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医療・介護のよもやま話

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2010.1.31 日曜日

行き場のない患者111

医療・介護のよもやま話 — admin @ 17:22:55

●●事後処理Ⅵ●● 

Tさんが暴れた会議室の後片付けを終えて、N事務長とS君は診察室のある1Fへ降りる為に会議室を出ます。
階段まで差し掛かると、S君は先に降りて、N事務長のカルテを出しておくと言って走り去りました。
N事務長はのんびりと階段を降りますが、階段を1歩2歩と降りる度に左足の太股、ふくらはぎに違和感が走ります。
ローキックは時間が経つほどダメージが出てくると言われていますが、その通りのようです。
恐るべしTさんのローキック・・・&その破壊力。

診察室の前まで、微妙に足をカクカクさせながら歩いていくと、外来師長が待ち構えています。
なんとなく、心配そうな顔付きです。

「N事務長、お待ちしていましたわ」

「んっ?」

「看護部長から電話が入って、N事務長が診察にいくからって言われました」

相変わらず、看護部長の手回しの良さに脱帽です。
「他に何か言っていました?」

「いえ、診察に行かれるから、他の患者さまとバッティングしないようにって言っていただけです」

「そうですか・・・」

「どうぞ、H先生も待ちです」

「はっ?」

「H先生も院長から連絡があったみたいで、H先生からも、N事務長が来たら、患者さまの間で入れてくださいって言われました」

「そうなんだ・・・」

「ささ、早く・・・」

そう言うと、外来師長は整形外科の診察室入口ではなく、救急外来の入口からN事務長を整形外科診察室へ誘導します。

「H先生、N事務長来られました」

「はい、どうぞ」

「N事務長、どうぞお入りください」

「ああ・・・」

診察室に入ると、診察した患者さまのカルテを書きながら、T先生はN事務長へニヤリと笑みを向けます。

「院長から連絡ありましたよ。大変だったみたいですね」

「まあ、と言うか、やられました」

「流石のN事務長も手は出せませんよね」

「相手は一応女性ですし、患者さまでもありますから・・・」

「ローキックですって?」

「ハハハ、その通りです」

「じゃあ、診察しておきましょう」

「お願いします」

「それで、何処をどの位ですか?」

「左脛×2、右脛×1、左ふくらはぎ×3、左大腿部×2発です」

「そうですか・・・じゃあズボンを脱いでもらって・・・」

「そこまでしますか?」

「いや、その方がいいです。院長からも後々のことを考えてしっかり診察、そして記録してくださいと言われています」

「分かりました・・・」

随分、事が大きくなっているなと思いながらも、N事務長はズボンのベルトを外して、ズボンを脱ぎます。
すると、側についていた外来師長が後ろから、

「あーあ、太股がきれいなミミズバレになってますわ」

その声に反応したH先生は、N事務長の後ろに回り込み、
「あー本当だ、相当なキック力だね・・・Tさんって大したもんだ」
と、楽しそうに声を上げます。

以下 ●●事後処理Ⅶ●● は112に続く


2010.1.30 土曜日

行き場のない患者110

医療・介護のよもやま話 — admin @ 17:56:45

●●事後処理Ⅴ●● 

Tさんが暴れた現場&破れたN事務長のシャツの証拠写真の撮影は無事終了です。
次に、会議室の中の倒れた椅子や歪んだ机を並べ直します。
それにしても、Tさんは、よくこんなことが出来るものです。

「N事務長、Tさんは酷い暴れ方しますね」

「そうだろ。院長と看護部長は目を丸くしてたよ」

「そうでしょうね・・・看護部長は、そういった現場に居合わせることも考えられますが、流石に院長の前で暴れる患者さまはいませんよね」

「全くその通りです・・・」

N事務長とS君は、そんな会話をしながら会議室の机と椅子を元の場所に戻します。
倒された椅子、壁際に重ねて立ててあった椅子まで含めるとその数10脚になりました。
一通り片付けを終えるとS君が、

