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医療・介護のよもやま話

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2009.11.30 月曜日

行き場のない患者50

医療・介護のよもやま話 — admin @ 14:58:17

●●御前会議Ⅲ●● 

Tさんは確信犯で精神的な病気を含めた本人の資質が10%で、生活保護費確保の為の演技が90%だと断言するN事務長に対して、院長と看護部長は、

「じゃあ、Tさんは詐病で、言ってみれば生活保護費の受給目的の為だけに病院に来ているということですか?」

「その辺りのどちらが先かということについては判断が難しいですが、卵が先か鶏が先かと同じことだと思います」

「N事務長の人物像把握能力はなかなかのものだと思っていますが、そこまで考えますか?」

「はい、その可能性が非常に高いと思います」

「そうですか・・・生活保護費の受給要件か・・・」

「ええ、要件の中で最も大切なのは、就業出来ないことですよね」

「ああ・・・」

「もちろん、あの精神状態で勤務される会社も溜まったもんじゃないでしょうが、Tさんの場合は生活保護費を受給することによって、Tさんの労務管理で悩む会社や経営者がいなくなるという意味では、価値ある支給でしょう」

「それは言い過ぎだろ」

「院長、何処の会社でも労務管理には莫大な予算と労力を掛けています。当院でもそうです」

「もちろんそうだが・・・」

「Tさんは、今は生活保護費の受給する為にその労力を費やしていますが、この労力を会社からいかにして楽してたくさんの金銭を受け取るかということに専念したとすると・・・考えるだけでゾッとします」

「まさか? そんなことまで・・・」

「いえ、最悪の場合をいつも考える私の悪い癖ですが、あり得ない話ではありません」

「もちろん、あり得ないことではないだろうが・・・」

「院長や看護部長は医療従事者ですから、どちらかと言うと性善説でしょうが、私は普段から他人の嫌な姿ばかり見せられていますから性悪説なんです」

と院長とN事務長が話をしていると、ほったらかしにされている看護部長が2人の話に割り込んできます。
「じゃあ、N事務長は、私や院長も性悪説で見ているってことなの?」

「いやいや、看護部長なんて性悪説なんかじゃなく、悪人そのものです」

「なんですって!」

「冗談です。院長や看護部長のように付き合いが長くなれば、良いところも悪いところも理解した上でお付き合いさせて頂いております」

「良いところも悪いところもということは、悪いところがあるわけね」

「それは・・・まあ・・・誰にだって・・・」

「私の悪いところって何処かしら?」

「そうですね、こうやって話に割り込んで来たり、すぐ人に絡むところなんか・・・まさに悪人そのもの」

「まあ失礼な人」

「ハハハ、看護部長そのへんにしておきなさい」
院長のナイスフォローです。

「全くもう、N事務長ったら・・・」

院長との話を再開することにします。

以下 ●●御前会議Ⅳ●● は51に続く


2009.11.29 日曜日

行き場のない患者49

医療・介護のよもやま話 — admin @ 11:08:11

●●御前会議Ⅱ●● 

朝の情報共有会議は、看護部長の駄洒落にもならない洒落で幕が下ろされました。
院長はTさんのカルテに目をとおし、E内科部長の電話での報告を合わせて、今後の対応を考えています。

