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医療・介護のよもやま話

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2010.2.28 日曜日

行き場のない患者139

医療・介護のよもやま話 — admin @ 13:09:50

●●電話Ⅱ●● 

事務長室に戻ったN事務長に、医事課から弁護士のOさんと言う方から電話が入っているという連絡が入ります。
弁護士でOさんと言う方は面識がありませんので、Tさんの件だとN事務長は確信しました。
早速、電話を繋いでもらいましょう・・・

「どうされますか?」

「勿論、繋いでください」

「それでは、繋ぎます」

カチャ。
「お電話代わりました。事務長のNです」

「○×病院の事務長をされておられるNさんですね?」

「はい」

「私は、O法律事務所の弁護士のOと申します」

話し方は普通です。
上から目線の物の言い方でもないし、かと言って卑下した話し方でもありません。
「初めまして」

「お忙しいところ申し訳ありません」

「いえ・・・」

「本日、お電話させて頂きましたのは、私もよく知っております、Tさんと申す者からの依頼でお電話させて頂きました」

「はい」

「N事務長は、Tさんをご存知でいらっしゃいますか?」

「ええ」
それはそれは、よく存知ております。
何て言ったって、最近では一番の話題の人です・・・

「そうですか・・・Tさんからの依頼でお電話させて頂いているんですが、もし宜しければ一度お目に掛かりたいと思っておりますが、お時間頂戴出来ませんか?」

「別に構いませんので、都合のいい日にちと時間を、順番に2~3上げて頂けますか?」

「明日の午後とかは如何でしょうか?」

明日なら時間はいつでも取れますが、ここは礼儀で・・・
「午後は何時になりますか?」

「午後であれば、何時でも結構です」

それならば、お昼ごはんを食べて、落ち着いた時間で・・・ 
「それでは、15:00で如何ですか?」

「結構です。お伺いさせて頂きます」

「分かりました・・・ところで、O先生はTさんから委任状を頂いて、当院にお越し頂くわけですか?」

「一応、委任状はお持ちする予定ですが、先程申し上げたとおり、Tさんとはこれまでも何度かお会いしておりまして、Tさんの親御さんからの付き合いもありますので、まずはN事務長さんにお話をお伺い出来ればと思っております」

「そうですか・・・分かりました。それでは明日、お話を聞かせて頂きます」

「宜しくお願いします。それでは、明日、15:00に○×病院にお伺いさせて頂きます。受付に伺えば宜しいですか?」

「ええ、受付で分かるようにしておきます」

「お手数ですが、宜しくお願いします」

「ところで、O先生、宜しければ下のお名前もお伺い出来ますか?」

「Kです」

「どんな字をお書きになりますか?」

「Oは××の×と△△の△で、Kは○○の○の一文字です」

「有難うございます」

「ハハハ、N事務長は想像していたとおりの方です」

「はあ、どういうことですか?」

「これから、弁護士名簿を調べるんですね?」

やっぱり分かりましたか・・・その通りです・・・
「ええ、そうです」

「○×弁護士会に所属しておりますから、ご安心ください」

「そうですか・・・それでは、明日お待ち申し上げております」

「私も楽しみにしております。それでは明日」

Tさんの相談したO弁護士は、どうやら頭の切れる、まともな弁護士のようで一安心です。
これならば、話もスムーズに進むでしょう。

以下 ●●O弁護士●● は140に続く


2010.2.27 土曜日

行き場のない患者138

医療・介護のよもやま話 — admin @ 13:51:33

●●電話●● 

Tさんの伝書鳩であるノッポ君の2度目の訪問を受けたN事務長は、その訪問内容を早速院長に伝えます。
院長は、例によって、考えごとをしている時の癖、指先でアゴを触りながら、N事務長の報告を受けています。
院長は、一通りN事務長の報告を聞き終わると、座っているソファーから上体を少し起こして話し始めます。

