S君話してくれないか?」

「はい・・・」
S君が看護部長に話したことと同じことを、院長に伝えます。
黙ってS君の話を聞いていた院長は、大きく頷くと、

「つまり、N事務長が何者かによって、白昼堂々、商店街で車に乗せられて連れ去られたということですか・・・」

「院長、どういたしましょうか?」
看護部長の問いに、院長は、

「看護部長はどう考える?」

「私は、相手が誰であれ、どういう経過であろうとも、警察に一報入れて置くのがよろしいかと思います」

「そうだな。でも・・・」

「でも、なんですか?」

「S君と栄養課長の話を聞くと、N事務長も車に乗せられるまでは、そんなに抵抗した様子は無いようですし、車と並行して歩きながら車の中の人と話していたようだが」

「確かに、花屋の奥さんが、そう言ってました」

「誰か知り合いということも考えられるな」

「はい」

「N事務長は、この地域に住んで1年だから、知り合いと言っても、この病院に関係する人じゃないかと思うが」

「この病院での知り合い?」

「そうだ、最近、患者さまで揉め事起こした人は?」

「それは、数が多すぎて・・・」
S君の返事に院長、看護部長は苦笑いをしています。

「そうだね。一杯いるからな・・・これは、医局の問題でもあるな・・・」

「確かに、看護部も問題の一因を握ってますわ」

「でも、その中で怪しい人物は? 黒塗りの車、運転手付き、若い衆2人」

「・・・Y」 「・・・Y」 「・・・Y」 「・・・Yさん」
院長の除く4人が口を揃えて、Yさんの名を口にします。

「Yさんと言うと、前に女医と殴りあったYさん?」

「はい」 「はい」 「はい」 「はい」 

「なるほど、それならば合点がいきますね」
院長の考えに、看護部長も同意したのか、

「Yさんなら、嫌がるN事務長を無理やり車に連れ込んで、連れまわしていることは大いに考えられますわ」
と結論付けます。

「もちろん、N事務長を車に連れ込んだんがYさんと決まった訳ではありませんが、その可能性もありそうですね」

「いや、院長、Yさんに違いありませんわ」
決めてかかる看護部長に、

「まあまあ、そう決め付けずに、他の可能性も考えて慎重に物事を考えましょう」

さすが、院長は理論的に物事を考えて進めていきます。
看護部長は、犯人はYさんと考え、次の手を考えているようです。

以下 ●●看護部長の提案●● は62に続く


2009.8.23 日曜日

“や”の付く稼業60

医療・介護のよもやま話 — admin @ 18:30:27

●●看護部長が陣頭指揮●● 

生来の張り切り癖のある看護部長が、S君、栄養課長、経理職員を前に≪非常事態宣言≫を発令しました。
看護部長は、どんな采配を振るうのでしょう・・・

「普段から心配していた事態が起こったわね」

「心配していたんですか?」
S君がすかさず突っ込みます。

「そうよ」

「看護部長は、どんなことを心配されていらしたのですか?」
さらに、栄養課長も突っ込みます。

「こう言う事態が起こる可能性があるってことをよ」

「どうしてですか?」
経理職員も突っ込みます。

「皆さん。よく聞いてください。我々の○×病院が置かれている立場を」

「・・・」 「・・・」 「・・・」

「日々の外来診察、入院患者さまの診察、治療の上に、地域の医療機関として果たせねばならない救急医療に尽力をするものの、いつ終わるか分からない、24時間365日永遠に続く患者さまやその家族への対応。
私たちも、N事務長の応援はしていましたが、何か問題があれば、すぐにその対応、解決をN事務長に任せる。
その皺寄せが、こんな事態を招いたのよ」

「・・・」 「・・・」 「・・・」

「これは、大問題よ。N事務長の身に何かあったら、と考えると・・・恐ろしい・・・もしものことがあったら・・・あんなに働いてくれる事務長はいないのに・・・新しい事務長を探さないといけない・・・病院にとっては大きな損失だわ」