「ところで、N事務長はシャツを破かれただけなんですか?」

S君は案の定、鋭い突っ込みをいれてきます。
「そんな訳ないだろ・・・」

「てことは、殴られたり、蹴られたりしたんですか?」

「殴られはしなかったけれど、蹴りは数発入れられたよ」

「何処にですか?」

「足に・・・」

「ローキックですね?」

「そういうこと」

「ちょっと見せてください」

「いいよ」

そう言って、N事務長が左足のズボンの裾を捲ると、ふくらはぎが幾分赤くなっています。

「あーあ、赤くなってますよ」

「ほんとだ・・・結構強く蹴られたからね・・・」

「診察した方がいいですよ」

「ああ、そのつもりだよ」

「整形外科受診で宜しいですね?」

「今の時間は整形、先生は誰でしたか?」

「H先生です」

「そうでした・・・それじゃあ、S君は医事課に戻って、私のカルテ出して、整形外科に回してくれるかな?」

「了解です」

「頼んだよ・・・」

「カメラはどうしますか?」

「それは、私がパソコンに取り込むよ」

「何なら、私が印刷までしておきましょうか?」

「いや、S君に印刷して貰うと、データーを誰かに見せそうだから」

「ばれましたか・・・」

「一応、今日のことは内密にしておいてください」

「は・い」

「頼んだよ」

「残念ですが、そう致します」

「じゃあ、私も整形外科受診しますから、1Fに降りましょう」

「はい、了解です」

以下 ●●事後処理Ⅵ●● は111に続く 


2010.1.29 金曜日

行き場のない患者109

医療・介護のよもやま話 — admin @ 11:33:23

●●事後処理Ⅳ●● 

いいことなのか、悪いことなのか、リスクに対しての嗅覚が鋭くなり、機転が利くようになったS君からの要望で破れたシャツに定規を添えて写真撮影することになったN事務長は、事務長室に替えのシャツを取りに戻ります。
事務長室のロッカーには、礼服と礼服用の白いシャツ、黒いネクタイが置いてあります。
礼服と言っても、それらが活用されるのは、もちろん急な不幸があった時だけです。
ですから、それ以外での使用は今回が初めてです。
事務長室に戻ると、隣の部屋から経理の女性職員が顔を出します。

「N事務長、シャツ大丈夫ですか?」

「エッ! シャツ? 何で知ってるの?」

「先程、看護部長から連絡がありまして、シャツの替えが無かったら、応急処置をしてあげてくださいって言われました」

「看護部長ですか・・・」

「どうしますか?」

「礼服用のシャツがあるから、それに着替えます」

「そうですか、分かりました」
と、言いながらも経理職員の視線はN事務長の胸元に注がれます。

「あーあ、結構破れてますね・・・それだけ破れていると、本職の方でも直しは無理かもしれませんね」

「そうだね・・・いいよ、もう捨てるよ・・・いや、今日の記念に保管しておきます」

「記念ですか?」

「ああ、患者さまに破られたシャツって題して、額装して、この事務長室の壁にでも飾ろうかな?」

「あんまり、いい趣味じゃないですね」

「確かに・・・」

経理職員は、失礼しますと言いながら、自分のデスクに戻っていきます。
N事務長はロッカーを開け、ロッカーの上部の網棚からシャツを取り出します。
S君の前で着替えるのも変ですから、事務長室で着替えていくことにします。
ネクタイを外すために、ネクタイを緩めると、シャツの首元はじっとり汗ばんでいます。
やっぱり、緊張していたのでしょうか・・・
それともこの汗は、過度の運動(抵抗)のせいなのか・・・

シャツを着替えて、破れてシャツをよく観察すると、思っていた以上の破れ方です。
第2、第3ボタンは無くなっていて、第2ボタンのボタンホールから第3ボタンホールを超えて、10㎝程縦にシャツが裂けています。
こんなシャツの破れ方は、社会人になり、スーツを着始めてからの記憶にありません。
それだけ、Tさんの力の入れ方が凄かったということか・・・

N事務長は、ネクタイを締め直して、破れたシャツを手に、再びS君の待つ会議室に歩を進めます。
「お待たせ」

「シャツ、着替えたんですね」

「ああ、ここで着替えるのも何だしね」

「そうですよね・・・ところで、N事務長の破れたシャツのボタンの捜索しておきました」

「ボタン見つかった?」

「ええ、会議室の隅まで飛んでました」

「そうか・・・」

「じゃあ、破れたシャツの撮影を始めましょう」

「お願いします」

S君はN事務長から、破れたシャツを受け取り、シャツの裂け目がよく分かるように整えて、その横に定規を添えて撮影を始めます。
次に、千切れ飛んだボタンを2つ並べて撮影。
なんとも、手慣れた撮影風景・・・