「なるほど・・・医師会で話が出たのも、Tさんにそんな思惑があったからですか・・・」

「そうみたいです」

「それにしても、彼女は何を望んでいるんでしょう?」

「さあ、その真意が私にも今一つ理解出来ません」

「そうですよね」

「ええ・・・」

「そこまでして、当院で受診する意味も無いし、単に生活保護受給の為とも思えません。ましてや薬欲しさだけでも無いように思えます」

「仰る通りです。生活保護受給にしても、子供が3人いて、母子家庭で働いていない。勿論、その働けない理由が何らかの病気によるものとなっているんでしょうが、当院でその意見書を書いているわけでもありませんし・・・」

「そうですよね・・・」

「薬といっても、E内科部長によると依存症までには、なっていないだろうと仰っていました」

「それは私も確認しましたし、先日の話し合いの時もTさんを観察していましたが、まだ冷静に話をしようと思えば出来ると思いました」

「院長の仰る通りだと私も思います」

「患者観察のプロとしてのN事務長の意見はどうですか?」

「何だか、世の中に対しての不平や不満が鬱積していて、そのはけ口なんでしょうか・・・」

「はけ口ね・・・」

「仕事もしていない。子供3人と内縁の夫との5人暮らし。生活保護費と内縁の夫の給与でそれなりに収入はあるでしょうが、あり余る程の金額でもないでしょう。日々、することが無い。悩みと言えば、どうしてこの生活保護費の受給を続けるかしか無いでしょう・・・自分と世間の繋がりは、病院だけなんでしょう。だからこそ、病院の職員と何ならの繋がりを持ちたい。それが、この行動の元になっている」

「ふむふむ・・・」

「もっと、病院職員と親密な関係になりたい。でも、病院職員と親密な関係と言っても、それは病気を治療するという名目の上での関係であって、何か物足りない。だから、病院職員を困らせてやろうと考えるというのは如何でしょうか?」

「ふむ、そこまで考えての行動かね?」

「しかし、やり過ぎた為に思惑が外れて、出入り禁止になってしまった」

「なるほど」

「勿論、私が勝手に考えただけで、Tさん自身はそんなに難しく考えず、その場の思いつきで行動していると思います」

「そうだね・・・確かに、よく考えるとそんな風にも思えてきます。それでこれからどう対応していきますか?」

「ノッポ君によると、Tさんは弁護士に相談していると言っていましたから、それはそれで受けてたつしかないと思いますし、その方が話はスムーズに進むと思います」

「そうですか・・・N事務長がそう言うのであれば、私に異存はありません」

「それでは、何らかのアクションがありましたら、また報告に上がります」

「そうしてください。いつも言っていますが、危険なことだけは避けてください」

「はい、ご心配有難うございます」

そんな会話を院長とした後、事務長室で業務をしていると、内線電話が鳴ります。
受話器を取ると、医事課からです。

「N事務長、弁護士のOさんと言う方からお電話入っています」

「・・・・・・・・・・・・・・・」
Tさんの依頼した弁護士かな?

以下 ●●電話Ⅱ●● は139に続く


2010.2.26 金曜日

行き場のない患者137

医療・介護のよもやま話 — admin @ 10:59:21

●●ノッポ君の再コンタクトⅥ●● 

ノッポ君の言葉から推測すると、Tさんは○×病院の診療拒否を不服として弁護士に相談に行っているのか、行くつもりのようです。
医療行政では、病院に対して指示、命令が出来ないことが理解出来たようで、頼みの綱を行政から司法へ移したということですが・・・
でも、そんな相談を受ける弁護士がいるのでしょうか?
常識的な弁護士であれば、Tさんから今までの経緯を聞いたら、とても病院に対してアクションを起こしはしないでしょうが、弁護士といってもいろいろです。
もしかすると、もしかします。
でも、逆にその方がいいかもしれません。
完全にTさんとの縁が切れるというものです。
そして、この熱心なTさんの僕、友人のノッポ君の訪問も終わるでしょう。