「N事務長、医師の連絡の悪さは看護部長から指摘されたとおりだとして、このTさんのこれまでの院内での様子はどうなんですか?」

「そうですね・・・事務の報告によると、自分達の希望や意見が通らななければ、軽く脅かしたり、恫喝するくらいのことはするみたいです」

「軽くですか?」

「ええ、当院の事務員は本物の脅しや恫喝に慣れていますから、軽くというのは彼らの言葉どおりです」

「何とも逞しい事務員です」

「本当にそう思います」

「看護部はどうなんですか?」
院長が今度は看護部長に話を振ります。

「看護部からは、付添の人達が看護に口を出すわ、手を出しそうになるわで不平不満のオンパレードです」

「そうですか・・・」

今度は、N事務長が院長に問いかけます。
「院長はTさんの病名についてどう考えますか?」

「そうですね・・・私が診察したわけではありませんが、E内科部長の話やカルテから判断すると、当院で診る患者さまではありません」

「その点はE内科部長と同意見ということですね」

「ああ、そうです」

「それでは、昨日の私の意見をそのまま実行に移すことについてはどう思われますか?」

「いささか乱暴な気がしないでもないが、そうするしか方法はありませんか?」

「多分、院長が話をしても埒が明かないと思います」

「そうですか・・・看護部長はどう思われますか?」

「私は、昨晩実際にTさんご本人を見て思ったことは、この子には私達医療従事者の患者さまを思う気持ちだとか、全ての患者さまを平等に扱っていることを幾らお話しても、絶対に分からないだろうし、分かろうとも思わないと思いましたわ」

「看護部長がそう思われたのには、何か理由があるんですか?」

「ええ、私もTさんの罠に嵌まった1人ですが・・・」

「E内科部長が言っていたことですか?」

「はい」

「精神的な病気の患者さまによく見られる傾向ですね」

「ただし、そこは少し違うような気がします」

と言うN事務長の言葉に院長が反応します。
「どういうことですか?」

「Tさんの場合、もっと策略的というか、知能犯?確信犯だと思います」

「どういうこと?」

「お金です」

「お金?」

「ええ」

「どういうことかな?」

「生活保護費がその理由の90%、Tさんの個人的な資質が10%ってところじゃないですか?」

「ほー、N事務長はそう読みますか」

「はい」

以下 ●●御前会議Ⅲ●● は50に続く


2009.11.28 土曜日

行き場のない患者48

医療・介護のよもやま話 — admin @ 20:23:37

●●御前会議●● 

翌日、朝一番にN事務長は看護部長と共に、院長室へTさんの件を報告に上がります。
E内科部長の言うところの御前会議です。
もちろん、E内科部長の言うところの御前会議の御前は院長のことと思いますが、もしかすると、御前は看護部長のことかも・・・

院長、看護部長、N事務長はこの会議を情報共有の為に随時行っており、E内科部長を始めとする職員の思いとは別のところにありますが、この会議は密室で行われており、内容や会議の趣旨も秘密にしていますから、傍から見れば、御膳会議、そう思われるのも致し方ありません。

院長室の前まで来ると、院長の声が聞こえます。
どうやら電話中のようです。
相手は?
話の内容から患者さまのことについてのようです。
「分かりました。私の方でも確認しておきます」 と言う声が聞こえてきます。