以下 ●●事後処理Ⅴ●● は110に続く


2010.1.28 木曜日

行き場のない患者108

医療・介護のよもやま話 — admin @ 18:22:47

●●事後処理Ⅲ●● 

鑑識係になりきっているS君に、シャツの胸元アップの撮影を要求されているN事務長。
S君は、どこで覚えてきたのか写真の撮り方も堂に入ったものです。

「それでは、撮りますよー」

「・・・・・」

「N事務長、胸元を指で指し示してください」

「?・・・どうやって?」

「もうしょうがないですね」
そう言って、S君は再びN事務長に近寄ってきます。
「指で、No.1ってしてみてください」

「No.1?」

「ほら、スポーツ選手が優勝した時や勝った時に人差し指だけ出して、天を指すでしょ?」

「要するに、人差し指だけ出して、他の指は握るってことだね?」

「まあ、そうとも言います」

「と言うよりも、指差し確認の指の形と言ってくれればいいのに」

「指差し確認?」

「ほら、電車の運転手がやってるだろ」

「右よし、左よし、って言ってるのですか?」

「そうそう」

「はい、じゃあ、指差し点検の要領で、破れたシャツを指し示してくださいね」

「・・・そんなことしてどうなるの?」

「警察では、そうやって現場の状況写真撮るんです」

「へー、そうなんだ・・・どうして、そんなこと知ってるの?」

「まあ、いいじゃないですか・・・」

「・・・・・・・・・・」

「ハイ、じゃあ、撮りますよ」

ジー、カシャ、カシャ、カシャ

「はい、終わりました。後は、そのシャツを脱いで貰って、定規を横に置いて撮りましょう」

「えっ? そこまでするの?」

「ええ、状況を的確に、そして客観的に判断出来るようにしておいたほうがいいと思います」

「まあそうだけれど・・・じゃあ、定規と替えのシャツを持ってくるよ・・・」

「いえ、定規はあります」
そう言って、S君がズボンの尻ポケットから定規を取り出します。

「用意がいいね?」

「N事務長から、デジカメを持ってくるように電話を頂いた時からこの状況は予想していましたし、Tさん達が帰る様子で、それは予想から確心に変わりました」

「最近のS君には、驚かされるよ・・・全く・・・どんどん、危機的状況を読み取る力やリスクに関する嗅覚が鋭くなってきている」

「これも、N事務長の日頃の鍛錬の賜物です」

「いいことなのか、悪いことなのか・・・」

以下 ●●事後処理Ⅳ●● は109に続く 


2010.1.27 水曜日

行き場のない患者107

医療・介護のよもやま話 — admin @ 13:00:54

●●事後処理Ⅲ●● 

一旦、院長、看護部長には仕事へ戻って頂きました。
院長は会議室を出るまで、N事務長に土下座までさせてしまったことに負い目があるかのように、N事務長に対して普段にはあり得なないぎこちなさで接してきましたが・・・
それに反して看護部長は、N事務長の破れたシャツに対して、異常に反応し、執着していました・・・
「シャツの替えはあるの? 無ければ応急処置してあげますわ」 等々・・・苦笑しか出来ません。

院長、看護部長が退室すると、すぐに医事課のS君がデジカメを片手に登場しました。
S君は、ドアを開けて会議室に入った途端、
「ウワッ! これは凄い、Tさん暴れたんですね」

「そうなんだ・・・」

今度は、N事務長の胸元に視線を送り、
「N事務長、シャツ!・・・」

「そうなんだよ」

「掴み合いですか?」

「正確に言うと、掴み合いではなくて、一方的に掴まれた、です」

「あーあ、破れてますね・・・これは、もう着られませんね?」

「そうだね」

「勿体ない」

「本当に・・・」
S君は、N事務長の反応を見ながらこの状況を楽しんでいる様子です。

「じゃあ、撮影しますね」
そう言い終えると、S君はデジカメを構えて、部屋中を移動しながらアングルを変えて、カシャカシャと会議室の乱れた様子をカメラに収めていきます。
10数枚撮り終えた後で、S君はデジカメをN事務長に見せながら、撮った写真を確認します。
S君の撮った写真は見事な出来栄えです。
今、目の前にある現場の状況よりも、さらにTさんが暴れたように見えます。
アングルによって、こうも感じ方が違うものかと感心します。
倒れた椅子のアップから上を見上げ、アングルを下から上に向けて、机との距離感を出したり、倒れた椅子を重ねて撮ったり、それはもう傑作です。
人には、隠れた才能があるものです。

