行き場のない患者111
●●事後処理Ⅵ●●
Tさんが暴れた会議室の後片付けを終えて、N事務長とS君は診察室のある1Fへ降りる為に会議室を出ます。
階段まで差し掛かると、S君は先に降りて、N事務長のカルテを出しておくと言って走り去りました。
N事務長はのんびりと階段を降りますが、階段を1歩2歩と降りる度に左足の太股、ふくらはぎに違和感が走ります。
ローキックは時間が経つほどダメージが出てくると言われていますが、その通りのようです。
恐るべしTさんのローキック・・・&その破壊力。
診察室の前まで、微妙に足をカクカクさせながら歩いていくと、外来師長が待ち構えています。
なんとなく、心配そうな顔付きです。
「N事務長、お待ちしていましたわ」
「んっ?」
「看護部長から電話が入って、N事務長が診察にいくからって言われました」
相変わらず、看護部長の手回しの良さに脱帽です。
「他に何か言っていました?」
「いえ、診察に行かれるから、他の患者さまとバッティングしないようにって言っていただけです」
「そうですか・・・」
「どうぞ、H先生も待ちです」
「はっ?」
「H先生も院長から連絡があったみたいで、H先生からも、N事務長が来たら、患者さまの間で入れてくださいって言われました」
「そうなんだ・・・」
「ささ、早く・・・」
そう言うと、外来師長は整形外科の診察室入口ではなく、救急外来の入口からN事務長を整形外科診察室へ誘導します。
「H先生、N事務長来られました」
「はい、どうぞ」
「N事務長、どうぞお入りください」
「ああ・・・」
診察室に入ると、診察した患者さまのカルテを書きながら、T先生はN事務長へニヤリと笑みを向けます。
「院長から連絡ありましたよ。大変だったみたいですね」
「まあ、と言うか、やられました」
「流石のN事務長も手は出せませんよね」
「相手は一応女性ですし、患者さまでもありますから・・・」
「ローキックですって?」
「ハハハ、その通りです」
「じゃあ、診察しておきましょう」
「お願いします」
「それで、何処をどの位ですか?」
「左脛×2、右脛×1、左ふくらはぎ×3、左大腿部×2発です」
「そうですか・・・じゃあズボンを脱いでもらって・・・」
「そこまでしますか?」
「いや、その方がいいです。院長からも後々のことを考えてしっかり診察、そして記録してくださいと言われています」
「分かりました・・・」
随分、事が大きくなっているなと思いながらも、N事務長はズボンのベルトを外して、ズボンを脱ぎます。
すると、側についていた外来師長が後ろから、
「あーあ、太股がきれいなミミズバレになってますわ」
その声に反応したH先生は、N事務長の後ろに回り込み、
「あー本当だ、相当なキック力だね・・・Tさんって大したもんだ」
と、楽しそうに声を上げます。
以下 ●●事後処理Ⅶ●● は112に続く