それでは、Tさんの現在の行動や考えていることも分かったので、さっさとノッポ君との楽しい?会話も終わりにしましょう。

「Kさん。貴方がたの考えていることはよく分かりました。ただ、どう考えても、どう頭を捻っても、Tさんをもう一度病院で診察することには結びつかないんです」

「何とかなりませんか?」

「と言うよりも、Tさんこそ何とかなりませんか?」

「別に病院に無理に来なくてもいいじゃありませんか」

「無理というよりは、Tのライフワークみたいなもので・・・」

「ライフワーク?・・・それを言うなら、単なるワークの間違いじゃありません?」

「ワーク・・・仕事・・・そう言われれば、そうかもしれません・・・」

「Kさんだから言いますけれど、別にTさんが生活保護を受給していようがいまいが、私達にとっては何の関係もありません」

「は、はい・・・」

「受給資格に、医師の就業不可というチェックさえあればいい訳ですし、それを○×病院で書いているわけでもないし、Tさんは、せっかく医療扶助をされているからその権利を行使しているのかもしれませんが、当院ではそういうこととは関係なく、当院で出来る医療を、当院で必要としている患者さまにさせて頂いているだけです・・・それ以上でも、それ以下でもありません」

「Tは、○×病院さんでの医療を必要としています・・・」

「残念ながら、Tさんの求めている医療は、当院で出来る医療ではありません」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「と言うことで、今日のお話も前回と同様、きっぱりとお断りします」

「そんな・・・N事務長、よく考えてみてください」

「はあ?・・・何を考えるんですか?」

「Tの受け入れについて・・・」

「ですから、無理です」

「で、でも、弁護士とか面倒なことになりますよ」

「弁護士?・・・やっぱり弁護士なんだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「それなら、その方がいいです」

「いいんですか?」

「勿論」

「面倒じゃないですか?」

「いえ、弁護士の方が論点もはっきりしますし、書面でもやり取りの方が私にとっては有り難いです」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「Kさんも、もうTさんに頼まれて、○×病院に来る手間も省けるし、その方がいいと思いますよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「ではTさんに、N事務長は弁護士さんとお話させて頂きますと言っていたとお伝えください。今日のところはこれで失礼します」

ノッポ君は何も言い返せないまま、立ち尽くしています。
N事務長は、そんなノッポ君に背を向けて、さっさと病院に向けて歩みを進めます。
この後、あっと驚く展開が待ち受けているとは、この時点ではN事務長もノッポ君も知りませんでした。

以下 ●●電話●● は138に続く


2010.2.25 木曜日

行き場のない患者136

医療・介護のよもやま話 — admin @ 16:04:54

●●ノッポ君の再コンタクトⅤ●● 

どうやら、近所の診療所やクリニックで、Tさんはワザと騒ぎを起こして○×病院の名前を出したようです。
そんなことまでして、事を大きくしてもしょうがないのに・・・
Tさんは、他の診療所やクリニックの先生達からのクレームや要望が○×病院に届いて、それに応える為に、○×病院がまたTさんの診療を受け入れるようになると思っているようですが、そんなことはあり得ません。
確かに、あの患者さん何とかなりませんか?くらいの話はあると思いますが (実際に医師会の集まりで、被害を受けた先生達からではなく、それとなく医師会の役員からの打診はありました)、でも、お互いが医師という立場で物を言いますので、あからさまにそのような要望やクレームを言うことはあり得ません。
お互いに大変ですねで終わってしまうのがオチです・・・
病院と診療所、クリニックは持ちつ持たれつの関係です。
近隣の診療所、クリニックは商売敵ではありません。
特に、○×病院のように地域の医療機関との結びつきを大事にしていれば、そんなことは絶対にあり得ません。
口には出さないまでも、診療所やクリニックの医療的な見過ごしをそれとなく指摘して、患者さまにも先生方にも一番いい方法を取ってきたことは、自他共に認めるところです。
だからこそ、直接の被害を受けた先生方の直訴ではなくて、医師会の役員からの話だったのでしょう。

