行き場のない患者147
●●O弁護士Ⅷ●●
自分で書いた報告書を抱えて、事務長室から応接室に戻るとO弁護士は腕組みをしたまま頭を右に傾けています。
また考え事でしょうか?
O弁護士の気持ちも分からないではありませんが、ここはこのまま駄目押しといきます。
「持ってまいりました」
「そちらは、N事務長が作成されたものですか?」
「ええ、そうです」
「それでは拝見させて頂きます」
「自分のことですが、感情的にならないように・・・客観的に、第三者的立場で作成しましたことを付け加えさせて頂きます」
「分かりました・・・」
O弁護士はそう言うと、N事務長が作成した報告書に目を通しはじめます。
さすがに書類に目を通すのは早く、次々とページを捲っていきます。
そのページを捲るスピードが落ちたのは、添付資料であるN事務長の受傷写真、会議室の散乱した机、椅子の写真のページからです。
ちょっと、声を掛けてみることにします。
「どうですか?」
「んっ。 ええ・・・」
「どうされましたか?」
「いえ・・・」
すると、応接室がノックされます。
「はい」
「頼まれましたN事務長のカルテをお持ち致しました」
声の主は医事課長です。
「どうぞ入ってください」
「失礼します」
そう言って、医事課長は、N事務長のカルテをN事務長に手渡します。
「ありがとう。ご苦労様でした」
「他に何か必要なものがあればお言いつけ下さい」
「そうですね、申し訳ありませんがお茶をお願い出来ますか?」
「はい、かしこまりました」
普段は来客にお茶など出しませんが、O弁護士も思惑が大きく外れてお疲れのようですから、ここはサービスしておきましょう。
給湯室にお茶を入れる為に医事課長が退出したの確認してから、カルテをO弁護士に差し出します。
開いたページは、診察の時に書いて貰った診断書が貼ってあるページです。
「どうぞ、参考までにご覧ください」
「は、はい・・・それでは・・・」
そう言って、O弁護士は、もうどうにでも成れというようにゆっくりした動作でN事務長からカルテを受け取ります。
「ご確認だけでもと思っております」
「はい・・・」
「どうですか?」
「ええ・・・完璧です」
「完璧?」
「はい、良く出来た報告書です」
「お褒め頂いているわけですか?」
「いえ、客観的にそれでいて内容もしかっりしていますし、場の臨場感もよく表現されています」
「はあ・・・」
以下 ●●O弁護士の見解●● は148に続く