「凄いね、S君、写真の才能あるなー」

「こう見えても、学生時代、写真部でしたから」

「そうなの?初耳だよ!」

「能ある鷹は爪を隠すです」

「・・・・・・・・・・」

「じゃあ、次は、N事務長の撮影をしましょう」

「ああ・・・」

「じゃあ、まずは全身を撮ります」

「全身?」

「はい、N事務長、もっと苦々しい顔してください。ウーン、駄目だな・・・」
S君はそう言い、カメラを一旦離してN事務長に近寄ってきます。

「N事務長、失礼します」
そう言うや、破れたシャツの胸元を更にグシャグシャにします。

「どうするの?」

「もうちょっと、全体の中で胸元を強調したいんです」

「そうなの・・・」

S君はちょっと顔を離してシャツを確認してから、大きく頷き、再びカメラを構えます。
「はい、そのまま、動かないでください。もっと表情作って、思い出して下さい。胸倉を掴まれている様子を・・・そうそう、Tさんへの憎悪を募らせて」

「ジー、カシャ。カシャ。カシャ」

「はい、御苦労さまです」

「おいおい、何か楽しんでない?」

「そうですか? まあ、楽しくないと言えば嘘になりますけれど・・・」

「もういいかい?」

「後は、胸元のアップ撮りましょう」

「そうだった・・・これが、一番大事だね?」

「そうそう、一番の重要ポイントです」

以下 ●●事後処理Ⅲ●● は108に続く


2010.1.26 火曜日

行き場のない患者106

医療・介護のよもやま話 — admin @ 18:08:34

●●事後処理Ⅱ●● 

警察に通報するかとの院長の申し出に、N事務長は頭を振ります。
当事者であるN事務長が通報しないというのですから、院長もそれに従うしかありません。
N事務長の頭の中では、警察との駆け引きがあったことも事実です。

病院内のイザコザで何かと、お世話にもなっていますから、つまらないことを事件にして、警察から恩を売られたくない。
それにも増して、事件にしたところで、大した事件として扱ってくれないだろうし・・・
起訴なんてとんでもない。
厳重注意くらいなのに、それに対する事情聴取の時間は、短くても半日はかかるでしょう・・・
時間の無駄無駄!

そんなN事務長の心中など知るよしもない院長、看護部長の2人は、あまりのTさんの暴れっぷりを目の当たりにして、未だ立ち直れない様子です。

「それにしても、この部屋、凄いことになってますね・・・」

「椅子も投げ飛ばされてますわ・・・」

看護部長が、投げ出された椅子を直そうとしているのを、
「看護部長、そのままにしておいてください。現場保存です」

「現場ですか・・・」 「・・・・・」

「そうです。紛れもない現場です」

「そうですね・・・それで、どうしますか?」

「これから、証拠としてこの現場を写真撮影します」

「なるほど・・・で、その後は?」

「私の写真を撮って、診察をさせて頂きます」

「それは、した方がいいですね」

「その後、私が今日の話し合いの状況を詳しく書きますので、間違いないか院長、看護部長にサインして頂きたいと思っています」

「分かった」 「はい」

「じゃあ、まずはカメラを持って来させます」

N事務長は、内線電話を取り、医事課に電話を入れます。
「Nですが、S君居ますか?」

「はい、お待ちください」

「Sです。今、Tさん達、大騒ぎしながら出て行きましたが、もう終わったんですか?」

「ああ・・・」

「一件落着ですか?」

「一件落着とは言い難いけれど、終了です」

「そうですか・・・」

「S君、今すぐ、デジカメを持って、会議室に来てくれないか?」

「はい、分かりました」

「よろしくお願いします」

電話を切ると、N事務長は院長、看護部長に向き直り、再び口を開きます。
「院長、看護部長、お疲れ様でした。部屋の片づけも含めて、私とS君でしますのでお気使いなさらず、仕事に戻って頂いて結構です」

