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医療・介護のよもやま話

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2010.5.31 月曜日

家族の形54

医療・介護のよもやま話 — admin @ 18:26:32

●●N事務長とE内科部長の共闘Ⅳ●● 

N事務長は、Bさんのご主人にソファーに腰掛けるように勧めましたが、先程壁越しに聞いた話を2度聞いても仕方がありません。
ここは、趣旨を変えてBさんから話を聞いてみることにします。

「Bさんは、奥さんのこと好きなんですか?」

「いきなり質問ですか・・・そうですね、どうだろう?」

「もちろん、何十年も一緒に生活してきたわけですから、好きとか嫌いとかという問題じゃないことも理解しているつもりですが・・・」

「好きか嫌いかと言われれば、嫌いではない」

「それはそうですよね」

「好きかと聞かれれば、それは考えたことはない」

「そうですか・・・」

「でも、彼女は多分私のことが好き、大好きだと思う」

「凄いですね。言い切れるのですか?」

「ああ、倒れて寝たきりになる前からずっと言われていたし、寝たきりになった後は、自分の惨めな姿を見せたくないって言っていたからな・・・」

「そんな奥さんを見て、何とかしてあげたいとは思わないのですか?」

「ああ、その話ですか」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「その話ならE先生にも言ったけれど、彼女の意見、彼女の希望を聞いて貰おうと思うんだけれど・・・」

「へえ・・・」

「だけれどE先生にはその意見や要望は却下されました」

「そ、そうなんですか・・・」

「N事務長にもう一度お願いして、E先生に取り持って貰いたいな」

「なんですか?」
聞いていたのにしらじらしいかな・・・

「彼女、妻を今日の時点で退院させて貰いたいんだ」

「はあ・・・それでどうするんですか?」

「家の布団に寝かせておく」

「寝かせておいて、どうするんですか?」

「妻のしたいようにします」

「したいようにって?」

「それは、彼女が決めることです」

「彼女、奥さんが決めることって言っても・・・右半身がマヒしていて動かないのに、またほったらかしですか?」

「またとは、嫌な言い方ですな」

「そうでしたね、それは失言でした。申し訳ありません。ちゃんと救急車も呼んで、病院にも運びましたものね・・・」

「それも、角のある言い方だな」

「それは聞き方です。聞き方を変えれば、角も裏表もありません」

「そうかな?」

「もちろんです」

以下 ●●N事務長の判断●● は55に続く


2010.5.30 日曜日

家族の形53

医療・介護のよもやま話 — admin @ 16:49:38

●●N事務長とE内科部長の共闘Ⅲ●● 

隣の事務長室でE内科部長とBさんの話を壁越しに聞いていたとも言えないので、Bさんにもう一度、Bさんの気持ちや思っていることをN事務長に話をさせようとするE内科部長とN事務長ですが・・・

「どうですか、Bさん」

「何がどうですかじゃ?」

「私は先に病棟に戻っていますから、先程私に言われたことをN事務長にも話してみるのは如何でしょうか?」

「事務屋の事務長にそんなことしてどうなるんだ?」

「事務長としての意見を聞かせてくれると思いますよ」

「事務長の意見なんて聞いてもしょうがないだろ」

「そんなことはありません。当院、○×病院では事務長の意見は、医療従事者も納得するに値する意見です」

「でもな・・・」

「まあ、N事務長がBさんの相談?ご意見をどう思うか聞いてみるのもいいと思います」

「ああわかった・・・」

「じゃあN事務長、申し訳ありませんが私は病棟に戻っていますから、Bさんのお話を聞いてあげて下さい」

「それは構いませんが・・・」

「なんじゃ、事務長は私の話を聞くのが不服か?」

「そんなことはありませんが・・・」

「ありませんが?」

「いえいえ、お話聞かせて頂きます」
でも、さっき聞いた話と同じなんだろうな・・・私は奥さんの看病は出来ませんって・・・
でもここは、一旦E内科部長をBさんから自由にしてあげなければいけません。

