大阪・兵庫・神戸・京都、関西で、医師・看護師・薬剤師など転職・求職を希望される医療従事者の方へ病院・医院等医療機関の求人をご紹介

Home  »  医療・介護のよもやま話

医療・介護のよもやま話

関西の医療転職・求人サイト メディコプロ プログ

2011.1.31 月曜日

真実は闇の中 50

医療・介護のよもやま話 — admin @ 21:06:16

●●N事務長の作戦Ⅶ●● 

N事務長の繰り出すカマに次々に引っ掛かるGさんですが、でもこれらの言葉も口から出まかせの部類の言葉に違いないのでしょう。
まさしく嘘の上塗りをしているに違いありませんが、これまでに判明した嘘は、そもそもGさんは看護部長に電話で嘘をつき通していたし、GさんはIさんと昨日も接触をしていたことも隠していました。
そして接触だけならまだしも、どうやら何か約束までしているようです。

「何ですか、その、Gさんは約束のつもりで言ったわけじゃないけれど、もしかしてIさんは約束と思っているかもしれないということは?」

「いえ、たとえ話です。 そんなことってよくあるでしょ? 例えば電話で 『いつかお会いしたいですね』 って言っただけなのに、いつの間にか会うことになっていて、その後 『いつ会うの?』 って何回も聞かれたりすることってありませんでしたか?」

「はあ・・・その例えは、今までGさんが女性にしてきたことですか?」

「まあ女性というか、なんというか・・・」

どうやら今まで知らなかっただけで、このGさんという男は嘘の上塗りをする虚言癖にプラスして相手の心を弄ぶことも平気で出来るようです。
だから、純粋無垢で人を傷つけることが嫌いな人達の集団である他の医療従事者からは一線を引かれているのでしょう。
別にGさんから実害を受けた訳で無くても、Gさんの発する言葉や態度からそんなGさんの本質的な部分を感じ取って、だからこそ無意識のうちに一線を引いているのでしょう。

「へえー、そんなにGさんは女性からモテルんだ?」

「モテルとか言うのじゃなくて・・・普通に、そういうことって言いませんか?」

「なんで会う気も無いのにそんなことを言うんですか?」

「N事務長もそんな風に思う人なんですか?」

「どういうこと?」

「相手が言って貰って嬉しいことを言ってあげるのが普通でしょ?」

「でも実現しないことを言うと、その言葉が嘘だと分かった時のショックは倍になりますよ」

「そうかもしれませんが、一瞬でも幸せになったり、安心出来たり出来ればいいじゃありませんか・・・」

一瞬でも幸せになれたり、安心出来たりすればいいときましたか・・・そんな考え方をしていて、Iさんと何か約束をしたとなると・・・先生達が懸念していたとおり、もし腕の骨が折れていたら私が責任を取りますくらいのことは言っていそうです。

「そんなものですか?」

「ええ、私はそう思っています」

随分自信あり気なお言葉です・・・その根拠のない自信が、事を大きくしていないことを願います。
そして、Iさんと変な約束をしていないことも・・・

「で、何かIさんが約束と勘違いするようなことを言った覚えはありませんか?」

「約束と勘違いするようなことですか・・・」

「思い出せませんか?」

「N事務長、申し訳ありませんが思いだせません」

これはGさんに聞くだけ無駄です。
Iさんから聞いた方が得策のようです。
それでは最後に、今回のことの核心に触れてみることにします。

「ところでGさん、1週間前にIさんのリハビリ中に何かありませんでしたか?」

「えっ?」

「ですから、Iさんのリハビリ中に何かありませんでしたか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」
 

以下  ●●N事務長の作戦Ⅷ●● は51に続く


2011.1.30 日曜日

真実は闇の中 49

医療・介護のよもやま話 — admin @ 16:04:14

●●N事務長の作戦Ⅵ●● 

N事務長は・・・Iさんから聞いた訳でもないのに・・・IさんとGさん話の内容から2人は昨日何らかの接触をしていると考えて、Gさんにカマを掛けてみました。
すると、Gさんはまんまと引っ掛って、昨日Iさんと接触したことを認めます。
看護部長にはIさんのことを知らないとまで言い切ったのですが、これからGさんはN事務長に対してどんな話をして、どんな辻褄合わせをしてくるのでしょうか・・・

