大阪・兵庫・神戸・京都、関西で、医師・看護師・薬剤師など転職・求職を希望される医療従事者の方へ病院・医院等医療機関の求人をご紹介

Home  »  医療・介護のよもやま話

医療・介護のよもやま話

関西の医療転職・求人サイト メディコプロ プログ

2010.12.31 金曜日

真実は闇の中 19

医療・介護のよもやま話 — admin @ 12:35:07

●●H先生の見解Ⅱ●● 

外来待合室の壁に掛かっている時計は、お昼の12:00はとっくに回って、もう少しで13:00になろうとしています。
整形外科外来の診察室前に移動したN事務長と看護部長はH先生の手が空くのを今か今かと待ちわびています。
とその時、診察室のドアを開けて、2人の前にカルテを持った外来師長が姿を現しました。

「師長、診察終了しましたか?」

「ええあと少しで何とか終了しそうです」

「じゃあ、H先生に外でN事務長と私が待っていると伝えてくれますか?」

「分かりました」

「お願いね」

看護部長とそんな会話を交わした外来師長は、一旦診察室に戻ってからまた診察室を出て来ました。

「あと少しで処置が終わりそうですから、終わったらH先生が呼びに来ると思います」

「分かったわ」

そう看護部長に伝えた外来師長はカルテを抱えて小走りに事務室に向かいます。

「それにしても今日の整形外科外来は随分延長しましたね」

「IさんたらどれだけH先生を独占していたのかしら?」

「私の予想では軽く30分は独占していたと思います」

「じゃあ、前後の時間も合わせればそれ以上かもしれませんね・・・」

N事務長と看護部長がそんな会話をしていると、整形外科外来診察室のドアが開いてH先生が顔を出しました。

「診察終わりましたからどうぞ」

「失礼します」 「お疲れ様です」

N事務長と看護部長が診察室の中に入り、N事務長が患者用の丸椅子、看護部長は患者付添人用の補助椅子に座ったのを確認したH先生が話始めます。

「Iさんはどうされましたか?」

「今日のところはお帰りになりました」

「そうですか・・・それでIさんの興奮は収まりましたか?」

「ええ、看護部長が一緒に居てくれたおかげでIさんもそんなに興奮することもなくお話はして頂けました」

「それならば良かったです」

「Iさんがこの診察室に居た時にH先生に対してはどうだったのですか?」

「Iさんから聞いたと思うけれど・・・治りかけていた腕が折れてるって言った直後は凄かったよ」

「そうですか・・・」

「やっぱりって言って・・・これはこの病院のリハビリ室の職員がしたことだ! 傷害事件だ! ってまくしたてていましたよ」

「なるほどね・・・」

「まあ実際に治りかけていた腕の同じ場所が再び折れてしまったことは間違いないですから、Iさんの気持ちも分からないでもありません」

「・・・・・・・・・・」 「・・・・・」

「もちろん誰がそうしたのか言及出来ませんし、なかなか治りが悪かった骨折でしたから尚更でしょう」

「治りが悪いというのは年齢的なこともあるんですか?」

「それもありますね」

「・・・・・・・・・・」

以下 ●●H先生の見解Ⅲ●● は20に続く


2010.12.30 木曜日

真実は闇の中 18

医療・介護のよもやま話 — admin @ 12:43:46

●●H先生の見解●● 

Iさんがもう少し我をはって、あーでもないこーでもないと要求を重ねたり、あれもこれもと不平不満や罵詈雑言を並べたならば・・・
それだけIさんの言葉の重みや真実味が無くなってしまうはずだったのだけれど・・・
1週間後に院内調査の結果を報告することを約束すると、今日のところはあっさりと引きさがり?Iさんは納得して家路についたのでした。

Iさんを病院正面玄関まで見送るとN事務長と看護部長は、すっかり患者さんの数が減った外来待合室の長椅子に腰掛けて整形外科外来が終了するのを待ちます。
整形外科外来の前だけは、まだ数名の患者さんが診察を待っていますし、担当看護師や診察の進行の助けに来たのか外来師長が忙しく動き回る姿が遠目にも確認出来ます。