電話も一段落したようなので、ノックをすると、
「はい、どうぞ」 と返事が返ってきます。

「失礼します」 とドアを開けて部屋に入ると、院長はまだ電話中ですが、手でソファーを指さしています。
院長の指示に従いソファーに看護部長と共に腰掛けると、

「分かりました。その件についてはこれから報告を受けます」
と院長が言っています。
どうやら電話の相手はE内科部長のようです。
電話を切った院長が、

「おはようございます。今、E内科部長から電話がありました。その件ですね?」

看護部長が、「ええ」 と答えます。

「昨晩は大変だったみたいですね?」 と言う院長の視線はN事務長に向いています。

「昨晩は、私は大した活躍をしておりません」

「そうでした、N事務長の出番はこれからですね」

「そうなります」

「では、昨晩の件についての報告を聞かせてください」

「まずは、当該患者さまのカルテを持ってきましたので、ご確認をお願いします」
そう言って、N事務長がTさんのカルテを院長に手渡します。

院長は表紙をめくり、1号用紙の氏名、性別、年齢、病名などを確認しています。
「なるほど、E内科部長の報告のとおりです」

「院長はTさんの診察はされたことありませんこと?」
と看護部長が尋ねます。

「残念だけれど、私の診察には来てない。カルテにも私の記述はありません」

「お顔も、お分かりになりませんかしら?」

「ああ、残念だけれど・・・」

「そうですわね、診察していなければ、入院患者さまならいざ知らず、外来患者さまは無理ですわね」

「そうですね・・・」

「それで、この患者さま、Tさんって言うんですけれど、今までに医局で何かお話はありませんでした?」

「いや、それも今日の朝、初めてE内科部長から聞いた次第です」

「相変わらず、医局の先生方は意思の疎通がお悪いことで」
看護部長の毒舌が始まります。

「まあまあ看護部長、それくらいにして昨晩の経過を報告してください」
N事務長が看護部長の独走を阻みます。

「あら、だって、看護部では随分前からTさんについて問題提起してきましたのよ」

「はい、それは了解していますが、ここは報告を先にお願いします」

「全く、意思の疎通じゃなくて、医師の疎通が悪いって漢字の変換を変更願い出したい程ですわ」

「・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・」

「あら、ここは笑って頂くところですよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・」

看護部長、それは笑えません。

以下 ●●御前会議Ⅱ●● は49に続く


2009.11.27 金曜日

行き場のない患者47

医療・介護のよもやま話 — admin @ 11:56:42

●●作戦会議Ⅳ●● 

Tさんを交渉のテーブルに着かせると言うN事務長ですが、そんなに上手くいくのでしょうか?
思案気味の顔をしているE内科部長が、口を開きます。

「N事務長、交渉といっても何を交渉するのですか?」

「そうですね、確かに交渉と言うのは変ですね」

「そうでしょう。我々には何も交渉の余地などありませんし、間違っていることをしているとも思えません」

「そうでした・・・交渉ではなく話し合いの間違いです」

「それならば分かります」

「でも、彼女等にしてみれば、交渉でも話し合いでもなく、単なる病院に対しての申し入れ、或いは病院へのクレームということになるでしょうが・・・」

「そうだろうね・・・」

すると看護部長が口を挟みます。
「さっきは、N事務長に何かあったら全面的に面倒みますなんて軽口を叩いたけれど、大丈夫なの?」

「さあ、どうでしょうか?」

「あの子達、暴走しないかしら?」

「多分大丈夫だと思いますが・・・」

「多分って、前例もあるでしょ?」

「別の病院で事務員を殴ったことですか?」

「そうそう」

「あの件については、彼等も反省しているみたいですよ」

「どうして反省しているって分かるの?」

「何だかそんなことを話してました」

「何時?」

「帰る前に、外で立ち話しているのを盗み聞きしました」

「大丈夫かしら?」

「何度も言いますが、多分大丈夫ですし、もし大丈夫じゃなくてもその時はその時です」

「無事を祈るしかありませんね」

「まあそういうことです」

すると、E内科部長が思案気な顔つきでN事務長に尋ねます。
「ところで、何を彼女等と話し合うつもりですか?」

「もちろん、当院にはもう来ないということを納得させます」

「納得するかな?」

「納得しないまでも、そうなるように仕向けます」

「確かにTさんの病気を当院で延々と診続けるわけにもいかないし、このままだと医療とかけ離れたことでも確執が表面化しそうですね・・・」

「そうです。リスクマネージメントの点から考えても、早期に手を打つのが最善な方法だと思います」

「分かりました」

「院長にもそのことを含めて報告しておきます」

「お願いします」

以下 ●●御前会議●● は48に続く


2009.11.26 木曜日

行き場のない患者46

医療・介護のよもやま話 — admin @ 15:27:57

●●作戦会議Ⅲ●● 

Tさんの診断、処置の判断について茫然自失のE内科部長、Tさんの患者さまとしての義務を疑問視する看護部長に、N事務長は事務として診療を受付しないことを提案します。
でも、大丈夫?というのが2人の意見・・・
何ならば、暴れてくれた方が面倒臭くないとまで言い切るN事務長に対して、

「でも、当院の病院方針である患者さまを選ばない、或いは、医療法にも抵触しないかな?」

「医療法については、問題ないです。関係機関には連絡しますから・・・今までも何回もしてきたことです」

「そうですか・・・でも病院方針は?」

「それも、患者さまの権利と義務違反ということで処理します」

「院長へは、どう説明するの?」

「E内科部長からは、こんな患者がいるとそれとなく言って頂いて、私からはリスクマネージメント関連の話として正式に院長に話をします」

「看護部長はどう思われますか?」

「私は、N事務長の意見に賛成だわ」

「看護部長も同席されている会議の議題にさせて頂きます」

「ああ、御前会議ですね?」

「御前会議というか・・・」

「3首脳会議でしたっけ?」

「E内科部長、2首脳会議+書記程度にして頂けませんか?」

「御謙遜を・・・もしかすると、御前会議の御前はN事務長だったりして?」

「滅相もない。私など単なる用心棒、警備員、+α、少しパソコン好きの事務員です」

と少しE内科部長の気持ちも緩んできたので、事務長室から見たTさんの様子を報告することにしました。
「E内科部長、先程、事務長室からTさんの様子を見ていたって言いましたよね」