「じゃあそうしようか、場所はここでいいのか?」

「ええ、ここでお聞きします」

「E先生も一緒か?」

「いえ、E先生には一旦病棟に帰って頂きます。その方がBさんもいいですよね?」

「どちらでも構わんが・・・まあ、同じ話を2度聞くのもつまらんだろうしな」

「つまらないことはないでしょうが、ここはBさんと私だけでお話をさせて頂いた方がいいかと思います」

「なんじゃ、事務長さんと私だけで話をするといいことがあるのかな?」

「事務屋としての考えを、お話させて頂きます」

「そうか・・・何だか意味深じゃの・・・」

「深い意味はありませんが、私は私なりの意見を言わせて頂きます」

「そうか・・・それじゃあ、そうしようか・・・」

「E先生、Bさんからお話を聞いてから病棟にまいります」

「ああ、分かりました。それでは後ほど・・・」

「さて、Bさん。 どうぞソファーに掛けてください。 座って話をしましょう」

「ああ、そうですな」

以下 ●●N事務長とE内科部長の共闘Ⅳ●● 54に続く


2010.5.29 土曜日

家族の形52

医療・介護のよもやま話 — admin @ 19:16:29

●●N事務長とE内科部長の共闘Ⅱ●● 

E内科部長に代わって、今度はN事務長がBさんのご主人との戦いに挑みます。
もちろん、Bさんのご主人の負のベクトルである敵愾心をE内科部長からN事務長へ向けるのが最大の目的です。

「そうですか、丁度、この応接室の前を通りかかったら、あんまり大きな声がしていたので、どうかしたのかと思ってドアをノックしたんです」

本当は、隣の事務長室で壁に耳をつけて聞いていたんですが・・・
「本当か?」

「ええ、本当です」

「ドアに耳をつけて、中の様子を伺っていたんじゃないのか?」

確かに、耳をつけていましたが、それはドアではなくて隣の事務長室の壁です・・・
「そんなことするはずがありません」

「まあ、どうでもいいけどな・・・」

「ところで、Bさん、今日は奥さんの今後のことについてE先生に相談に来られたんですよね」

「ああ、そうだったな・・・」

「もう終わったんですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「帰るとか、逃げないでとか、おふたりが言っておられましたけれど・・・」

「だから逃げたりしてないじゃないか」

「そうですか・・・それで奥さんの今後の件については・・・E先生話されましたか?」

「いえ、まだこれからです」

「これからなんですか・・・今までは、別の相談だったわけですね」

「そういうことです。 奥さんのこととは別のことです。 そうでしたよねBさん?」

「ん、ま、まあ・・・」

「そうですか、それでは別の件の相談も終わったようですし、病棟師長も相談員も待っていると思いますから、病棟に場所を移しましょう」

「そうですね、それがいい。 Bさん、さあ・・・」

「そんなこと話してもしょうがないじゃないか・・・」

「そんなこと言わないで。 N事務長も場所を変えようって言っているんですから・・・」

「事務長は関係ないと思うけれどな・・・」

「私は関係ないですか?」

「ああ、関係ない」

「そんなこと言わずに、私も話し合いのメンバーに加えて貰えませんか?」

「Bさん、それがいい。 こう見えてもN事務長はなかなかのアイデアマンですよ」

「アイデアマンは今の状況ではいらないんじゃないか?」

「そんなことはないです。いろんな意見を聞いて、その中から一番いい方法を取られるのがいいと思います」

「そんなものかな?・・・私の気持ちは決まっているんだけれど・・・」

「そうなんですか? その気持ちを私にも聞かせてください」

「事務長さんに言ってもしょうがないだろ?」

「そんなこと言わないで、私で解決出来るかもしれませんよ」

「そうかな・・・」

以下 ●●N事務長とE内科部長の共闘Ⅲ●● は53に続く


2010.5.28 金曜日

家族の形51

医療・介護のよもやま話 — admin @ 20:05:44

●●N事務長とE内科部長の共闘●●

自分の思い通りに進まない話し合いを切り上げて帰ろうとするBさんのご主人と、そんなBさんを引き留めて一般的に患者さまの家族と行うような話し合いをしようと試みるE内科部長。
これはどう考えても、2人だけで歩み寄ることは出来そうにありません。
こうなったら、誰かが悪者にでもならない限り、E内科部長とBさんのご主人が話し合いのテーブルで向き合うことはなさそうです・・・
悪者の役となると、そうです、やっぱりN事務長がはまり役です。