「そうですか・・・」 「大丈夫?」

「ええ、後は事務方の仕事です」

「そうですか・・・お言葉に甘えて仕事に戻るけれど、片付いたら院長室に来てください」

「はい、分かりました」

「それでは、後で・・・」

「はい」

以下 ●●事後処理Ⅲ●● は107に続く


2010.1.25 月曜日

行き場のない患者105

医療・介護のよもやま話 — admin @ 20:03:47

●●事後処理●● 

Tさんの雄叫びを聞きながら、N事務長は苦笑いをしています。
それにしても、「ふざけんな! こんな病院、二度と来るか!」 とは恐れ入ります。
まるで病院によって、自分が何か不利益を被ったかのように・・・

苦笑いしているN事務長に院長が声を掛けます。
「N事務長、大丈夫かね?」

「ええ、大したことはありませんが、シャツは破れてます・・・」

N事務長がシャツの前合わせの部分を見ていると、看護部長が寄ってきます。
「かけはぎしたら、直るかもしれませんわ。丁度ネクタイで隠れる場所ですし・・・」

「まあ、そんなに高いシャツでもありませんから・・・構いません」

「それにしても、Tさんは、噂に違わず、凄まじい人です・・・」

「院長は、お話になられるの初めてですわね」

看護部長の言葉に頷きながら、院長が言葉を返します。
「医局も、看護部もあんな人は相手にしていられません・・・」

「はい。いつもあの調子ですわ。自分の望むものを手に入れるまでは・・・」

「あれでは、精神的な病気と言われても不思議じゃない。と言うよりも、もう中毒の範疇に入っているかも・・・」

「院長もそう思われます?」

「多分ですよ」

「ええ・・・」

「ところでN事務長、警察には連絡するかね?」

「・・・どうしましょうか?」

「私は、一応連絡しておいた方がいいと思います」

「私もそう思うわ」

「・・・確かに、今、連絡すれば警察も動くでしょうが、相手が私ですし・・・」

「N事務長だと、どうなんですか?」

「院長や看護部長が暴行を受けたのなら、警察は信憑性もあるし、地域においては無くてはならない人ですから、それなりに真剣になりますが、相手が私だと、単なる小競り合い、へたをすれば私が相手を挑発したとしか思わないでしょう」

「・・・・・・・・・・」 「・・・・・」

「院長、看護部長。警察をそんなに信用したり、信頼しては駄目です」

「そんなものかな?」

「ええ、こんなつまらないこと事件にするなって心の中で思うだけです」

「そうか・・・」

「取りあえず、この状況を写真に撮って、現場の証拠保存をします」

「そうだね」

「私の写真も撮って、あとは診察を受けて、暴行の事実は押さえておきます」

「そうしてください」

「Tさんが2度と病院に来ないようにする為のネタにします」

「ネタかね?」

「まあ、ネタと言うか、タネ?素材?取引材料?」

「つまりは、警察に言われたいのか?ってことですね?」

「はい、それもありますし、警察には言わなかったよって情けをかけたことにしてもいいです」

「それで、大丈夫かな?」

「多分・・・ああ見えてTさんは、頭の回転は早いですから・・・今頃、失敗したなと思っているに違いありません」

「そうですか・・・」

以下 ●●事後処理Ⅱ●● は106に続く


2010.1.24 日曜日

行き場のない患者104

医療・介護のよもやま話 — admin @ 17:24:24

●●Tさん最後の抵抗Ⅱ●● 

N事務長はTさんにシャツを掴まれているものの、抵抗することもなく、されるがままです。
N事務長のシャツは、既にボタンが千切れ飛び、ボタンの縫い目も破れています。

3人掛かりで、TさんをN事務長から引き離そうとしているTさん御一行様も、為す術がありません。
Tさんは、ノッポ君達がN事務長から引き離そうとする度に、N事務長のシャツを握っている手の力を強めるからです。

「オイ、離せよ!」

「T、もう止めておけ。その手をシャツから離せよ」

「オマエこそ、止めるな!」

「駄目だよ、これ以上は・・・」

「ウルセエンダヨ!」

Tさんがそう言って、N事務長のシャツを持つ手に力を入れた途端に、完全にシャツが破れます。
ビリッ!
シャツの合わせ目を持っていたTさんの手が、シャツが破れたことによりスルリとシャツから離れます。
手が離れた瞬間にノッポ君がTさんの両腕を掴みます。
腕の自由が利かなくなったTさんは、今度は足でN事務長の脛を蹴り上げます。