「ええ」

「今日は上手くいったってTさんが話していたと言いましたが・・・」

「それは、聞きました」

「私にはそれ以上にTさんと付添の男性陣の関係が気になるんです」

「どういうこと?」

「全てはTさんが指図して、彼等は踊らされているだけのような気がするんです」

「そうなの?」

「看護部長はどう思われます?」

「そうね、茶髪の彼と話しをしましたが、見かけは今時の若い子でチャラ系?って言うんですか?・・・でも、話しをしたら普通の子でした」

「そうでしょう。上から2人の会話を聞いていたら、親子の会話、母親と息子の会話みたいなんです」

「でも、内縁関係なんですよね?」

「そうみたいなんですが・・・要は、茶髪作業着君はマザコン気味で、お母さんにいいところを見せようとして頑張っているとしか思えないんです」

「でも、何処かの病院で事務員に暴力を振るったとか聞いたけど・・・」

「それも、茶髪作業着君のアピールのし過ぎではないかと私は考えています」

「だから、受付で事務員が診察を受付なくても問題なしと?」

「ええ、多少の言葉の暴力や威嚇はするでしょうけれど、そこまで馬鹿じゃないと思っています」

「なるほどね・・・」

「もし、何か言われたら、事務長の命令だからって言わせれば彼等の怒りの矛先は私に向くでしょうし・・・」

「その後はどうするの?」

「交渉のテーブルに着かせます」

「交渉?」

「ええ、Tさんが診療目的で来院しているのにTさんと話をするのも変ですし・・・病気が病気ですから・・・精神状態が安定していると思われる時に、本人と話をさせて頂きます」

以下 ●●作戦会議Ⅳ●● は47に続く


2009.11.25 水曜日

行き場の無い患者45

医療・介護のよもやま話 — admin @ 19:44:32

●●作戦会議Ⅱ●● 

今日の自分の診断、処置の判断をミスだと考えているE内科部長はやり場のない気持ちを持て余しています。
医師のこういう姿を見ることは辛いものです。
看護部長は慣れたものなのか、悪いのはTさんと割り切っているようですが、どうやらE内科部長には割り切れない様子です。
生真面目で医師としての使命を普段から口に出すことの多いE内科部長には、辛い現実に何とも出来ないイライラ感が漂っています。

全ての医師がそうであるとはN事務長も思っていませんが、医師としての倫理観と現実の医療現場でのギャップに悩みを少なからず持っている医師や医療従事者が多いのも事実です。
生真面目な医師であればあるほど、患者さまのことを第一に考える医師であればあるほど、そのような悩みを持つものでしょう。

こんな医師や医療従事者の気持ちを楽にしてあげるのも事務方、事務長の役割です。
事務長は、医療については口出しできませんが、患者さまと医療従事者の患者さまに対する気持ちや思いの食い違いを第三者的に解決したり、時には火中の栗を拾い、医療従事者が火傷しないように身代わりになることも仕事の内です。