「帰るだなんて、どうされたんですか?」

「いや、このE先生は頭が固くて話にならん」

「そうですか?」

N事務長はそう言いいながらE内科部長を見ると、E内科部長は苦笑いをしながらもBさんのご主人の腕はまだ握ったままです。

「E先生、もう、掴んでおるその手を離してくれないかな?」

「まさか逃げたりしないでしょうね?」

「私が逃げると思っておるのか?」

「まあまあ、BさんもE先生もそんなに喧嘩腰にならないでください」

「喧嘩腰になぞなっておらん」

「そうですか、そうであればBさんも、もう少し落ち着いてお話をされたらいかがですか?」

「だから、私は落ち着いておる」

「そうは思えませんが・・・」

「なんじゃ、事務長だったな?」

「ええ」

「突然部屋に入ってきたと思ったら、なんとも失礼な奴だ」

「失礼でしたか?」

「ああ、若いくせにその話し方がなっとらん」

「そうですか?」

「ああ、生意気盛りの話し方じゃ」

もう中年になろうかというN事務長でも、Bさんのご主人の年代の方から見れば生意気盛りのようです。
まるで子供扱いですが、これもなかなか楽しい感じです。

「それは、大先輩に対して失礼致しました」

「その慇懃無礼な物言いが気に入らんのじゃ」

「慇懃無礼ですか? 丁寧に話しているだけです」

「そうか? 何か言葉の裏に、嫌味な気持ちを入れてないかね?」

「滅相もありません」

「そうだといいが・・・」

よしよし、Bさんのご主人の敵対心がE先生からN事務長に移ってきたようです。
このままもう少し、Bさんのご主人を攻めてみることにします。

「ところで、Bさん、何で大きな声を出されていたんですか?」

「私は大きな声など出しておらんぞ」

「そんなことはありません」

「出しておらんと言っておるだろ!」

以下 ●●N事務長とE内科部長の共闘Ⅱ●● は52に続く


2010.5.27 木曜日

家族の形50

医療・介護のよもやま話 — admin @ 12:48:33

●●N事務長再登場●● 

E内科部長とBさんのご主人の主張は平行線のままです。
もちろん2人の意見が噛み合うことはないのでしょうが、E内科部長が声を荒げただけで済んだのが何よりも幸いです。
壁越しに2人の会話を聞いていたN事務長でも、Bさんのご主人の考えには、ゾッとするものを感じます。
奥さんが半身マヒしているから、奥さんもBさんも以前の生活には戻れない・・・だから奥さんをこのまま見捨てるなんて、普通の人は口が裂けても言えないでしょう。
そして、奥さんともそのことについて話し合って、奥さんにも納得させたなんて・・・
夫婦の形がいろいろとは言え・・・常識的には、考えられないことです。

隣の応接室では、E内科部長がBさんのご主人に病棟に戻ることを促しています。

「さあ、Bさん。 ここでの話は聞かなかったことにしますから、病棟に戻りましょう」

「いや、患者と家族の思いを最優先して貰いたいですな」

「ですから、それは出来ません」

「どうしてじゃ?」

「どうして?」

「そうだ、そんな訳の分からない医師の倫理観などと言われても納得出来ん」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「無言で私を睨んでも、考えは変わらないぞ!」

「・・・Bさん、これ以上手間を掛けさせないでください」

「手間じゃと?」

「ええ、病院として、医師として出来ることと出来ないことがありますと、さっきお話しましたよね?」

「だからなんじゃ?」

「もう、この部屋で2人きりで話すことは何もありません」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「この部屋を出ないと言うならば、強制的に出て頂きます」

「強制的に出す? 笑わせるな!」

「さあ、病棟で奥さんを交えて、今後のことを話し合いましょう」

「・・・私は帰らせて貰う!」

「Bさん、何を言っているんですか」

「じゃあ、世話になったな」

「ちょっと、Bさん・・・」

「何をするんじゃ、手を離せ!」

「落ち着いて・・・」

どうやら応接室の中で、Bさんのご主人とE内科部長が帰る、帰さないで揉めている様子がパーテーション越しに伝わってきます。
ここはN事務長が出動しなければいけないタイミングです。
N事務長は、廊下に出て応接室入口をノックします。