「イテッ!」
弁慶も泣く場所ですから、N事務長も痛がって当然です。

「オラ、離せって言ってんだろ!」

「T、いい加減にしろ!」

Tさんは、ノッポ君から逃れようと体を左右に振り続けます。
小さい子供がお母さんから、イヤイヤをしながら逃れようとしているように・・・

ノッポ君から逃れようとしている最中も、Tさんの足は、N事務長の脛、ふくらはぎ、大腿部に容赦なくキックを浴びせ続けます。
でも、Tさんの姿勢が崩れている為に、一発目程の痛みはありません。
N事務長は、Tさんのキックの威力が小さいので、甘んじて攻撃を受け続けます。

その時、N事務長は、キックの数と場所を冷静に頭の中に叩き込んでいました。
「左脛×2、右脛×1、左ふくらはぎ×3、左大腿部×2・・・」

そんな様子を見ていた院長が、再び大きな声で一喝します。
「いい加減にしなさい。 貴様等、出て行け!」

普段は温厚な院長の声だけに、その効果たるや絶大です。
Tさん、Tさん御一行様の動きが一瞬にして止まります。

「もう、話し合いなぞせん! 
警察を呼ばれたくなければ、さっさと出て行ってくれ、分かったか!」

「・・・・・・・・・・」 「・・・・・・」 「・・・」 「・・」 「・」 「・」 「・」

「さあ、この部屋から出て行ってくれ! これ以上騒いだら容赦せんぞ!」

ノッポ君が頷き、Tさんの背中を押して、ドアに向かおうとしますが、Tさんはまだ収まらないようです。
手の届く範囲にある、椅子をなぎ倒し、机の脚を蹴飛ばしています。
ノッポ君はTさんを外に出しながら、他の連中にも部屋を出ろと首で合図をします。
他のTさん御一行様も、渋々ノッポ君の指示に従います。
最後にTさんを部屋から押し出すと、ノッポ君だけはペコリと頭を下げて、部屋から出て行きます。

部屋を出されたTさんは、ドアを蹴りあげながら、
「ふざけんな! こんな病院、二度と来るか!」
と最後の雄叫び・・・

以下 ●●事後処理●● は105に続く


2010.1.23 土曜日

行き場のない患者103

医療・介護のよもやま話 — admin @ 15:50:11

●●Tさん最後の抵抗●● 

N事務長が土下座をしたら、病院に来るのを止めると約束をさせられたTさん。
でも、土下座などするはずがないと思っていたのも事実。
それなのに、N事務長はすんなりとその要求を飲みます。
N事務長にも、多少の悔しさはあるものの、今後、このままTさん達に付き合って時間を無駄にすることや職員にかかる物心両面における負担と、N事務長の小さな見栄や羞恥心とを比べれば、前者を優先させることが大切だと判断しました。
それよりも何よりも、この土下座自体が意味の無いもの、謝罪ではなく単なるパフォーマンスですから、パフォーマーになるだけのこと。

でも、このN事務長の行動にTさんは納得がいかない様子。
N事務長の土下座パフォーマンスの後、「ふざけるな!」 と立ち上がります。

「ふざけるなですって・・・貴女のお望みのとおりに土下座させて頂いたんですよ」

「なんだとこの野郎!」

そう言うと、Tさん御一行さまを掻き分けて、TさんはN事務長に近付いてきます。
Tさんは・・・
N事務長がしないだろうと思った言い出した土下座を、N事務長が恥ずかしげも無く、して見せた為の焦り。
N事務長が土下座をしたからには、今後、約束で病院に来られなくなる戸惑い。
自分が連れてきた大勢の目の前で、馬鹿にされたという屈辱感で目は吊り上り、口からは言葉にならない奇声を発しています。

Tさんは、N事務長のシャツの胸倉をネクタイごと掴みます。
「オイ! テメエ!」
そう言うと、N事務長を自分の方に引っ張り込もうと力を入れますが、N事務長も足に力を入れます。