「あのー、看護部長。N事務長はまだ居なくなっただけで、そのー、N事務長の身に何かあったとかは・・・考えるの早くないですか?」
S君が恐る恐る切りだすと・・・

「何を言ってるの、あなた達もそう思っているんじゃない?
なんでも面倒なことはN事務長にお願いして。そうじゃない栄養課長!」

「は、はい。確かにそうですが・・・患者さまの給食に髪の毛が入っていた時も助けて貰いました」

「S君だって、患者さまの対応をお願いしたことありませんか?」

「ま、まあ、今日もそれで探してました」

「経理の貴方も最終チェックはいつもN事務長でしょう」

「は、はい」

「もちろん、我々看護部も同じです。院長率いる医局もそうですわ」

「あの、看護部長。それで今後のことをどうしましょうか?」
恐る恐る尋ねるS君に、

「そうね、ここでN事務長の安否を気遣ってもしょうがないわね。まず、病院の責任者である院長に報告します」

「はい。それが先決かと・・・」
と答えたS君を、キリッとした目つきで睨みながら看護部長は、

「S君、今から院長を呼びますから、商店街での話をしてください。いいですね」

「は、はい」

看護部長は白衣のポケットの中から院内PHSを取り出し、院長に直接電話を掛け始めます。
「院長ですか?私です。今、N事務長のことで応接間におります。今すぐこちらまで来て貰えませんか?・・・30分後?そんな悠長なこと言ってられませんことよ!今すぐ来てください!」

さすが、看護部長。イザとなれば院長にも命令?口調。
院長も看護部長には逆らえないようです。
これから、院長を含めた作戦本部会議の始まりです。

以下 ●●作戦本部会議●● は61に続く


2009.8.22 土曜日

“や”の付く稼業59

●●看護部長の決断●● 

経理職員から連絡を受けた看護部長は、一体何があったのか半信半疑ではあるものの、生来のお祭り好きの血を騒がせながら事務長室の隣の応接間に向います。
応接間に着くと、ドアの前で経理職員が待っています。

「看護部長。部屋のドア開けておきました」

「ありがとう。それにしても、N事務長はどうされたのかしら?」

「今、S君と栄養課長が戻ってきて、詳細をお話頂けると思います」

「そう。じゃあ、中で待っていましょうか?」

「はい。そうしてください」

と言いながら、応接間のソファーに腰掛けると、ドアの外をバタバタ、パタパタ走る2つの足音が聞こえます。
あの、サンダルの音は・・・
バタバタが栄養課長。パタパタはS君です。
2人がドアの前でハアハア言いながら顔を出します。

「何、2人とも若いのにハアハア言って」

「看護部長。お疲れ様です」 「お疲れ・・・ハアハア・・・です」

「普段から体動かして無いから、息が上がるのよ」

「すみません。200mダッシュをしましたから・・・ハアハア・・・」
S君の方が、息が上がっています。

「栄養課長はさすがに普段から重い調理器具を持って調理室内を走り回っているだけあって、それほど息上がってないわね」

「は、はい・・・でも・・・フー」

「まあ、2人とも腰掛けて、落ち着いたら、何があったのか話して頂戴」

息を切らしている2人を見かねて、経理職員が冷たいお茶を持ってきて、
「さあ、2人とも、これを飲んで、看護部長に話をして」
と言います。

2人は、出された冷たいお茶をゴクリと飲み干し、一息ついてから看護部長に話始めます。

「看護部長。N事務長が昼から顔が見えないって、電話でお話しましたよね」

「ええ、そうね。 あの、禁止院内放送の後にね」

「お昼ご飯を外に食べに行ってから、姿が見えないので、ご飯を食べに行くと言っていた駅前の定食屋さんまで行ってみたんです」

「それよりも、携帯鳴らせばいいじゃない」

「携帯は忘れていって、隣の事務長室で鳴ってるだけです」

「また?」

「はい、いつもの携帯の意味をなさない携帯電話状態です」

「それで?」

「定食屋のご主人に聞いたら、N事務長は今日は来てないって言って・・・」

「言って?」

「奥さんが花屋の奥さんがN事務長を見たって言っていたと教えてくれたんです」

「そう」

「そこから、花屋さんに行って、花屋の奥さんに話聞いたら・・・」

「聞いたら?」

「花屋の店先で、商店街の道の真ん中で、白昼堂々・・・」

「どうしたの?」

「黒塗りの車に・・・」

「車に?」

「はい、車に連れ込まれて、車が走り去ったって言ってました。それで、車の中から、≪助けてくれー、拉致されたー≫ って、N事務長の声がしたって・・・」

「助けてくれ?拉致された?」

「はい・・・」「はい」

「拉致! 誘拐?・・・ついに恐れていた事態が起こりましたね・・・分かりました。ここに私の権限を持って宣言します。 非常事態宣言発令!

「・・・」 「・・・」 「・・・」

以下 ●●看護部長が陣頭指揮●● は60に続く


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