行き場のない患者141
●●O弁護士Ⅱ●●
翌日、O弁護士の来院の時間が迫ってきました。
N事務長は、頭の中を一般業務モードから、来客、リスクマネージメント、危機管理モード、レベル5に切り替えます。
自分だけのこの儀式は、誰にも見せたことがありませんが、パソコン画面をシャットダウンして、暫し目を瞑り、息を整えてパソコンの電源が切れるまでの時間を利用して頭の中を空っぽにします。
パソコンの電源の切れるのを確認するや、背広を羽おり、背筋を伸ばして気合を入れます。
ヨシ!
これで準備完了です。
たったこれだけでも、立派なルーチンワークです。
時間を確認すると、15:00、5分前。
そろそろ、O弁護士の来訪を伝える電話が掛かってくる頃合いです。
デスク上の内線電話が鳴り始めます。
「はい、Nです」
「受付にお約束されたO弁護士が来られております」
「お待ちしておりますから、事務長室の隣の応接間までご案内お願いします」
「かしこまりました」
流石、弁護士、時間はきちっと守ります。
今日は、初顔合わせですから、相手のお手並み拝見といきましょう。
3分後。
隣の応接間に人が入った音が聞こえてきます。
事務長室のドアから、O弁護士を案内した医事課長が顔を出して、目配せを送ってきます。
その目配せに反応したN事務長は、大きく首を縦に振ります。
いざ出撃、出陣です。
応接間にて、
「はじめまして、事務長のNです」
「昨日お電話させて頂いたOです」
2人は軽く挨拶を交わしながら、名刺交換をします
「今日は、お一人ですか?」
「ええ、事務所も一人でしております」
O弁護士から頂いた名刺を見ながらN事務長は、
「そうですか・・・事務所は○×弁護士会館内なんですね?」
昨日、調べて知っているのに軽くジャブ1
「ははは、そうです。家賃も安いので・・・」
「そうなんですか。どうぞお掛けになってください」
「それじゃあ、失礼します」
「どうぞ」
「それにしても、こちらの病院は職員教育もいき渡っていますね」
「ありがとうございます」
「受付の対応も一般の会社と遜色なく、立派なものです」
しめしめ・・・その為に医事課長に応対するように頼んでおいたんです・・・
「病院だからといって、第一印象は大切な要素ですので・・・」
「N事務長の教育がいいからです」
「とんでもありません。事務員がそれぞれ日々研鑽している賜物です。私は関係ありません」
「いやいや、そんなことは無いと思います」
じゃあ、ちょっと軽めのジャブ2・・・
「O弁護士は、医療訴訟なども手掛けていらっしゃるようですから、いろんな病院を見ておられるわけで、お褒め言葉と受け取ってもよろしいですか?」
「ええ、勿論です。・・・私の関わった医療訴訟のことも調査済みですか・・・まいったな」
「△△訴訟がそうでしたか?」
「ええ、結局、示談ということで決着になりましたけれど・・・」
「それは、勝訴と同じです」
「まあ、そうですかね・・・」
「病院側からすれば、恐い弁護士さんって訳ですね」
「そんなことはありません」
「いやいや・・・」
以下 ●●O弁護士Ⅲ●● は142に続く