「ビリ、ビリビリッ!」
音と共に、シャツのボタンが弾け飛び、N事務長のシャツは無残な姿に・・・

「君! 止め給え!」
普段は温和な院長も立ち上がって大きな声を出します。

「君達、彼女を止めなさい!」
院長の声にノッポ君が反応します。

すっと立ち上がり、Tさんの手首を掴みます。
「T、これ以上駄目だ・・・手を放して!」

「なんだと! こいつが悪いんや!」

「・・・いいから、とにかく手は離せ」

「オマエはどっちの味方や!」

「これ以上は、マズイから。 なっ。」

Tさんのシャツを掴む手の力は少し緩みましたが、まだその手はシャツを掴んだままです。
「オマエ等も止めろよ! 警察沙汰になってもいいのか!」

ノッポ君の声に我に返った御一行の内、前列に座っていた茶髪作業着君以外の2人がノッポ君の声に反応します。
ゆっくりとTさんに近付き、恐る恐るTさんの肩に手を掛けます。
ノッポ君はTさんの手首を持つ手の力を強めて、N事務長のシャツを持つTさんの手を外そうとします。

「オマエ等、触るな! 手を離せ!」

男3人掛かりでも、Tさんの手はN事務長のシャツを握ったままです。
N事務長のシャツを握るTさんの手の力が、絶対に離すものかと強まります。
N事務長は、一切手を出さず、されるがままです。
後ろ手に手を組んで、体をTさんに持っていかれないように重心を後ろにかけるだけ・・・

以下 ●●Tさん最後の抵抗Ⅱ●● は104に続く 


2010.1.22 金曜日

行き場のない患者102

医療・介護のよもやま話 — admin @ 18:54:18

●●N事務長の謝罪Ⅱ●● 

Tさんの要求する謝罪、N事務長に土下座しろという理不尽で、意味の分からない、何の脈絡も無い言葉に対して、院長、看護部長は敏感に反応しますが、N事務長は、2人に土下座でも何でもしますと態度を表明します。
院長、看護部長、2人の反応が一般的なのでしょうが、N事務長にとっては、この話し合い自体が意味の無いものであり、土下座というものが、謝罪ではなく、単なる儀礼的な表現としか思っていません。
お正月に神社に行って、神様に頭を下げる。
和室で初めて会う目上の人に、膝をついて挨拶をする程度のことと同じ。

こんなつまらない連中に、いつまでも意味の無い話し合いの時間を取られることを考えれば、頭さえ下げれば、明日からは綺麗さっぱり、この連中から解放される・・・
土下座って言葉は何か屈辱的ですが、頭を下げるのに、たまたまその場所が和室だったと考えれば何て事はありません。
物は考えようです。
土下座して、Tさんの靴を舐めろと言われているわけでもありません・・・

「Tさん、それで貴女の気が済むのであれば、土下座させて頂きます」

「オマエ、土下座出来るのか?」

「土下座したら、その代わりに2度とこの病院にTさんを受け入れられませんが、宜しいでしょうか?」

「出来もしないのに、そんな約束したってしょうがないやろ!」

「それでは、土下座したら、2度と病院に来ないですね?」

「土下座出来たらな」

「分かりました」
そう言って、N事務長は席を立ち、ノッポ君の側に向かいます。

「N事務長・・・」 「事務長・・・」
院長と看護部長の2人は、未だに心の整理が出来ていないようです。
黙って見ててくれればいいのに・・・

「オマエ、本当に土下座するのかよ?」
Tさんも、自分が言い出したことなのに、この展開は読めていなかったようです。

「ええ、Tさんに謝罪させて頂きます」
N事務長は、ノッポ君の1m程手前に膝をつき、

「私が出しゃばったばかりに、Tさんに御不快な思いをさせました。
ここで謝罪させて頂きますので、われわれの思いをお解り頂きたく思います。
今後、Tさんをこの病院で診られませんが、御同席の皆さまも、お約束しましたことお守り頂くこと、お願い申し上げます」
N事務長はそう言うと、両手を広げ、大層に会議室の床に手をつき

「どうも、申・し・訳・あ・り・ま・せ・ん・で・し・た」
と、大きな声を張り上げます。

頭を下げて、心の中で数を数えます。
「1・2・3・4・5」

そして、ゆっくり頭を上げると・・・
目の前には、呆気にとられたTさん御一行さまの顔、顔、顔・・・
N事務長が立ち上がり振り返ると、そこには申し訳なさそうな顔をした院長と看護部長・・・

「それでは、本日の話し合いは以上で終了とさせて頂きます」
N事務長がそう言うと、Tさんが立ち上がります。

「ふざけんな!」

以下 ●●Tさん最後の抵抗●● は103に続く


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