「看護部長はIさんの話をどう思われますか?」

「話のどの部分?」

「リハビリ室で “ペキッ” の部分です」

「無いと願いたいけれど・・・」

「けれどなんですか?」

「あるかもしれないし、あってもおかしくないですね」

「そんなものですか?」

「普通の職員、理学療法士ならばそんなことは無いでしょうが・・・」

「ど、どういうことですか?」

「Iさんの相手はGさんでしたよね?」

「ええ、そうみたいです」

「Gさんは、以前から自分の立場や職責を著しく逸脱したことをするということで看護部でも問題にしていたんです」

「えー、どういうことですか? そんな話は初耳ですよ」

「そうね・・・現段階では直接患者さんに迷惑が掛かったとか、患者さんから重大な分類に属するクレームが来たということはないから・・・」

「患者さんに関係してないから? そんな理由で私の耳に入らなかったのですか?」

「まあそうかな・・・地獄耳のN事務長でもリハビリ室のGさんのことまでは知らなかったということですねえ」

「そうですか・・・少し変わったところがあるとは責任者から聞いていましたけれど・・・」

「それで実はその変わったところというのがチームで医療をしていくのに問題があるのよ」

「なるほどな・・・でも、責任者が言う変わったところというのはボケが下手だとか、ツッコミが出来ないとか、笑いのツボが違うということだと訳の分からないフォローをしていましたけれどね・・・」

「でも、それって大事な部分で、大事なことなのよ・・・」

「そうですか?」

「ええ、今後は面接に時点で笑いのツボが同じことだとか、ボケやツッコミが出来ることなんかもしっかり確認して貰いたいものですわ」

「看護部長、そんな面接は聞いたことがありませんし、短時間でそんなことまで見極めることは不可能です」

「看護部の面接は私も同席しますから、私も入職者に対しての責任を取りますが、他部署に関しては私の意見は入っていませんからねえ」

「はいはい、それでは今後の課題ということで考えておきます」

とそんなことを話していると、整形外科外来の前の待合室で待つ患者さんの姿がなくなっています。
最後の患者さんも診察室に入ったようです。

「看護部長、診察終わりそうですからあちらに行きませんか?」

「そうね、診察が終わると同時にH先生を捕まえないといけませんわ」

「H先生もお腹が空いているでしょうが、ここはお時間をとって頂きましょう」

「同感です」

以下 ●●H先生の見解Ⅱ●● は19に続く


2010.12.29 水曜日

真実は闇の中 17

医療・介護のよもやま話 — admin @ 11:03:32

●●Iさんの要求Ⅳ●● 

 Iさんに私は被害者、病院側が加害者とはっきり言い切られました。
果たしてそれが事実なのかは今後の調査ではっきりするでしょうが、今日の問題はIさんをどうするかです。
今の状態では、このまま家に帰るとは思えません・・・

「取りあえず・・・お話は伺いましたから、後日改めて院内調査の報告をさせて頂きます」

「後日ってのはいつのこと?」

「何時とはっきりは言えませんが・・・」

「そんなのは駄目よ、ちゃんと何時までに返事をしますと言うべきよ」

「そうですか・・・」
Iさんの言うとおりです。
敢えて日時を決めなかったのは、N事務長の常套手段。
このままずるずると引きずって・・・
なんだかよく分からないうちにウヤムヤに・・・
となれば、Iさんも自分の発言に自信がなかった証拠となるはずでしたが・・・
返事をする日時を決めろと即答するところをみると、自分の主張に相当な自信があるようです。
ここは肝を据えてIさんと向き合うことに、Iさんの対応をすることにします。