まだ、Tさんは何か良からぬことを考えていそうです。
ここは、ノッポ君を問い詰めてみることにしましょう。

「Kさん、あんまり無茶をしないようにTさんをたしなめたらどうですか?」

「無茶と言えば、無茶なことしていますね・・・」

「医療機関だって、あんまり酷いことされると黙っていませんよ」

「黙っていないとは、どういうことですか?」

「病院はしませんが・・・医師会が中心になって、ブラックリストを、手配書を回したりして・・・」

「そんなことがあるんですか?」

「さあ、どうでしょうか・・・見たことはありませんが、無きにしも非ずでしょう」

「Tは、いろんな人に相談しているようなんです」

「相談?」

「ええ・・・」

「相談って何を?」

「自分の受けている、診療拒否についてです」

「はあ・・・それで誰に?」

「そういうことを専門にしている方々とだけお話しておきます」

「ふーん。そうですか・・・と言うことは、法律的に相談しているということですね?」

「ん、ま、まあ・・・私は反対しているんです」

「まあ、それが普通の考えです」

「そうですよね」

「でも、Tさんが相談するのは勝手だから、私がどうこう言うことではありません」

「でも、事が大きくなってもしょうがないと思いませんか?」

「事が大きくなろうと、どうなろうと、Tさんが○×病院内でしたことは、決して許されることではありません」

「は、はい。そうだと思います」

「弁護士だろうと、なんだろうと相談されてみればいいと思います」

「べ、弁護士なんて言ってませんよ」

「そうなの?・・・そんなに慌てなくてもいいです」

「弁護士に相談しているなんて言ってません。べ、弁護士なんて一言も・・・」

「だから、私の独り言です。例え、そうであっても、何度も言うようですが、それはTさんの考えですから、私がどうこう言うことではありません」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

どうやらTさんは、診療拒否について、弁護士に相談しに行っているようです。
どうぞ、勝手にしてください・・・ご自由に!

以下 ●●ノッポ君の再コンタクトⅥ●● は137に続く


2010.2.24 水曜日

行き場のない患者135

医療・介護のよもやま話 — admin @ 19:45:23

●●ノッポ君の再コンタクトⅣ●● 

ノッポ君の話は長くなりそうですが、ここは我慢して、ノッポ君の話に耳を傾けることにします。

「それで、○×病院が一番良かったっていうのは、どういう意味ですか?」

「患者さま目線というか、患者さまには決して上から物を言ったりしないし、患者の言うこともある程度は聞いて貰える。先生方も話を聞いた上で治療をしてくれたし、それが夜間だろうと、どんなに夜遅くでも嫌な顔をしないで診てくれたって言うんです」

まあ、それは当院の方針ですから、当たり前のことです・・・
「そうですか・・・」

「それに、看護師やその他の職員、医療従事者って言うんですか?・・・皆さんとっても優しくて、いつも笑顔で対応してくれたって言うんです」

それも、至極当たり前のことです・・・
「お褒め頂きまして、恐縮です」

「そんな○×病院さんを敵に回したって、言ってました」

本当かな?
「敵じゃありません。単に、意見の相違、当院で診られる患者さまじゃなかっただけです」

「そんなことありません。○×病院さんに来られなくなって色んな病院や診療所に行ってるようですが、やっぱりこの病院が一番だと思っているようです」

「そうですか・・・それは残念でしたね・・・」

「残念というか、まだ未練があるようなんです」

「何に対して? 何の未練ですか?」

「それは決まっているじゃないですか」

「えっ? 何が決まっているの?」

「N事務長、何か近隣の診療所やクリニックから言われていませんか?」

「イヤ、何も・・・」
まさか?