「どうかされましたか?」

すると、応接室の中からE内科部長の声がします。
「N事務長ですか?」

「はい」

「中へ入ってください」

応接室のドアを開けて中を伺うと、案の定、E内科部長がBさんのご主人の左腕を掴んで、帰ろうとするBさんのご主人を引き留めています。
ここは、隣の部屋で話を聞いていたとも言えないので、演技をするしかありません。

「どうされたんですか?」

「N事務長、Bさんを落ち着かせてください」

「Bさんどうされましたか?」

「私は落ち着いています。ただ帰ろうとしているだけじゃ!」

以下 ●●N事務長とE内科部長の共闘●● は51に続く


2010.5.26 水曜日

家族の形49

医療・介護のよもやま話 — admin @ 13:44:39

●●E内科部長激怒Ⅱ●● 

Bさんのご主人の勝手な言い分に、普段は温厚なE内科部長も少々キレ気味です。
もちろん、E内科部長ならば医師としての本分を忘れたりしませんから、暴力沙汰なんてことにはならないでしょう・・・
しかしながら、薄いパーテーション越しに伝わってくる普段とは明らかに違う語気の強さに、心配が募ります。

「E先生、見捨てるんじゃありません。妻と私の相談の結果です」

「Bさん。そういうのを勝手な解釈というんです」

「勝手な解釈?」

「ええ、そのとおりです」

「なんともまあ・・・E先生はもっと話が分る方だと思っていました」

「それは思い違いでしたね・・・残念でした」

「そのようですね」

「それで、相談は以上ですね?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「その相談には乗れないということで、ここでの話し合いは終了させて頂きます」

「終了?」

「ええ、病棟に戻って今後のことについて話し合いましょう」

「今後も何もありません。私は帰らせて頂きます」

「何を言っているんですか?」

「ですから、もう用はありません。帰らせて頂きます」

「いい加減にしてください。 奥さんはどうするんですか?」

「本人も家族も治療しなくてもいいと言っているんです。 何か問題ありますか?」

「問題大ありです。 そんなこと許されるはずがありません」

「そんなこととはどういうことですか?」

「Bさんあなたのしていることは、まだ生きている、もちろん不自由はあるけれど・・・奥さんを殺すって言っているのと同じです」

「誰が、妻を殺すんですか?」

「さあ、ご自分の胸に聞いてください」

「そこまで言うのなら、はっきり言ってください」

「Bさん、あなたが奥さんを殺そうがどうしようが、極論を言えば私には関係のないことです。しかし、知ってしまったからには黙っていられません」

「じゃあ、どうするんですか?」

「然るべき場所へ報告させて頂きます」

「然るべき場所?」

「ええ・・・」

「どこですか?」

「今の奥さんの状況と、Bさん、あなたがしようとしていることを食い止めることが出来ると思われる全ての行政、警察も含めて考えさせて頂きます」

「そんなことに、警察や行政機関が絡む、取りあうと思っているんですか?」

「どうでしょうか?」

「そんなことはあり得まえん」

「そこが、○×病院としての腕の見せ所です」

「何を言っているんですか?」

「兎に角、病棟に戻りましょう」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

以下 ●●N事務長再登場●● は50に続く


2010.5.25 火曜日

家族の形48

医療・介護のよもやま話 — admin @ 20:21:57

●●E内科部長激怒●● 

そういうことだったのです・・・
Bさんのご主人の相談というのは、奥さんを退院させてくれということでした。
まだ治りきっていない、というよりも治療を始めたばかりの奥さんを退院させると言います。
そして、それは奥さんと2人の同意のもとであるとも・・・
でも、そんなことを病院が、ましてや医師が、それも善良の権化のようなE内科部長が許すはずがありません。
どうか、E内科部長が切れないことを、壁を隔ててN事務長は祈ります。