「事務長さん何時までに返事をして貰えるの?」

「そうですね・・・次回の診察は何時の予定ですか?」

「H先生からは、何もなければ2週間後にもう一度レントゲンを撮って確認しましょうと言われました」

「そうですか・・・じゃあ、その2週間後にお返事させていただきますけれど・・・それでいいですか?」

「そんなに時間が掛かるの?」

「いえ・・・時間の問題ではなくて、Iさんに何度も病院に足を運んで頂くのも申し訳ないと思いまして・・・」

「別にいいのよそんなこと。 コレと言って仕事をしているわけでもないし、今の私にとって一番しなければいけないことはこの腕を治すことだから・・・」

「はあ、それで2週間後でいいですか?」

「もう少し早くならない?」

「いいですけれど・・・」

「じゃあ、1週間後にお願いするわ」

「わ、分かりました」

「来週の水曜日ね」

「は、はい」

「時間は何時?」

「何時でも結構です」

「じゃあ・・・11時に来させて貰うわ」

「はい、了解しました」

「それまでに院内での調査をしっかりして、納得のいく説明をお願いします」

「そうさせていただきます」

「その時には、病院としてどうするのかも教えて下さいね」

「病院としてですか?」

「当たり前じゃないの」

「それも含めてお時間を頂戴します」

「頼んだわよ!」

「はい・・・」

これで今日のところはIさんにお帰り頂き、早速H先生話を聞いてから・・・当事者であるかもしれないリハビリ室のGさんの事情聴取とすることにします。

以下 ●●H先生の見解●● は18に続く


2010.12.28 火曜日

真実は闇の中 16

●●Iさんの要求Ⅲ●● 

どうやら事の真偽は別にして、Iさんの問題にはリハビリ室の理学療法士のGさんが絡んでいることが分かりました。
さて問題はここからです。
まずはGさんがIさんの話をしたことそのままのことをIさんにして、Iさんに言ったのかということ。
いや、Iさんが話したことは、尾ひれ羽ひれがついており、概ね事実ではない・・・
いやいや、Iさんの話は全くのデマ、作り話である・・・
いろんなケースが考えられます。

しかしながら、火の無いところに煙は立ちません。
今日は、IさんからIさんの思っていること、感じていること、考えていることを全部聞きだすことが必要でしょう。
リハビリ室の職員、Gさんには改めてこの件について申し開きなり、報告を求めればいいことです。

「Iさん、入院中に私のことを看護部長と話したことについては・・・」

「ついては何ですか?」

「今日の段階では不問とします」

「不問としますって、言葉の使い方が可笑しくありませんか?」

「た、確かに・・・そうかもしれません・・・今日は聞かないでおきます」

「いや、お話しましょうか?」

「いえ結構です」

「そんなこと言わないで、ねえ看護部長さん?」

「Iさん、それ以上N事務長を苛めないで頂けます? それでなくてもこれから頭の痛い問題を解決しなければいけないんですから」

「頭の痛い問題って私の問題?」

「ええそうよ」

「何も痛くないと思うわ・・・この病院の職員が私の治りかけていた腕の骨を悪い状態に戻した、悪化させたという事実だけです」

「・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・」

「悪化させたというよりも、腕の骨を再び折った、もっと酷い言い方をすれば治療行為の中で過失があった、私は被害者でリハビリ室の職員のGが加害者ということです」

「まあまあIさん、そう決めつけずにここは時間を頂けませんか?」

「どういうこと?」

「確かにIさんの言うとおり、Iさんの治りかけていた腕が悪くなったということは事実のようですが、その原因をGさんと決めつけるのはもう少し院内で調査してからにして頂けませんか?」

「やっぱり事務長さんは私のことを信用していないのね」

「信用するしないではなくて、事故があったと想定しても院内で調査をしなければいけませんし、院内で調査をさせて頂きたいのです」

「そうなの?」

「ええ、折角Iさんが我々にお話をして頂けたのですから、このことを今後の病院運営に生かしていきたいのです。お願い出来ませんか?」

「まあ、そんなにお願いされるのであれば・・・しょうがないかなあ・・・」

「どうぞよろしくお願いします」

「まあいいけれど・・・それから私の治療費とか慰謝料とかはどうなるの?」

「それらについても、今後の院内調査の結果をみてから考えたいと思います」

「いい? 言っておきますが私は被害者で事務長さんは加害者の上司であるということをお忘れなく」

「・・・・・・・・・・」 「・・・・・」

被害者、加害者か・・・
Iさんの話したことが事実であれば、確かにそういうことになります。
そうなれば・・・
確かにお金・・・
今後の治療費や慰謝料ということが問題になることは致し方ありません。

以下 ●●Iさんの要求Ⅳ●● は17に続く


2010.12.27 月曜日

真実は闇の中 15

医療・介護のよもやま話 — admin @ 11:43:09

●●Iさんの要求Ⅱ●● 

Iさんから、N事務長は信用できない人とレッテルを張られてしまった為に会話の進行は看護部長がしてくれています。
その為なのか・・・他人事のようにIさんの話を聞いているN事務長です。