「そうですIさんから、いろいろとお聞きしました」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「ところでGさんは、昨日看護部長にIさんのことを知らないと言ったらしいですが、どうしてそんなことを言ったの?」

「・・・えっと、それは・・・」

「それは何ですか?」

「電話で聞かれたのですけれど、外で電話をしていたので聞き取りづらくて、Iさんと聞き取れなくて別の名前と勘違いしていました」

なるほど上手い言い訳を考えたものです。
名前を聞き間違えたというわけですか・・・
でも、看護部長の話では・・・看護部長が電話をした時は既にGさんは家に着いていたって言っていたと思います・・・まあそのことは不問に付しましょう。 というよりもこの段階で嘘の上塗りを指摘したところでしょうがありません。
今の段階では、Gさんが嘘の上塗りを始めたということが分かっただけでヨシとします。

「ほう、そうだったのですね」

「ええ、そうなんです」

「まあそのことは、名前の聞き間違いということにしておきましょう」

「いえ、本当に聞き間違いでした」

「まあまあいいじゃないですか・・・それとも・・・もっとこの件について深くお尋ねしてもいいのですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「そうでしょ? 電話で看護部長にIさんのことについて知らないと言ったことは、Gさんの聞き間違いということで終わりにしましょう」

「はあ・・・」

「それでGさん」

「はい」

「Iさんとの約束はどうするの?」

ここまで来たら勝負です。
再度カマを掛けてみます。
IさんとGさんは何か口約束をしているのでしょうか?

「や、約束ですか?」

「ええ、そうです」

「そんなものしていません」

「そんなものって、どんなものなの? 何か心当たりでもあるの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

こうやって、話の途中でいきなり黙ったりするから怪しいのです。
多分今頭の中では、あれやこれやと考えをまとめていて、これまで言ったこととの正誤性を確認しているのでしょう。

「していないなら、何故黙っているの?」

「してないと私は思っていますが、Iさんはそう思っていないかもしれないなあと思いまして」

ヨシ引っ掛かりました。
「なるほど、Gさんはそんなつもり、約束のつもりで言ったわけじゃないけれど、もしかしてIさんはそう思っていないかもしれないということですね」

「ええ・・・」

以下  ●●N事務長の作戦Ⅶ●● は50に続く


2011.1.29 土曜日

真実は闇の中 48

医療・介護のよもやま話 — admin @ 13:18:47

●●N事務長の作戦Ⅴ●● 

これがN事務長の作戦なのか?
作戦と言っても 『逆切れ』 には 『逆切れ返し』 とかなり分かり易い直球勝負です。
でも変に策を練るよりも、この方がGさんのようなタイプには効果があるかもしれません。

看護部長の報告によると、GさんはIさんのことを覚えていない、知らないと言い切ったということでしたが、N事務長の直球勝負の質問には、知っている、思いだしたと確かに答えました。
こうなれば、一気呵成に攻め続けるしかありません。

「今、確かにIさんのことを思い出した、覚えているといいましたね」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「そうですよね?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「Gさん、何を黙っているんですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「いいですか、もう一度お聞きします」

「今日ここにGさんを呼んだのは、患者さんであるIさんに関することで聞きたいことがあったからです。 先程も覚えていると言われましたが、Iさんのことは分かりますね」

「は、はい」

「それでは、Iさんと最後に会ったのはいつですか?」

「最後に会ったのですか?」

「ええ、そうです」

「会ったというのは、例えばリハビリをしたというように、お互いを認識して声を掛け合ったりしたということですか?」

「もちろんです」

「リハビリを最後にしたのは・・・」

「最後にしたのはいつですか?」

「1週間前です」

「そうですか・・・1週間前でしたか」

「はい」

Gさんの言葉に何か引っかかるものがあります。
最後に会ったというのは、誰がどう考えても最後に合ったことに違いないのに、そんなことをわざわざ聞き直して、どのような場合を会ったと言うのかと聞き返すこと自体に何やら不審な点が見られます。
ちょっとカマを掛けてみることにします。

「リハビリの最後は1週間前なのですね?」

「はい、リハビリを最後にしたのは1週間前です」

「じゃあ、最後に見かけたのは?」

「そ、それは・・・」

どうしてそこで言葉に詰まるのですか?
それでは、リハビリを最後にしたのは1週間前だけれど、最後に会ったのは昨日と言っているようなものじゃないですか・・・

「それは、昨日ですよね?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「昨日の午前中に会ったんですよね?」