「そうですか・・・それならば良かった」

「何が良かったんですか?」

「いえ、どの診療所やクリニックに行っても希望の薬を処方してくれないようで、その度に○×病院の名前を出しているみたいなんです」

ワザと名前を出しているの?
「へー、そんなこと何も言われてませんけど」

「そ、そうですか・・・それならば良かった・・・」

んっ? やっぱりノッポ君も共犯なの?
「何故、良かったんですか?」

「他の診療所やクリニックの先生達から、病院に文句やクレームが来たりしないのかなと思いまして・・・」

「そんなことありません」

「そうですか・・・」

まさか、それを狙って、ワザと近所の診療所やクリニックで騒いでいたとか?
ウーン。Tさんなら遣りかねない・・・
よし、ここは一つ、カマを掛けてみましょう。

「そんなことがあったんですね」

「ええ・・・」

「近所の診療所やクリニックで当院の名前を出してしまったから、そのことで我々が何か言われているかも知れないということで心配して、今日はわざわざ来て頂いた訳だ」

「ま、まあ心配というか・・・ご迷惑というか・・・」

「近所の診療所やクリニックから何も言われていなくて、安心しました?」

「ええ、安心というか・・・」

「残念でしたか?」

「ええ・・・い、いや、残念なんて・・・」

ビンゴ。
これは、ワザと当院の名前を出して、他の診療所やクリニックからの圧力で出入り禁止を解除しようとしたな。
そうは、いきません。

以下 ●●ノッポ君の再コンタクトⅤ●● は136に続く


2010.2.23 火曜日

行き場のない患者134

医療・介護のよもやま話 — admin @ 15:02:46

●●ノッポ君の再コンタクトⅢ●● 

N事務長にとっては、諦めの悪いノッポ君。
Tさんにとっては、粘り強く交渉を続ける、頼りになるノッポ君。
ノッポ君は悪い人じゃないけれど、N事務長は、その存在がだんだん疎ましくなっています。
だって、Tさんの仲間内ではまともだけれど、社会全体で比較すれば???です。

あの事件があってから、待伏せ?はこれで2回目。
何度足を運ぼうが、病院の対応を変更することはありません。
勿論、N事務長の気持ちが動くこともあり得ません。

面倒ですが、病院内に入ってこられるのも何ですから、さっさと話しをする為に外へ出ることにします。
正面玄関前の医事課を通り過ぎようとすると、電話を掛けてきた新人君が頭を何度もペコペコと下げています。
そんなに頭を下げなくてもいいのに・・・などと思いながらも、分かったとばかりに右手を上げてN事務長は正面玄関からノッポ君の車が止まっている外に出ていきます。

正面玄関を出ると、N事務長が出て来るのを待っていたかのように、ノッポ君は車から走り出ます。
「N事務長。何度もすみません」

「Kさん。この間も言ったと思うけれど、ここに長時間駐車されると困ります」

「すみません。でも、これ以外にN事務長にお会いする方法がありませんので・・・」

「それで、今日は何ですか?」

「お気持ちが変わっていなかなと思いまして」

「気持ちが変わる?何の気持ち?」

「勿論、Tの通院の件です」

「残念ですが、変わりません」

「そうですか・・・」

「そんなに簡単じゃないですよね」

「ええ、簡単じゃありません」

「N事務長のお耳に入っているか分かりませんが、先日も近くのクリニックで問題を起こしまして・・・」

ノッポ君はどうやら、診療所の件を知っているようです・・・
でもここは、知らないふりして惚けておきましょう。
「へえ、そうなんですか?」

「どうも、そのクリニックの先生が上から目線で話をされる方だったようで、短気なTの悪い癖と言うか、何と言うか・・・」

「何したんですか?」

「聞いたところによると、大きな声で言い争いをしたらしいです」

「まさか、手を出したりしませんでしたよね」

「それは無かったらしいですが、椅子は蹴飛ばしてやったって言ってました」

「それだけで済んだの?」

「と、本人は言ってましたが、どうでしょうか・・・」

「それでまた、出入り禁止?」

「もともと、薬を出してくれたら儲けもんみたいな気持で行ったようです」

「Kさん。貴方もTさんのことを思っているなら、その薬を出して貰おうという考え方を直してあげたほうがいいです」

「そうなんですが・・・Tは、思い込むと中々考えを変えないので・・・」

「病院や診療所、医療機関は患者さまが欲しい薬を調達する薬屋じゃないんですよ」

「はい・・・」

「ましてや、Tさんの欲しい薬は市販の薬と違って、病院でも管理を徹底しなければいけないような薬なんです。そんな薬を、はいどうぞって、右から左へ処方は出来ません」

「はい、分かっています」

「じゃあ、その薬を使わなくてもいいような治療を受けることを勧めるのが、あなた達、Tさんの周りにいる人達の役目じゃありませんか?」

「それも分かっています・・・」

「分かっているなら何故、同じことを繰り返すんですか?」

「今度のクリニックの件でも、今行っている病院や、以前行っていた病院全部含めて、この病院、○×病院さんが一番良かったって思っているようなんです」

「はあ?・・・答えになってないですね」

「聞いて頂けますか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

話の論点がずれているように思いますが、ノッポ君は真剣な顔でN事務長に語り続けます。
ここは、ノッポ君の話を聞いてあげましょう。

以下 ●●ノッポ君の再コンタクトⅣ●● は135に続く


2010.2.22 月曜日

行き場のない患者133

医療・介護のよもやま話 — admin @ 12:56:37

●●ノッポ君の再コンタクトⅡ●● 

N事務長は、医事課の違法・不法駐車担当の新人君からの連絡を待っている間に、正面玄関を見下ろすことの出来る窓のある場所に移動します。
窓越しに車を見下ろすと、新人君がおどおどした背中を見せながら白いバンに向かって歩いていきます。
声は聞こえないけれど、様子を見守ることにします。