しかし、他人事のように話を聞いているにしても、話の内容が本当だとすれば病院内の話としてはゾッとする部類の話です。
形はどうであれ、理由が何であれ病院の職員が患者さんの身体を傷つけるなど言語道断。
ましてや・・・もしそれが、偶然が重なって起こり、職員の意図するところでなかったとしても後の処理が悪すぎます。
その場しのぎのいい訳や責任逃れの行動であったならば断罪に値します。

Iさんの話を聞いてH先生は黙ってしまったようですが・・・
N事務長と看護部長も言葉を失ってしまいました。

看護部長、どうぞ話を繋げて、続けさせてください・・・
という意味を込めて看護部長にアイコンタクト!

「Iさん、H先生との話はそれで終わりになったのかしら?」

「いいえ」

「もしよかったら続きを教えてくださらない?」

「そうですね・・・」

「H先生は何を話されましたか?」

「H先生は、その時のリハビリの担当が誰だったかとお聞きになられました」

「担当の名前は分かってるのかしら?」

「ええ、今日も診察の前に確認してきました」

「誰かしら?」

「リハビリ室の前に貼ってあったスタッフ紹介の顔写真から判断すると・・・」

「すると?」

「理学療法士のGさんです」

「Gですか・・・」 「そうですか・・・」

「2人ともどうされたのですか?」

「いえ別に・・・」 「どうもしませんが・・・」

看護部長、N事務長ともに口ごもったのには理由があります。
理学療法士のGさん・・・
年齢35歳。
仕事に対してやる気はあるのですが、空回り気味・・・
患者さんを思いやる気持ちは強いのですが、その気持ちが患者さんを励ますのではなく叱咤してしまい患者さんからクレームが多いのも事実です。
叱咤激励が叱咤だけになってしまうということです。

「他の患者さんに聞いたのだけれど、あのリハビリの先生は評判よくないわよね」

「・・・・・・・・・・」 「評判ですか?」

「あの先生に比べれば事務長さんの方がよっぽど評判いいわよ」

「・・・・・・・・・・」
そういう比べ方しないで欲しいけれど・・・

「あら失礼だったかしら・・・事務長さんとリハビリの先生を比べたらいけないわね」

「・・・・・・・・・・」 「ホホホ、Iさん駄目よ。 そんなこと言ったらN事務長の立つ瀬がありませんわ」

「だって看護部長さんだって私が入院中に事務長さんのこと・・・」

「Iさんそれ以上は内緒!」

「そうだったわね」

何でしょうかこの2人・・・どうやらIさんの入院中から看護部長とIさんはいろいろと話をしていたみたいです。
まあ、コミュニケーションが取れていることはヨシとしておきましょう。

以下 ●●Iさんの要求Ⅲ●● は16に続く


2010.12.26 日曜日

真実は闇の中 14

医療・介護のよもやま話 — admin @ 12:51:17

●●Iさんの要求●● 

1週間前に診察を受けた後のリハビリ中に “ペキッ” という音とともに、以前ボルト固定による手術をした右上腕に痛みが走ったというIさんです。
その時はリハビリの先生の 『大丈夫』 という言葉を信用して帰宅したものの・・・
この1週間は痛みが収まるどころか慢性的に痛みが続き、上腕の固定用サポーター無しでは生活もままならないということです。
どうしたものか・・・
それよりも、このIさんの話の終着点は一体何処なのでしょうか?

「それで今日、H先生にそのことをお話されたのですね」

「ええ、診察をして貰ったあとにしました」

「それで診察の結果はどうでしたか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「どうされましたか?」

「だからさっき言ったじゃないの!」

「と言うことは・・・やっぱり折れていたのですか?」

「・・・やっぱり?・・・思っていたとおり・・・この事務長さんは私の言うことを信用していないわ」

「そ、そんなことは・・・」
こんな時は看護部長に頼りましょう。看護部長にアイコンタクト!