「E内科部長、Tさんについては事務で何とかしましょうか?」

「どうするの?」

「問題は、Tさんが当院で治療出来ない、いや、専門科目を置いていない治療をしたいということですから」

「そうだけど・・・」

「要は当院でTさんの診療をしなことです。事務でTさんの診療を拒絶します」

「でも、また診療拒否だなんて、イチャモンつけてくるだろ?」

「医師が診療拒否をしたわけではなく、事務で勝手にお断りしたことにします」

「大丈夫?」

「まあ大丈夫じゃないでしょうが、保健所や行政には前もって相談しておきます」

「そうか・・・でも・・・」

「大丈夫ですって、事務職員にも事務長命令だって言うようにしますから、彼らには危害は及ばないでしょう」

「また、暴れたりしない?」

「逆に暴れて貰って、警察沙汰にでもなったほうがいいと思います」

話を聞いていた看護部長が口を挟みます。
「もし、怪我でもされたら我が看護部の総意をもってN事務長の看護をさせて頂くわ」

「看護部長以外の看護でお願いします」

「え?何かオッシャッタ?」

「いえ・・・聞き逃して頂ければありがたいです」

「どうせ、私以外の看護師で若くて可愛いAとかKとかを指名したいんでしょ?」

「そんな滅相もありません」

「あらそう? それならば、私を始めとして看護部の管理職で看させて頂くわね」

「い、いえ・・・それだけは・・・御勘弁を・・・」

「あら、清拭もして差し上げるわ!全てベテラン看護師の手厚い看護で、言うこと無しね」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

以下 ●●作戦会議Ⅲ●● は46に続く


2009.11.24 火曜日

行き場のない患者44

医療・介護のよもやま話 — admin @ 16:39:05

●●作戦会議●● 

Tさんと茶髪作業着君の会話を盗み聞きしているN事務長は、学生だった頃の自分の恋愛を思い出し、小恥ずかしいやら背中にむず痒さが走るような感覚を覚えました。
でも、あの他愛の無い会話が出来る2人のことを羨ましく思っていることも事実です。
しかし、他愛のない会話とは言え、その内容は病院に対しての攻撃、病院を自分の欲望の為に不正利用して、病院に損害を与えかねないものです。
このまま放置することは、断固として認めるわけにはいきません。

2人が乗ってきた、バンパーがやけに幅広いワンボックスカーに乗り込んで帰っていくのを確認すると、事務長室の電気をつけ、片付けを始めます。
パソコンの電源を落とし、机の上の散乱した書類をまとめて事務長室を出ます。
これから、Tさんについての相談をしなければいけません。
思い気持ちを振り払うかのように 「ヨシッ」 と気合を入れ直して、E内科部長と看護部長の待つ内科診察室に足を向けます。

「お待たせしました」
診察室に入るとE内科部長と看護部長が何やら話しこんでいます。

「N事務長、随分時間掛かりますのね?」
いきなり看護部長の先制パンチ。

「ちょっと気になることがありまして」

「何、気になることって?」

「Tさんのことで・・・」

「どうされたの?」

「ほら、事務長室から救急搬送入口と駐車場が見えますよね」

「ええ」

「Tさんの帰る姿を見てたんです」

「どうだった?」

「もうすっかり元気でした」

「そうですか・・・」

E内科部長は相変わらず苦虫を噛み潰したような顔をして、N事務長と看護部長の話を聞いています。
「それで、どんな話しをしていましたか?」
Tさんのことが気になるのか、E内科部長がN事務長に問いかけます。

「今日は上手く行ったね。ですって」

「上手く行ったか・・・」

「やはりTさんは確信犯ですね」
看護部長が言葉を挟みます。

「そうみたいですね・・・」
またしても茫然自失のE内科部長の言葉。

「E内科部長、どうされたんですか?」

「E先生、患者さまに騙されたことにショックを受けておられるのよ」
N事務長の問いかけに、看護部長が代わって答えます。

「E内科部長、今日のことはもう忘れてください。明日、いや明日以降の対策を立てることが肝要です」

「そうですね・・・」

「そうよE先生、N事務長の言うとおりです。明日からのことを考えましょう」

「しかしな、あの手の患者はやはり、僕では太刀打ち出来ないな・・・」

「診療科が違うんですからしょうがないですよ」
と看護部長。

「そうです」
とN事務長も続きます。

以下 ●●作戦会議Ⅱ●● は45に続く
 


2009.11.23 月曜日

行き場のない患者43

●●Tさんと茶髪作業着君●● 

病院の正面からの角を曲がった途端に車椅子から降りたTさん。
注射を打ったから、大人しくしていると思ったらとんでもありません。
病院の職員の目が無くなった途端に茶髪作業着君を叱り始めます。

でもTさん。
壁に耳あり障子に目ありです。
この場合は、頭の上から耳あり目ありです!

