行き場のない患者148
●●O弁護士の見解●●
N事務長のTさんに関する報告書に目を通して、客観的であり、それでいて内容もしかっりしている。場の臨場感もよく表現されていると感想を述べたO弁護士ですが、報告書を褒められてもどうしようもないとN事務長は思っています。
感想を述べた後、O弁護士は報告書やカルテを閉じて机の上に置き、頭を右に傾けて黙り込みました。
その時、いいタイミングで医事課長が頼んだお茶を持って応接室に入ってきました。
嫌な沈黙を破るには最適なタイミングです。
お茶をテーブルに置いた医事課長にお礼を言って、O弁護士にも話しかけます。
「ありがとう・・・O弁護士、遅くなりましたがお茶でも飲んでください」
「ああ、すみません・・・頂きます」
「熱いお茶でよかったですか?」
「頭に血が巡らない時は、熱いお茶が一番です」
「そうなんですか?」
「血行が良くなるような気がします」
「ハハハ」
医事課長が応接室から退室したのを確認してから、N事務長は最後の攻勢をかけることにします。
「O弁護士、ご理解頂けましたか?」
「ええ・・・」
「ということで、当院ではTさんの診療を中止致しました。勿論、緊急時やそれに値するような場合は除いてです」
「そうですね・・・」
「これで、何か不都合はありますか?」
「○×病院さんの言い分はもっともです」
しめしめ・・・
「そうですか・・・」
「それで、当事者であるN事務長は、今回の件を警察にはお話されましたか?」
「いえ、そこまではしておりません」
「先程、どう取り扱うかは院内で調整中とのことでしたが、今後はどうのような方向性を考えておられますか?」
「このまま、Tさんが当院がお勧めしましたとおりに紹介状を持って、専門の病院に罹るのであれば、事を大きくしようとは思っておりません」
「民事もないと思っていいですか?」
「O弁護士にも、今日お時間を割いて頂いたわけですから、O弁護士の顔を立てて、お土産と言っては失礼ですが、そう思って頂いて結構です」
「分かりました。私が責任を持ってTさんに伝えます」
「宜しくお願いします」
「こちらこそ・・・」
どうやらO弁護士はTさんの行為に違法性を認め、刑事、民事事件にしないと言うN事務長の提案を受けてTさんの当院への出入りを止めることに協力してくれるようです。
協力というよりは、取引かな?
でも、これで○×病院に対するTさんの攻撃、口撃は終結です。
取引成立!
「じゃあ、そういう方向で宜しくお願いします」
「はい・・・それにしても、N事務長も大変な仕事をなさっていますね」
「そんなことありません」
O弁護士の口から、今度は労いの言葉が出ました・・・
以下 ●●O弁護士と雑談●● は149に続く