「Iさん、そんなことを言わないでお話を続けてくださらない?」

「看護部長がそう言うのなら・・・
でも、やっぱりこの事務長さんは私のことを疑っているのよね・・・
私を見る目がクレーマーや文句を言う人を見る目をしているもの!」

やはり分かる人には分かってしまうものです。
ハッキリ言えばIさんの言うことを100%信用なんてしていません。
いいところ50%、今現在では40%が上限かもしれません。
でも、それはしょうがないでしょ・・・
患者さんの言うことを全て100%信じていたら、とっくの間に病院は潰れていると思います。

「そんな目はしていないつもりですけれど・・・」

「いやそんな目、疑いの眼差しで私を見ています」

「そうですか?」

「まあ、それを直せと言っても直らないでしょうから無視することにします」

「すみません。そうお願いします」
看護部長助けてください・・・フォローお願いします!

「Iさん、診察を受けたらどうだったの?」

「レントゲンを撮ってもらって、それを見ながらH先生とお話したのよ」

「H先生は折れてるって言ってた?」

「折れてるというよりは、くっつきかけていた骨が折れた時のような状態に戻ってしまったって言ってました」

「そうなんだ・・・」

「手術後の状態だって言っていました」

「H先生はレントゲン、写真を見てどう言ったのかしら?」

「何か腕に負担をかけたり、何かの拍子に腕に痛みが走ったりしませんでしたか? って聞いてきました」

「それでさっきの話をしたのね」

「ええそうです。 先週、診察の後のリハビリ室でのことを話しました」

「そしたら・・・H先生は何て言った?」

「どうして直ぐに診察に戻ってこなかったのと聞かれました」

「Iさんは何て答えたの?」

「リハビリの先生が 『大丈夫』 て言ったからですと答えました」

「H先生はそのIさんの答えにはどう返事をされましたか?」

「そうですか・・・と言った後は黙ってしまわれました」

「・・・・・・・・・・」 「・・・・・」

以下 ●●Iさんの要求Ⅱ●● は15に続く


2010.12.25 土曜日

真実は闇の中 13

医療・介護のよもやま話 — admin @ 15:13:18

●●IさんとN事務長Ⅹ●● 

いつものようにIさんとの距離を縮めて、Iさんに味方だと思って貰う予定でしたが・・・
どうも話の流れでIさんは看護部長を味方、N事務長は敵と認識してしまったようです。
ここは敢えて反論も訂正も試みず、話の流れの中でIさんとの関係を少しずつ微調整していくことにします。

「看護部長、この事務長さんは本当に信用出来るのかしら」

「大丈夫ですよ。頭も切れるし、正義感も強いです」

「そうなの・・・でもそれって今の私に関係あるかしら?」

「頭が切れないと判断が遅いし、正義感が強くなければ間違ったことを平気で言ったりするでしょ?」

「確かにそうですけれど・・・今の私には、私の話を疑わずに聞いてくれる人が必要なの」

「そうね、それも大丈夫。 N事務長は先入観を持たずにIさんの話をしっかり聞いてくれます」

「本当に大丈夫かなあ」

「大丈夫、大丈夫。 さあH先生に話をした続きを聞かせてください」

「そうしましょうか?」

「ええ、お願いします」

「分かりました・・・」

「N事務長も今までのことは気になさらずにIさんのお話聞いてくださいね」

「はい・・・」

今日は何だか看護部長が上手に患者さんを誘導しています。
こういう時は無理に流れに背かないのが定石です。

「えっとIさん、1週間前に腕に違和感を感じたのよね?」

「ええ、そうです。 リハビリ中にです」

「どんな感じだったの?」

「少しだけ腕に負荷をかけますってリハビリの先生が言うから・・・」

「どうしたの?」

「大丈夫かなって思っていたら、先生が力を入れた時に “ペキッ” って音がしたの」

「その時、腕は痛かったの?」

「ええ、少し痛みが走ったからリハビリの先生に 『痛い』 って言ったら・・・そうしたら、リハビリの先生が慌てて、『大丈夫』って言ってきたの」

「それで?」

「大丈夫じゃない。 腕が痛いと言ったら、じゃあ今日はこれ以上リハビリするのを止めましょうって・・・オカシイじゃない・・・それで、先生がさっき力を入れた時に音聞こえませんでした?って聞いたら・・・」