でもTさんと話をしている時の茶髪作業着君見ていると、他の人と話している時のギャップが大き過ぎるのは何故でしょう・・・
まるで、小さな子供がお母さんに叱られているようです。
子供にとって、自分が経験する全てのことの媒体がお母さんがであるように・・・
いいことも、悪いことも、結果を評価するのがお母さんだけであるように・・・
世の中で、気にするのはお母さんの反応だけ?

そんなお母さん?Tさんと茶髪作業着君の会話はまだまだ続きます。

「今日は上手くいったよ!」

「よかったな」

「バーカ、当たり前だろ。医者騙したり、病院騙すなんて簡単なことだよ」

「そうか・・・さすがだなTは」

「オマエ達とは違うんだよ」

「そりゃそうさ。Tは何をやっても一番だからな」

「何、褒めてんの?」

「褒めてるんじゃなくて、いつも助けられてるから・・・」

「アンタは私の子供じゃないんだからな」

「分かってる」

「たまにはこちらが助けて欲しいもんだよ」

「ワリイ」

「まあいいや、アンタは力にはなるからな」

「力って?」

「相手に暴力は振るわなくてもいいけど、仲間は一杯いるしな」

「仲間には慕われているんだぜ」

「ああ、そうだな。ヤンチャな奴等の動員力は凄い。それは認める」

「それなら任してくれ」

「それだけか?」

「取りあえずは・・・」

「まあいいか、ハハハ」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「病院にとっては充分プレッシャーになるしな」

「そうだろ」

「ああ、今日は御苦労さん」

「いや、そんなに大したことしてないから・・・」

「照れなくてもいいよ」

「照れてなんかないよ」

「家に帰って、飯でも食うか?」

「そういえば腹減ったよ」

「何か買って帰ろう」

「そうだな、Tの子供達も待ってるしな」

「ああ」

何だか聞いていてこちらが恥ずかしくなるような会話です。
でも、Tさんと茶髪作業着君の会話だから・・・

以下 ●●作戦会議●● は44に続く


2009.11.22 日曜日

行き場のない患者42

医療・介護のよもやま話 — admin @ 14:25:45

●●事務長室からの眺め●● 

捨て台詞を残して茶髪作業着君はTさんをのせた車椅子を押して内科診察室を出ていきます。
何を言っても、自分達の都合のいいようにしか理解出来ない、図々しさに半ば呆れ、E内科部長は苦笑しています。
看護部長は、肩をすくめ、可哀相な人を見るような目をしています。
外来当直看護師は、救急処置室へ戻り、さっさと後片付けを始めます。
N事務長は、憮然としているE内科部長と看護部長に、
「御苦労さまでした。中々思うようにいきませんね」
と声を掛けると、

「どうしたものかな・・・」
とE内科部長のウンザリした声に、

「あの子達は一体何を考えているんでしょうね」
と看護部長が応えます。

「まだ、これから頻繁に来院することになりそうですね」
とN事務長が呟くと、

「そうならなければいいですが・・・」

「看護部でも対策練らなくてはいけませんね」
と、2人の言葉が空しく響きます。

「今後の対応を考えましょう」
とN事務長が提案すると、

「そうですね」 「そうしましょう」
と2人は即座に答えます。

「じゃあ、一旦事務長室に戻って、片付けして来ますので、10分後でいいですか?」

「了解しました」 「私も看護部長室を片付けてから、もう一度まいりますわ」

「それでは、10分後にこの場所でいいですか?」

「了解」 「OKよ」

N事務長は、片付けと言いましたが、実はもう一つ目的がありました。
それは、事務長室から帰っていくTさんの様子を見ることです。
このまま普通に帰っていくとは思えません。

N事務長は足早に事務長室に戻り、部屋の電気を消して窓辺に向かいます。
窓から外の様子をブラインド越しに伺うと、Tさんを乗せた車椅子が病院の正面から救急搬送入口、駐車場に向かう角を曲がったところです。
Tさんの車椅子を押しているのは、茶髪作業着君ではなく付添で来ていたこれまた茶髪の若い男性です。
茶髪作業着君は車椅子の横をTさんと話しながら歩いています。
病院の正面から角を曲がり切ったところで、車椅子が止まり、Tさんが立ち上がります。
そのまま、車椅子を押していた若い男性は回れ右をして正面玄関の方へ戻っていきます。

