真実は闇の中 19
●●H先生の見解Ⅱ●●
外来待合室の壁に掛かっている時計は、お昼の12:00はとっくに回って、もう少しで13:00になろうとしています。
整形外科外来の診察室前に移動したN事務長と看護部長はH先生の手が空くのを今か今かと待ちわびています。
とその時、診察室のドアを開けて、2人の前にカルテを持った外来師長が姿を現しました。
「師長、診察終了しましたか?」
「ええあと少しで何とか終了しそうです」
「じゃあ、H先生に外でN事務長と私が待っていると伝えてくれますか?」
「分かりました」
「お願いね」
看護部長とそんな会話を交わした外来師長は、一旦診察室に戻ってからまた診察室を出て来ました。
「あと少しで処置が終わりそうですから、終わったらH先生が呼びに来ると思います」
「分かったわ」
そう看護部長に伝えた外来師長はカルテを抱えて小走りに事務室に向かいます。
「それにしても今日の整形外科外来は随分延長しましたね」
「IさんたらどれだけH先生を独占していたのかしら?」
「私の予想では軽く30分は独占していたと思います」
「じゃあ、前後の時間も合わせればそれ以上かもしれませんね・・・」
N事務長と看護部長がそんな会話をしていると、整形外科外来診察室のドアが開いてH先生が顔を出しました。
「診察終わりましたからどうぞ」
「失礼します」 「お疲れ様です」
N事務長と看護部長が診察室の中に入り、N事務長が患者用の丸椅子、看護部長は患者付添人用の補助椅子に座ったのを確認したH先生が話始めます。
「Iさんはどうされましたか?」
「今日のところはお帰りになりました」
「そうですか・・・それでIさんの興奮は収まりましたか?」
「ええ、看護部長が一緒に居てくれたおかげでIさんもそんなに興奮することもなくお話はして頂けました」
「それならば良かったです」
「Iさんがこの診察室に居た時にH先生に対してはどうだったのですか?」
「Iさんから聞いたと思うけれど・・・治りかけていた腕が折れてるって言った直後は凄かったよ」
「そうですか・・・」
「やっぱりって言って・・・これはこの病院のリハビリ室の職員がしたことだ! 傷害事件だ! ってまくしたてていましたよ」
「なるほどね・・・」
「まあ実際に治りかけていた腕の同じ場所が再び折れてしまったことは間違いないですから、Iさんの気持ちも分からないでもありません」
「・・・・・・・・・・」 「・・・・・」
「もちろん誰がそうしたのか言及出来ませんし、なかなか治りが悪かった骨折でしたから尚更でしょう」
「治りが悪いというのは年齢的なこともあるんですか?」
「それもありますね」
「・・・・・・・・・・」
以下 ●●H先生の見解Ⅲ●● は20に続く