「聞いたら?」

「え、な、何の音? さ、さあ・・・音? したかな?って明らかに動揺しているの」

「そうなの?」

「間違いないわ・・・あれは私の身体の中からした “ペキッ” て音が聞こえていたに違いない」

「そうか・・・それでどうしたの?」

「リハビリの先生に私の腕の骨がまた折れたんじゃない? って聞いたの」

「聞いたんだ・・・そしたら」

「いや、大丈夫だと思いますよ・・・て言うからリハビリの先生を信用して・・・それで、その日は少し腕が痛かったけれど帰ったの」

「なるほどね。それでその後はどうしたの?」

「1週間前から今日まで明らかに腕が痛いの・・・我慢出来ないことはないけれど・・・サポーターをしっかりしていないと夜も寝られないし・・・」

「それで今日診察を受けたということね」

「そういうことです」

「なるほどね・・・」

「事務長さんも分かって頂けたかしら」

「え、ええ・・・話の流れはご理解させて頂きました」

「良かった・・・」

以下 ●●Iさんの要求●● は14に続く


2010.12.24 金曜日

真実は闇の中 12

医療・介護のよもやま話 — admin @ 14:29:17

●●IさんとN事務長Ⅸ●● 

突然のIさんの告白、いや、まさに激白と呼べるかもしれない言葉に驚きを隠せないN事務長です。
その2人の会話に、ごく自然に割って入るのが看護部長。
何事もなかったようにすんなりと・・・
何も聞いていなかったように自然に話に入ってきて、2人の会話の潤滑油の役目を果たしてくれます。

こんな時に思います。
看護部長は仕事中に声を出さなくても、言葉を発しなくても・・・その存在感だけで給料を貰っていると感じることもしばしばですが・・・
話をする時はする。
適切な言葉を選んで・・・
相手の心の中にすーっと自然に入って行く。
あたかも自分は、アナタの味方ですよと言わんばかりに・・・
そんな看護部長の “私はアナタの味方ですオーラ” には少々閉口しますが・・・
でも、それでIさんの気持ちが落ち着いてくれれば有り難いことです。

「大丈夫よIさん。 私だけじゃなくてこの病院の職員全員がIさんの回復を願ってますわ」

「そうかしら?」

「ええ、勿論です」

「H先生や看護部長さんはそうだとしても・・・」

「どうされたの?」

「あの私に嫌な思いをさせたリハビリの職員やここにいる事務長さんも? そう思っていてくれるのかしら?」

「勿論です。 そうよねN事務長?」

「え、ええ、も、勿論です」
なんで、こんな時に限って口ごもってしまうのか・・・情けない。

「そうならばいいけれど・・・」
と言いながら、Iさんは疑いの目をN事務長に向けています。

「Iさん心配しないで。 N事務長は見た目はクールだけれど、見た目の逆で心は・・・暖かい心の持ち主ですから・・・」

看護部長、そんなことをわざわざ言ったら・・・本当は見た目そのまま、心も冷たい人だと言っているようなものです。

「そうかしら・・・昔から、人には表と裏があるけれど・・・人の見た目はその人の心を表現するものだと言うのよね・・・」

なんだかここに来てすっかりIさんから信用を無くしてしまったようです。
あんまりにも看護部長が、私はIさんの味方オーラを出し過ぎるからその反動でN事務長は敵となってしまったような感じです。
ここは起死回生のホームランとまではいきませんが、タイムリーヒットを狙ってみることにします。

「ハハハ、Iさん大丈夫ですし、勘違いなさらないでください。 事務長って職業柄、普段からクールさを保つように努力していますけれど、患者さんからも事務長は冷たいとかよく言われているようですけれど・・・それはしょうがないと思っていますし、Iさんもそう思ってください。 患者さんの中にはIさんみたいな人ばかりじゃなくて、訳の分からない屁理屈をこねたり、意味の分からない要求をしてくる人がいるから、ついこんな冷たい顔になってしまうのです」

と相変わらず意味の分からない理屈をこね回したような言葉でIさんを翻弄しようとするN事務長に・・・

「そうなの? そんな患者さんがいるの?」

「ええ、信じられないようなことを平気で言う方もいらっしゃいます」

「よくTVで放送している “モンスターペイシェント” とか言う・・・」

「そうですね、モンスターかどうかは別にして、そんな患者さまがいることも事実です」

「・・・ま、まさか・・・事務長さんは、私のことを “モンスター” だなんて思っていらっしゃらない?」

しまった・・・ヤブヘビだったか!
「ん、い、いえ、そ、そんなことはありません」

「事務長さん、何だか・・・さっきから口ごもったり、言い淀んだりして・・・どうも信用出来ないわ」

「・・・・・・・・・・・・・・」
看護部長!
こんな時にこそ合いの手!
フォロー!
は、早く!