「そ、それは・・・」

「それは、何ですか?」

「Iさんから聞いたのですか?」

やっぱりそうか・・・
昨日、Iさんがリハビリ室にGさんの在室確認の為に来た時に2人は話をしたようです。
Iさんも、そのことについては言及しませんでしたが、思っていたとおりです。

「そうです。 Iさんから聞きました」

「そうですか・・・それならば仕方ありません・・・そのとおりです。昨日、少しだけ話をしました・・・」

よし、GさんもIさんと昨日会ったことを認めました。
これならば話は早いです。
後は続けて攻撃あるのみです。

以下  ●●N事務長の作戦Ⅵ●● は49に続く


2011.1.28 金曜日

真実は闇の中 47

医療・介護のよもやま話 — admin @ 13:24:38

●●N事務長の作戦Ⅳ●● 

『逆切れ』 には 『逆切れ返し』 です。
逆切れする人達には、切れる正当な理由など無く、ただ単にその場の雰囲気やその場の流れで切れているだけです。
KYで・・・空気が読めないのではなくて、空気を敏感に読み取って自分の立場が有利になるような瞬間に突然切れて、相手が怯むのを待っているのです。
だからこそ逆切れには、逆切れ返しで対応あるのみです。
突然の逆切れに怯んではいけません。
逆切れ返しで、こちらが怯むのを待っていた相手の出鼻をくじきましょう。

「何か言ったらどうなの?」

「い、いえ・・・」

「いえとか、あのとか、そうとか、ええとかしか言えないの?」

「そ、そんなことはありません・・・」

少しばかり、逆切れ返しが効き過ぎたかもしれませんが・・・この手のタイプはそんなことをいちいち気にするタイプでも無いでしょう。
ここは、一気に畳み掛けることにします。

「あのさあ」

「は、はい」

「本当に何故ここに呼ばれたか分からないのですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」
相変わらずGさんは考え込むような素振りを見せています。

「今、考え中ですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」
どうやら素振りだけのようです。

「分からないのなら教えて差し上げましょう」

「昨日はすみませんでした」
突然、Gさんが謝り始めます・・・

「昨日は?」

「すみません。 勝手なことをしました。 午後からならば私一人が居なくても大丈夫だと勝手に判断しました。 もちろんそんなことを私が決めることは間違っていることも分かっています。 本当に申し訳ありませんでした」

N事務長が二の句も告げない様にGさんは謝り続けます。
「ですから、そうではなくて・・・」

「すみませんでした。 申し訳ありません。 本当にすみませんでした。 本当に本当に申し訳ありませんでした」

「・・・・・・・・・・・・・・・」
やっぱりそうです。
この人、Gさんはそういう人なのです。
誰かれ見境なく、その時、その時点でこうした方が今の自分にとって有利になると考えれば何だって出来るのです。
ここでN事務長が許しませんって言ったら、多分土下座くらいするでしょう・・・
さて、Gさんがこんな人だと分かったところで、次の攻め手を考えなければいけません。
Gさんは昨日の早退のことで話を誤魔化そうとしていますが、問題は昨日のことではありません。
そうです。
ここに呼び出した本当の目的は、Iさんのことです。
Gさんの誘導に引っ掛かっている訳にはいきません。

「お許し頂けますか?」

「何を謝罪しているのですか?」

「ですから、昨日の午後の勝手な行動についてです」

「ああ、昨日のことは規定に従って処理させていただきますからご安心ください」

「規定に沿って処理・・・ですか?」

「ええそうです。 無断早退というのは聞いたことがありませんけれど無断欠勤に相当しますし、所属部署の責任者への報告義務違反、まあいろいろありますけれど・・・それらの罰則規定に従って進めさせて頂きます」

