“や”の付く稼業68
●●YさんとN事務長●●
○×病院の看護部長からの電話を切ったYさんは、肩をすくめながらN事務長を見つめ、N事務長は、ほら見たことかとYさんを見返します。
「あーあ、Yさん。ついに捜査の手がここまで来ましたね」
「何や捜査って?まるでN事務長を拉致、監禁してるみたいやな」
「そうです。病院に一本連絡入れさせて頂ければ、こんなことにならなかったんです」
「そんなら、今から連絡入れーや」
「今からですか?」
「そうや今すぐや!」
「今、Yさんに連れまわされています。って言うんですか?」
「しゃーないな」
「そうですね、看護部長のあの様子だと警察に捜索願を出しそうな勢いです」
「ホンマに、あの女は何仕出かすか分からんからな」
「それは、そうですね。ハハハ」
「笑いごとちゃうで」
「確かに、そうですね。で、どうしますか?」
「5分後に電話くれって言ったから、掛けてくるやろ。なんて言おうか?」
「N事務長は、こちらで預かっている。返して欲しければ金用意しろ!じゃないですか?」
「幾らくらいにするんや?」
「まあ、病院だからお金あんまりないし、事務長なんてものは、そもそも使い捨てのポストですから、出して、せいぜい10万ってとこでしょう」
「10万?それは安いやろ!そんなんで、オレ警察に捕まるのいややで」
「イヤと言われても、私の病院での価値はそんなものです」
「可哀相な奴やな・・・そんな価値か・・・」
「Yさん。冗談ですよ。10万なんて・・・実は、そんな価値も無くて、病院はお金を一銭も出さないと思います」
「・・・価値ゼロか・・・ホンマにホンマ、可哀相なやっちゃな」
「はい、そんなものです」
「で、どうする?」
「電話掛かってきたら、N事務長はここでお茶飲んでるわと言ってくださって結構です」
「ええんか?」
「ええ、ご馳走にもなりましたし、例え実際、Yさんに連れまわされて、電話も掛けさせて貰えませんでしたが、食事してお茶しているのも事実ですから」
「ほな、そうさせて貰うで」
「ええ結構です」
と、N事務長とYさんが話していると、Yさんの携帯電話が鳴り始めます。
Yさんが着信表示を見ると、先ほどと同じ番号、間違いなく看護部長です。
以下 ●●N事務長発見●● は69に続く