「Iさん、そんなに事務長を苛めないでください。 N事務長にとってIさんはお母さんと同年代で、そんなIさんに話をするのには気を使っていて・・・そう、だから緊張しているのよ」

「本当に?」

「そうなんですよ、N事務長はこう見えて、私とか看護部の師長達、要するに自分よりも年上の女性には何だか冷たい態度を取るのはいつものことだから」

「あら、と言うことは・・・事務長さんは看護部長さんにもいつもこんな態度なのかしら?」

「ええ、いつもこんな調子ですわ。 だからIさんも事務長さんを疑ったりしないでね・・・こう見えても結構頼りになるから」

結構頼りになるか・・・それにしても看護部長は、Iさんを利用してN事務長を苛めているとしか思えない・・・

以下 ●●IさんとN事務長Ⅹ●● は13に続く


2010.12.23 木曜日

真実は闇の中 11

医療・介護のよもやま話 — admin @ 14:28:19

●●IさんとN事務長Ⅷ●● 

N事務長は、あくまで中立的な立場でIさんの話を聞かせて頂くことにします・・・と、N事務長の立場を考えてみると・・・訳の分からない?普通に考えれば意味が分からない発言をしています。
Iさんがこれからする話は、間違いなく病院に関することであり、上手くいけば職員への不満程度で終わるでしょうが、下手をすれば医療に関するクレームかもしれません。
それなのに、その病院に関する話を病院の事務長という立場にいながら第三者的立場、中立的な立場で話を聞くというのですから開いた口が塞がりません。
N事務長は、どう考えても第三者的立場や、中立的な立場でIさんの話を聞ける立場ではありませんし、明らかに病院の役職者であって、間違いなく当事者であるのにこんな言葉を吐ける、その厚顔に改めて驚きを・・・失笑を隠せません。

「それでお話、相談というのは何ですか?」

「相談というよりも、どうしたらいいのか? 病院としてはどうしてくれるのか? ということをお聞きしたいの」

「どうしたらいいか? 病院はどうしてくれるか? ですか?」

「ええそうよ」

「それは、1週間前から手術後の経過が最悪ということに関係しているのですか?」

「勿論です」

「どういうことか詳しくお聞かせ頂けませんか」

「ええそうね、そうしましょう」

「お願いします」

「退院後も、私はこのとおり年だからなかなか骨のつきが悪いということで月に1回はレントゲンを撮って、骨の回復具合を確認して、この固定の為のサポーターの装着具合や日々の生活の相談をして、その診察の後には運動も必要だということだったのでリハビリの仕方を教わりにリハビリ室にも行っていたのよ」

「そうでしたか・・・」

「その前の診察で、まだ完全じゃないけれど、なんとかサポーター無しで生活出来るようになるまであと少し頑張ってくださいってH先生からも言われて、少し嬉しくなっていたのに・・・」

「どうしたんですか?」

「リハビリ室で・・・」

「リハビリ室で何かありましたか?」

「私の腕が・・・」

「腕がどうかしましたか?」

「また折れました」

「えっ?」

「ですから、折角治りかけていた腕が・・・私の腕が折れたのです」

「・・・・・・・・・・・・・・」

突然のIさんの告白にN事務長もびっくりしてしまいます。
ことの真偽のほどは今の段階では定かではありませんが、あまりにも普通に話を進めるIさんに対して、多少なりとも疑念の気持ちが湧いてきます。
ことの真偽はさておき、これからどうしようかと看護部長を見ると、Iさんの顔をしっかり見ながらウンウンと頷きながら話を聞いています。

「Iさん、今、まだ腕は痛いの?」
看護部長の優しい言葉、ナイスフォローのさく裂です!