新人君、車に近寄っていきます。
車道に出て、運転席に頭を下げながら回り込みます。
運転席の窓をノックしています。
運転手の顔は見えませんが、何やら話しこんでいるようです。
依然、車が動く様子は有りあせん。
新人君の頭が何度も下がっています。
それじゃあ、駄目だよ・・・
もっと毅然とした態度で言うことを言わないと。
あーあ、新人君、何度も頭を下げながら車を後にします。
車は?
動きません。
・・・・・・・・・・・・・・・
それでは事務長室に戻って、新人君の連絡を待つことにします。

事務長室に戻ると内線電話が鳴り出します。
「はい、Nです」

「ずみません。N事務長ですか?」

新人君は、意味も無く、また謝っています・・・
「はいそうです。車は移動出来ましたか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「どうしましたか?」

「それが・・・車は移動してくれませんでした」

そんなことは、上から見ていたから知っています・・・
「どうして?」

「それが、運転手の方がN事務長を呼んでくれって言うんです」

「へえ、そうですか」

「呼んでくれたら、車はすぐ動かすって言われました」

「それとこれは、関係無いように思います」

「でも・・・」

「でも? 何ですかその言葉は? 目上の人や患者さまに “でも” という言葉は使ってはいけませんと勉強会で教わりませんでしたか?」

「す、すみません」

「無暗に謝らない!」

「は、はい」

まあ、新人君の教育はここまでにして・・・ノッポ君に会いにいくとしましょう・・・
「貴女の教育はこの辺りにして・・・それで、運転手はこの間と同じ人でしたか?」

「た、たぶん・・・」

「多分ですか?」

「は、はい」

「それでは、その運転手に言われたことをそっくりそのまま私に教えてください」

「運転手の方は、“N事務長に話したいことがあるんだ。理由あって病院内に入れないから、N事務長を呼んでくない”って言っていました」

「それだけですか?」

「はい」

「車を移動することはどうしたの?ちゃんと言いましたか?」

「すみません。声を掛けたら、すぐにそんな話しになって、多分伝わってないと思います」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

これ以上、新人君を苛めてもしょうがないので、ノッポ君の待つ車まで伺うことにします。
それにしても、ノッポ君は諦めません。
彼が営業マンならば、いい人材なんでしょうが・・・

以下 ●●ノッポ君の再コンタクトⅢ●● は134に続く


2010.2.21 日曜日

行き場のない患者132

医療・介護のよもやま話 — admin @ 11:48:42

●●ノッポ君の再コンタクト●● 

病院だけでなく、診療所でもTさんは悪行を働いたようです。
その被害は、悪行を働かれた診療所のみならず、○×病院にまで降りかかってきます。
どうして、Tさんは○×病院の名前をその診療所で出したのでしょうか?
何か、そこにはTさんの思惑があるように思えてなりません。
Tさんのかかっている病院は、私が知っているだけで3件。
今、かかっているのは、勿論○×病院ではありませんし、隣の市の××病院にかかっているとノッポ君も言っていました。
じゃあ、何故、薬を出してくれそうにない診療所で悪行を働き、○×病院の名前まで出したのか?
まさか、医師会でこの問題が話題になることを狙った?
考えすぎでしょうか・・・