あれっ?
Tさんが普通に歩いています・・・
今度は茶髪作業着君に何か言っているようです。
窓を少し開けて耳を澄ますと、

「おい、どうしてあんな話しになったんだよ?」

「そんなこと言われても・・・」

「はっきりしろよ!」

「突然、診察室に来てくれって言われて・・・」

「何で、オマエが私の代わりに話してるんだよ!」

「そんなこと言っても・・・」

「大体、頭が悪いんだよ、オマエは!」

「T、そんなこと言うなよ」

「今日帰ったら、説教だかんな!」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

なんで?
Tさん、診察室の中とは打って変わって随分元気じゃないですか?

以下 ●●Tさんと茶髪作業着君●● は43に続く


2009.11.20 金曜日

行き場のない患者41

医療・介護のよもやま話 — admin @ 14:00:24

●●Tさん家路に着く●● 

茶髪作業着君は、E内科部長の説得もなんのその・・・
病院はこの○×病院しか無いような口ぶりです。
紹介状を書くので、精神科を受診するように勧めるけれど、その必要性が無いようなことさえほのめかします。
一体、この2人の本当の目的は何でしょうか?

1.病気を治すこと?
2.病院で騒ぎを起こすこと?
3.自分の意のままに、病院を使うこと?

どれも違うように思えてならないN事務長が、茶髪作業着君に話しかけます。
「さあ、今日はお帰りになって、Tさんをゆっくりお休みさせてあげてください」

「オマエに言われなくてもそうするよ!」

「明日、Tさんがお目覚めになられたら、紹介状を持って該当病院に受診に行ってください」

「該当病院?」

「ええ」

「精神科ってことか?」

「そうなります」

「だから、Tは精神病の患者かって言ってるだろ!」

「その可能性が高いことを、今E内科部長からお聞きになりませんでしたか?」

「病院に行くか行かないかは、こっちで決めさせて貰う」

「それは結構ですが・・・」

「結構なら、黙ってろ!」

「同じ症状で受診をされても、次回からはE内科部長か院長の指示が無い場合は、今日と同じ処置は出来ませんから、その点はご理解ください」

「何言ってるんだ!」

「ただし、きちんと受診されて、その病院から必要があると認められれば、緊急の場合は当院でも受診、処置はさせて頂けるんじゃないかと思います」

「本当かよ?」

「どうですか、E内科部長?」

「ああ、緊急の場合のみです。それも、かかり付けの医師の指示に従ってならば考えられます」

「緊急、緊急って言っても、どうしたら緊急なんだよ」

「生命に関わるような場合です」

「そんなこと、素人のオレ達が分かるわけないだろ! Tが苦しんでいたら、それはいつも緊急なんだ!」

「もちろんそうですが、緊急性があるかどうかは、医師である私達が決めさせて頂きます」

「あてにならないな!」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

業を煮やしたN事務長が口を挟みます。
「兎に角、紹介状を持って、明日以降に精神科のある病院を受診してください」

「オマエは、何度もウルセエんだよ!」

「じゃあ、そう言うことで本日はお帰りください」

「お帰り下さいって、T、歩けないだろ!」

「お車で来院されてますよね?」

「ああ」

「ワンボックスでしたっけ?」

「何で知ってるんだ」

だって、来院した時上から見てましたから・・・
「いつもそうですから、今日もワンボックス車だろうなって思っただけです」

「そうか・・・それで?」

「お車まで車椅子使って頂いて結構ですよ」

「言われなくてもそうさせて貰うよ」

「どうぞ、そうしてください」

茶髪作業着君は、看護師からTさんの乗った車椅子を受け取り、紹介状を自分の作業着のポケットに押し込んで車椅子を押して診察室を出ていきます。
診察室のドアを開けたN事務長に向かって、
「また、来るからな! ヨロシク!」
と捨て台詞を吐いて・・・

以下 ●●事務長室からの眺め●● は42に続く


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