「少し痛いです。 でもこのサポーターをしていれば大丈夫です」

「そうね、そうよね、痛いわよね」

「え、ええ・・・」

「でも、また頑張れば回復するわよ」

「そう思いたいし・・・この半年を無駄にしたくないわ」

「大丈夫、無駄にはならないから」

「そうかしら・・・でも・・・看護部長さんはいつも優しいのね・・・」

以下 ●●IさんとN事務長Ⅸ●● は12に続く


2010.12.22 水曜日

真実は闇の中 10

医療・介護のよもやま話 — admin @ 13:09:44

●●IさんとN事務長Ⅶ●● 

術後の経過が1週間前から最悪だというIさんですが・・・一体どうしたというのでしょうか?

「今、最悪って言われましたけれど・・・どうしたのですか?」

「1週間前のことを思い出すと悔しくて・・・」

「悔しい???」

「あーイライラする」

ホラ言わないことじゃない・・・室温を上げたから頭に血が昇り始めたじゃないですか・・・Iさんを落ち着かせなければいけません。
「Iさん、落ち着いてください。イライラするのは身体に毒ですよ」

「身体に毒だって? 看護部長さん聞いた? この事務長さんは面白いことを言うわ・・・身体に毒なんじゃなくて、もう既に毒を飲まされた気分なのに」

「???」

「N事務長ちょっといいかしら?」
と今まで黙って2人の話を聞いていた看護部長が満を持してという感じで話に割って入ります。

「ええ・・・いいですけれど・・・なんですか看護部長」

「今Iさんは精神的にも肉体的にも辛い時期ですから、お言葉にはお気をつけください」

看護部長がこう言うからには何か理由があるはずです。
ここは大人しく看護部長に従う振りをしておくのがベストでしょう。
「はい、分かりました・・・Iさん出過ぎた発言、生意気なことを言いまして申し訳ありませんでした」

「あら事務長さん、謝らなくても・・・そんなつもりで言ったわけじゃありませんわ」

「いえ、Iさんのお気持ちも考えずにイライラするなとか言ったことについては謝罪致します」

「謝罪だなんて・・・こちらこそイライラしてゴメンナサイ」

ほら、やっぱりイライラしていたんだ・・・
「とんでもありません。以後、言葉に気を付けてお話させて頂きます」

「あらそんなこといいのよ、普通にお話して貰えれば・・・その方が相談もしやすいし」

相談ですか・・・しかし、その相談の内容が問題です・・・でも看護部長はそれとなく内容を知っている様子です。
「相談でしたよね?」

「ええ、もうどうしたらいいか分からなくて・・・」

「Iさん、どうしたらいいか分からないことのお手伝いをさせて頂きます」

「本当に?」

「ええ」

一旦黙っていた看護部長がまた口を開きます。
「お手伝い出来るかどうかも含めて、N事務長にいい知恵を出してもらいましょうね、Iさん」

と言うことは・・・お手伝い出来ないことも頭に入れておけという忠告ですね・・・それじゃあ、看護部長の忠告を受け止めて言葉を足しておくとします。
「Iさん。 私の力ではお手伝い出来る範囲も限られますが出来ることはさせて頂きます」

「そんなことないわ、事務長さんと言ったら病院では院長先生の次に偉い人なんでしょ?」

「とんでもありません。 事務長というのは事務部門の責任者というだけで、病院の中での発言権などありません」

「ご謙遜を・・・だってH先生だって事務長さんに話をしてみてくださいって言っていましたわ」

「それは、多分第三者的に話を聞いて貰ってくださいということだと思います」
本当は診察時間中にする話じゃない、外来の進行を妨げるなということなんだけどな・・・

「じゃあ、第三者的立場で私の話を聞いて貰って、中立的な判断をして頂けるということですね」

「第三者的な立場で判断出来るかどうか、その判断が正しいかどうかも含めて断言は出来ませんが、中立的な立場でお話を聞かせて頂くことは断言致します」

「???・・・あ、ああ・・・そ、そう・・・中立的な立場で聞いて頂けるならまあいいか・・・」

Iさんのようにそこそこ頭が良くて、自分は他人より少しは優れている、他人より少しは裕福だと思っている、そう自覚しているプチブル、少しだけプライドが高い人達にはこの回りくどい言い方が功を奏します。
だって、貴方の言っていることの意味が分からないなんて恥ずかしくて言えない人達ですから・・・

以下 ●●IさんとN事務長Ⅷ●● は11に続く


次のページ »