禁煙138
●●禁煙治療診察4回目Ⅵ●●
担当美人医師は、N氏の薬 “チャンピックス” を飲むのを止めた理由が納得出来ないし、理解も出来ないようです・・・
「薬を飲むのを止めても、禁煙出来ているからいいけれど・・・」
「いいけれど・・・何ですか?」
「何故、そんなに無理をするのか・・・薬を止めたがる理由がよく分りません」
「何度も言いますが、早く普通の人になりたかったのです」
「普通の人か・・・」
「そう、見てくれだけじゃなくて、身体と頭の両方の中身も普通の人になりたいのです」
「今のNさんにとっては、タバコを吸うこと、そして禁煙補助薬 “チャンピックス” を飲むことが普通の人ではないということなのね」
「まあ、そういうことになりますかね」
「解らないでもないけれど・・・あんまりよく解らないというのが本音です」
「そうでしょうね・・・どうですか、他の人の診察に役立ちますか?」
「薬を途中で止めて禁煙を成功した人は、今までに1人居たけれど・・・あの患者さんもそうだったのかしら・・・」
「薬を飲むこと自体が嫌だったのだと思います。 薬のことを調べれば調べる程、知れば知る程、薬も早く止めたくなるのが普通だと思います」
「そうかな?」
「ええ、特に自分が普通以上に普通だと思っている人や、意識過剰な程一般常識を意識する人はそうだと思います」
「ふーん、そんなものかな・・・私はタバコを吸わないから解らないけれど・・・でも、喫煙者だったNさんがタバコを吸うことや、禁煙をする為の禁煙補助薬まで嫌いになるのはいいことかもしれませんね」
「そうですよね・・・」
「この8週間でニコチンやタバコや喫煙に対する考えが180度変わったことは素晴らしいです」
「確かにそうですよね・・・まるで喫煙者を毛嫌いしているようです。 人間をここまで変えるこの薬 “チャンピックス” は凄い薬です」
「そうよね」
「だからこそ・・・薬を飲みたくなかったのです」
「なんだか解ったような気もします。 でも、ような気がする程度です」
「薬を途中で止めた2人目の患者の戯言と聞き流して頂いて結構です」
「いえ、貴重な意見として今後の禁煙治療に役立たせて頂きます」
「そうして頂ければ嬉しい限りです」
「ところで・・・今日は薬・・・どうします?」
「ですよね、先生のところは薬出さなければ儲けが減りますよね」
「ここのクリニックの売上は別にして・・・どうしようか?」
持参した飲んでいない “チャンピックス” を担当美人医師に見せながら、
「まだ、これだけ残っていますし・・・気持ちとしては要りません」
「そうよね・・・ここ3週間以上、薬を飲まずに禁煙出来ているのに投薬というのも変ですよね」
「そう思います」
「じゃあ、投薬はしないことにしましょう」
「はい、処方されても家の常備薬にもなりません」
「そうよね・・・」
「転売も出来そうにないですし」
「駄目ですよ、そんなことしたら」
「勿論です。 この飲んでいない “チャンピックス” は自分への戒めの為に目に付くところに飾っておきます」
「そうお願いします」
以下 ●●禁煙治療診察4回目Ⅶ●● は139に続く