「Bさん、気は確かですか?」

「E先生、何ですか? 何て仰いましたか?」

「いや、ですから、気は確かかと聞いているんです」

「馬鹿にしておられますか?」

「そう思われますか?」

「いくら医師とはいえ、妻の主治医とはいえ、目上の者に気は確かかなどと言うのは、どうでしょうか?」

「Bさんこそ、医師に向かって、奥さんの治療を止めて退院させろ、そして元の状態に戻したいなどと、よく言えるものですね・・・Bさんこそ私を馬鹿にしていませんか?」

「どうして、私がE先生を馬鹿にするんですか?」

「馬鹿にしていないとしても、言っておられることは、そう取られてもしょうがないことだと思っています」

「言っていることが分かりませんな」

「そうですか・・・それは残念です」

「それで、退院の件はどうなんですか?」

「まだ言いますか・・・」

「返事を聞かせてください」

「私が主治医として奥さんを診ている限りは、今の段階で退院なんて考えも出来ません。同意出来ません」

「患者とその家族が望んでも駄目なんですか?」

「出来ません」

「どういう権利でそんなことを言っているんですか?」

「医師としての倫理観です」

「医師の倫理観?」

「そのとおりです」

「こんなに滅茶苦茶な今の世の中に、倫理観なんて言葉が存在しているとは・・・笑えますね」

「医師、病院で勤務する医療従事者には倫理観という言葉が確かにそれぞれの心の中に実存しています。いや、こういう世の中だからこそ、以前にも増してその倫理観を大事にしなければいけないんです」

「ほう・・・」

「Bさんが奥さんの今後をどのように考えているかは想像出来ましたが、それを今の段階で容認することは出来ません」

「どうしてですか?」

「それは・・・」

「それは何ですか?」

「私には、病人を見捨てて、命を絶つことを黙って見過ごすことは出来ません!」

「見捨てる?」

「はい、そうです! まさにその言葉が当てはまります。 あなたは奥さんを見捨てるんです!」

以下 ●●E内科部長激怒Ⅱ●● は49に続く


2010.5.24 月曜日

家族の形47

医療・介護のよもやま話 — admin @ 18:45:32

●●Bさんの決断Ⅵ●● 

ついにBさんのご主人が、E内科部長に本題の相談をするようです。
そして、その相談についてはE内科部長と2人だけのこと、ここだけの話にしてくれと前置きをしています・・・

「どうぞ、相談とやらを聞かせてください」

「そうですね・・・」

「どうしましたか?」

「何度も言いますが、ここだけの話にしてください」

「まずは、聞かせてください」

「・・・分かりました・・・」

「どうぞ、お話ください」

「先程、妻と話をしたって言いましたね?」

「ええ、お聞きしました」

「妻には、病気になって動けない病人を看病、介護することは出来ないって言ったのですが・・・妻は・・・」

「奥さんは何て言ったんでしたか?」

「そうよねって言っていました」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「それに、自分も私に迷惑はかけたくないって言っていました」

「どういうことですか?」

「せっかく入院して・・・E先生にもいろいろとして貰ったんですが・・・」

「ええ・・・」

「妻は、あのまま助からなかった方が良かったって言っています」

「はあ?」

「そこでなんですが、ここで治療を中止して貰っていいですか?」

「どういうことですか?」

「ですから、今日、これから退院してもいいですか?」

「退院?」

「はい」

「退院してどうするんですか?」

「家に寝かせておきます」

「はあ? 寝かせておく?」

「ええ」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「いいですか?」

「一体、Bさんは何を言いたいのですか?」

「ですから、前の状況と同じ・・・入院した日に戻そうと思っているんです」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「駄目でしょうか?」

一体、Bさんのご主人はどんな考え方をしているのやら・・・
入院した時と同じ状況に奥さんを戻して、そのまま放置するつもりなのでしょうか?

以下 ●●E内科部長激怒●● は48に続く


2010.5.23 日曜日

家族の形46

医療・介護のよもやま話 — admin @ 17:05:42

●●Bさんの決断Ⅴ●●

Bさんのご主人はE内科部長に、奥さんが浮気に対して寛容なこと、泊まる家が他にもあることを告白しますが、そのことについては何ら恥ずべきことはなく、これから相談することに関わることだから頭に入れておいて欲しいといいます。
なんのことやらさっぱり分からないE内科部長ですが、ここは辛抱強くBさんのご主人の話を聞くことにします。
まさか、単なる浮気自慢ではないでしょう・・・