そんなことがあった次の日。
いつものように、日々の業務をしていると、事務長室の内線電話が鳴ります。

「はい、Nです」

「医事課ですけれど・・・」

「何でしょうか?」

先日、一緒にノッポ君の車を注意しに行った医事課の新人君です。
「N事務長、すみません・・・」

「すみませんはいいから、用件を先に言いましょう」

「はい、すみません」

「だから、すいませんは要りません。先日の接遇&話し方の勉強会でお話しましたよね」

「はい。すみ・・・」

「はい、じゃあ、用件を聞きましょう」

「はい、先日の車の件ですが、また今日も止まっています」

そうなんです。
○×病院では、近隣の住民からの要請もあり、違法、不法駐車を撲滅する為に、違反をしている車の車種やナンバーを記録しています。
この仕事は、新入職員に任されることになりますから、先日と同じ車種、ナンバーということで、新人君はどうするべきかN事務長に連絡してきたのでしょう。

「間違いなく、同じ車ですか?」

「はい、先日、N事務長に付いていって頂いた時の車と同じです」

「そうですか・・・」
ノッポ君、なんですか? また、相談ですか?

「どういたしましょうか?」

「とっとと、注意しに行って、車を動かして貰ってください」

「私で大丈夫でしょうか?」

「大丈夫、大丈夫」

「でも、あの人の友人の患者さまはとっても問題のある方だって先輩から言われました・・・」

全く余分なことを吹き込むんだから・・・
「あー、友達は危ない患者ですけれど、彼はまともです。だから大丈夫です」

「本当に大丈夫ですか?」

こうなると、新入職員は面倒くさい。
ここで、怒鳴るわけにもいかないし・・・
新入職員の教育は、
我慢、我慢。
辛抱、辛抱。
優しく、優しく。

「君の為に、いい勉強になりますから、車を移動するようにお願いして来て下さい。それでも言うことを聞かなかったり、何か文句を言うようなら、また電話してきてください」

「文句を言ったりされますか?」

もーいいから、さっさと行きなさい。
「大丈夫です。いつまでも電話していてもキリがありませんから、何も恐くありませんから、行ってきてください」

「はい・・・」

「終わったら、また結果の報告をお願いします」

「は・・・い・・・」

それにしても、ノッポ君、何の用でしょうか?
どうせ彼女に、N事務長に話があると言うに決まっていますが・・・

以下 ●●ノッポ君の再コンタクトⅡ●● は133に続く


2010.2.20 土曜日

行き場のない患者131

医療・介護のよもやま話 — admin @ 11:05:49

●●院長の判断●● 

院長はN事務長と話しながら、何か考えているようです。
院長は考え事をする時に、アゴの下に手を持っていく癖があり、今、院長の左手がアゴに伸びています。

「院長、何か・・・」

「いや、どうしたものかね?」

「どうしたものかねとは、どうされましたか?」

「なんだか、Tさんが憐れになってきました」

「そうですか・・・確かに憐れですね・・・」

「どうして医療従事者に対して喧嘩腰、自分の主張を通そうとするのかな?」

「よくある、権威やステータスの有る者に対して自分の力を誇示するというタイプでしょう」

「それにしても、医師や医療従事者、大きくまとめて言えば病院自体が権威だとは到底思えないが」

「彼女達にとっては、医師や医療従事者がある種の権威に映るんじゃないですか?」

「どう考えても、医師、病院なんてものは権威ではなく、法、倫理観、約束事に縛られた不自由人、医療の世界で24時間働くロボットなんだけれどね・・・」

「一般の人達の尺度は違うんです。彼等の尺度は、お金なんです。お金を持っていたり、大きなお金を動かしている場所が自由で、自分達のやりたいことを何不自由なくしていると思っているんです」

「その見解はよく理解出来るが、権威やステータスに対して、意味のない反発をしてもどうにもならないじゃないかね?」

「私もそう思いますが、彼等にとっては、それが唯一自分をアピールする場、自分を・・・自己の存在を証明する手段なんでしょう」

「なんだか難しい生き方だね」

「院長、でもそういう人達は結構います」

「そうかね?」

「ええ、だから会社で派閥が出来たり、他人を誹謗中傷して、その人の持っている地位から追い落として自分がその地位にのし上がろうとする人がいるんじゃないですか?」

「もちろん、大学医局でも出世争いはあるけれど、それは同じ道を目指しているからこその競争であって、全然自分と違う道を進んでいる他人を追い落として何になるんだい?違う道の他人の地位にはつけないよ」