「それで・・・Bさんの相談というのは?」

「そうでしたね・・・そうでした・・・」

「何だか言い辛そうですね」

「そうですね・・・言い辛いというよりも、こんな相談してもいいのかなと思っています」

「なんでしょうか?」

「是非、ご協力して頂きたいとのですが・・・」

「協力ですか?」

「ええ、協力して貰うことになると思います」

「そうなんですか・・・それで、何を協力すればいいのでしょうか?」

「はい、先程、病室で妻にも言ったんです」

「ほう、ご夫婦でお話になられたんですね」

「ええ」

「お2人の意見ということで、お聞きすればいいですか?」

「まあ・・・そうかな・・・」

「何でしょうか?」

「いえね・・・私は妻の看病をすることは出来ません」

「はあ・・・どういうことですか?」

「ですから、私は病気になったアイツの面倒はみれないってことです」

「そんなことを奥さんに言ったのですか?」

「はい」

「・・・本当にですか?」

「ええ、本当です」

顔色一つ変えずに、Bさんのご主人はE内科部長にそう言い切ります。
隣の事務長室で声を潜めて2人の会話を聞いているN事務長も呆れ顔をしています。
面と向かってBさんのご主人から、報告なのか相談されているE内科部長は、もっとどうしていいか分かりません。
しかし、ここは顔色を変えず、私情で反論などせずに話を聞いておくのが正解でしょう・・・

「そうでしたか・・・それで私に何をしろと?何の相談ですか?」

「それなんですが・・・」

「はい、お聞きします」

「ここだけの話にしてください」

「これから聞くことは、ここだけの話にするんですね?」

「ええ、私とE先生だけの相談ということにしてください」

「相談されることにもよりますが・・・」

「そこは、宜しくお願いします」

何を宜しくお願いされるのか・・・N事務長も固唾をのんで耳を澄ましています。

以下 ●●Bさんの決断Ⅵ●● は47に続く


2010.5.22 土曜日

家族の形45

医療・介護のよもやま話 — admin @ 22:26:01

●●Bさんの決断Ⅳ●● 

病棟にある相談室が目に入り、ここは使えないのかと尋ねるBさんのご主人に対して、何とか言い訳をしてN事務長の待つ事務長室の隣に位置する応接室にBさんのご主人を誘導するE内科部長・・・
何故、事務長室の隣にある応接室に連れて行かれるのかなど、ましてやN事務長が壁に耳をつけて2人の会話を盗み聞きしていることなど、Bさんのご主人にとってはまさに寝耳に水、そんな病院側の思惑など知らぬが仏です。

「さあ、こちらです」

「はい・・・」

その頃、N事務長は準備万端整え、事務長室と応接室を区切るパーテーションに張り付いてE内科部長とBさんのご主人の応接室への入室を待っています。
すると応接室に人が入ってくる音が聞こえてきました。

「ここならば、他の人に話を聞かれることはないと思います」

「ああ、そのようですね」

「それで私への相談って何ですか?」

「E先生が主治医で、男性でもあるということで相談させて頂きます」

「男性? 男であることに何か関係があるんですか?」

「E先生は結婚なさっていらっしゃいますか?」

「ええ」

「お子さんは?」

「2人おります」

「そうですか・・・御存知かもしれませんが、私共には子供がおりません」

「そのようですね」

「つまり、今、本当の・・・法律上の家族は夫婦だけなんです」

「はい・・・」

「先生は、今までに浮気は?」

「はあ?」

「先生は、結婚してから奥さんと別の女性を好きになったことはありませんか?」

「いや・・・ありません・・・」

「ははは、あったとしても私に言えるわけがありませんでした」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「我が家はね、子供が出来なかったから・・・妻に問題があるのか、私に問題があるのか、今となっては分からないしどうでもいいことだけれど、そんな理由からか妻は私の浮気に関しては寛容でね」

「はい・・・」

「週の内、何日かは外泊しても何も言わないんだよ」

「そうですか・・・」

「今も、そんなことで妻が倒れていた家とは別に泊まるところはあるんだ」

「ほう・・・」

「まあそんなことは、E先生に何ら関係がないのですが・・・」

「そうですね・・・それらのことは聞かなかったことにしておきます」

「いや、これから話す相談に関係するから、大切なことですから覚えておいてください」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

以下 ●●Bさんの決断Ⅴ●● は46に続く 


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