「自分の進む道がないから、普段、戦う場所がないから、自己を証明する手段や場所をいつも探しているんだと思います」

「それが、Tさんにとっては病院かね?」

「ええ、そういうことです」

「よくあるクレーマーの心理というのかね?」

「ええ、Tさんの場合は、クレーマーという括りになるかは疑問ですが、大きな意味、広義で解釈すればクレーマーです」

「ウム・・・」

「勿論、病気がそうさせていることも否定出来ません・・・」

「そうですね。彼女の場合は、病気が彼女の行動の原因かもしれませんね」

「でも、素の彼女がしているとも思えます。だから、病気なんですが・・・」

「そちらの判断は我々がする訳にいきませんから、専門医に任せましょう」

「それで、院長、Tさんに対する対応をどうしますか?」

「今の状況を続けましょう」

「このまま放っておきますか?」

「ええ、そうしてください。N事務長にはコンタクトが続くと思いますが、病院に来て貰っても治療の方法がありません。このままTさんの望む薬を処方し続ければ、間違いなく中毒患者を作ってしまいます」

「分かりました。今後も、何かコンタクトがあればご報告します」

「お願いします」

「それで院長、医師会の方は大丈夫ですか?」

「ああ、医師会にも言い分はあろうが、病院にも言い分はあります。医師会の都合で病院で診てくださいとは言わせません」

「お手数ですが、そちらの方は宜しくお願いします」

「ああ、N事務長も充分注意してくださいね。また、拉致とかされないように」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

以下 ●●ノッポ君の再コンタクト●● は132に続く


2010.2.19 金曜日

行き場のない患者130

医療・介護のよもやま話 — admin @ 14:48:30

●●院長の話●● 

どこでもお構いなしに暴れまくるTさん。
今度は、市内の診療所で薬を要求して、一悶着あったようです。
そこで、○×病院の名前を出した為に、院長が事情を聞かれたということです。

「それでどんなことを聞かれたんですか?」

「病院ではどんな様子だったかと聞かれました」

「でも、院長が直接診察したわけじゃありませんよね」

「そうなんだ。だから、同じような様子だったとお話しておきました」

「それで、納得されましたか?」

「まあ、医者どうしだから、そんなにあーだこーだということにはなりません」

「それだけですか?」

「ああいう患者は、病院で診て貰えないかとお門違いのことも言われました」

「さすが、医師会。困った患者は病院へたらい回し作戦ですか?」

「まあ、当院も緊急時だけは診ますと言っておきました」

「ここで、暴れたことはお伝えしたんですか?」

「ええ、事務長に全治2週間の暴行を働いたとね」

「院長、2週間じゃなくて、1週間ですよ」

「まあまあ、ここは少しオーバートークでいいじゃないかな」

「今度、医師会に行ったら、多分事務局長に何か言われますね」

「そうしたら、あんな患者は○×病院では受け入れられない、医師会の夜間救急診療所で診てくれって言ったらいい」

「そうか、その手がありますね」

「ハハハ、そしたら事務局長が今度は矢面に立たされるから、何も言ってこなくなります」

「そうですね」

「ところで、Tさんはその後何も言ってきてませんか?」

「ええ、Tさん本人は何も言ってきておりませんし、病院に顔も出しておりません」

「Tさん本人はということは、他の誰かがアクションを起こしているのかね?」

「あの場にいた、Kさんという男性を覚えておられますか?」

「どの人かな?」

「背が高くて、一番まともな受け答えをする男性なんですが」

「ああ、なんとなく覚えています。その彼がどうしたのかね?」

「例の日の翌日に電話があったことはお話したと思いますが、先日は病院の前で私を待伏せしていました」

「待伏せ?」

「待伏せと言っても、私が病院から出てくるのを辛抱強く待っていたというのが正しいかもしれません」

「それで、どんな目的で待っていたの?」

「要は、先日のことは無かったことにしてください。病院に来られるようにしてくださいということです」

「そうですか・・・それにしても、無かったことにしてくれとは、よく言います」

「勿論、言わせているのはTさんで、Kさんは、言っていることがどんなに恥しいことか理解していましたから、まだ救われます」

「そうですか・・・」

以下 ●●院長の判断●● は131に続く


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