「は、はあ・・・」

「それで今日ここに呼び出した本題にまいりましょう。 昨日の無断早退に関係があるのかは知りませんけれど、患者さんであるIさんのことです」

「I、Iさん・・・」

「思いだしましたか?」

「え、ええ・・・」

よし、GさんからIさんのことを知っている、思いだしたと言質を取りましたからここからは一気呵成に攻めることにします。

以下  ●●N事務長の作戦Ⅴ●● は48に続く


2011.1.27 木曜日

真実は闇の中 46

医療・介護のよもやま話 — admin @ 17:51:51

●●N事務長の作戦Ⅲ●● 

いよいよN事務長によるGさんの取り調べが始まりますが、この取り調べで真実が解明されることを切に願います。

「どうぞ、何処でもいいですからお座りください」

「は、はい」

「さて、何からお話しましょうかねえ」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「Gさんとこうやってゆっくりお話しするのはいつ以来ですか?」

「入職時の面接の時と去年の忘年会以来で3回目ですか・・・」

「そうでした。 去年の忘年会の時は席が隣でしたね・・・確かにあの時は随分盛り上がりましたねえ」

「はい、看護部の中で一番○○な人というお題で盛り上がりました」

「そうですそうです」

「少し離れた場所にいた看護部長がしかめっ面してこっちを睨んでましたけれど・・・」

「ははは、そうですそうです。 あの時は笑いながらも次の日にお仕置きされるのじゃないかと気が気ではありませんでした」

「あの方は恐いですから」

「あーでも・・・今日はGさんにこの場所に来て頂いたのは、その看護部長も絡んでいますから」

「は、はい・・・昨日のことですね」

「昨日? まあそれもそうです」

「それもそう?」

「ええ」

「何か他にもあるのですか?」

「無いのですか?」

「えっ? ・・・・・」

そうでしたか・・・
やっぱりと言うべきか、何と言ったらいいのでしょうか?
Gさんという人物は、自分に不利な物事はすぐに忘れられるオメデタイ、ある意味羨ましい性格のようです。
自分に不利な物事が重なっている場合は、その中で一番問題が小さい物事だけを前面に出してきます。
問題の本質や、その問題の元になった物事などは、ごく自然に頭の中の遥か彼方まで押しやることが出来るのです。
いわゆる、嘘の上塗りに近いことが平然と出来るのだと思います。
何時からかは分かりませんが、自然にそうすることを学習して、会得しているのです。
ですから本人が悪いのではありません。
そのように頭の中で学習しているからこそ、悪気なくオートマチックに出来てしまうのです。
Gさんが悪いのではなく、そう学習したことを間違っていると教え諭してくれなかった周囲に居た大人達が悪いのです・・・

「じゃあ、まずは昨日のことから話しましょう」

「まずはって・・・ですから他に何かありますか?」

ほら、やっぱり・・・
今度は、そんな学習をした人達特有の得意技が出て来るようです。
必殺 『逆切れ』 !!! 

「まあ、それはおいおい話をしていきましょう」

「おいおいって、どれだけ話するんですか?」

「それは話の流れで・・・」

「今日、私は仕事をしに病院に来ました。N事務長と話に来たんじゃありませんけれど」

まだ口調は柔らかいけれど、話の内容は既に 『逆切れ』 モードに突入しているようです。
こんな時は 『逆切れ返し』 に限ります・・・

「ハア? こっちこそGさんと話する為に病院に来たんじゃないです! 
いい加減にしてくれないかな? 
Gさん、自分の立場も考えずに少しイイ気になってない?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

以下  ●●N事務長の作戦Ⅳ●● は47に続く


2011.1.26 水曜日

真実は闇の中 45

医療・介護のよもやま話 — admin @ 14:49:57

●●N事務長の作戦Ⅱ●● 

まさか逃げることはないでしょうが、N事務長はGさんを自分より前を歩かせて不審な動きをしないか目を光らせます。
Gさんの表情は伺いしれませんが、その歩く姿は微妙に安定性を欠いてGさんの心の動揺を映しだしているかのようです。

「N事務長、この歩き方は不自然じゃありませんか?」

「そうですか?」

「ええ、何だか私が悪いことをして連行されているみたいです」

「そうかなあ?」

「間違いありませんよ」

自分が悪いことをしていると思っていなければ、普通そんなことは言い出さないものです。
ここは、ちくりと針のような鋭い言葉でGさんの良心を刺激してみることにします。

「そんなことを言うところをみるとGさんは、何か悪いことをしたのかな?」

「え、い、いや・・・そんなことはありませんけれど・・・N事務長と並んで歩いているなら兎も角、後ろから見張られているように歩いていたら・・・この歩いている姿を見た他の人は、誰でもそう思うに違いありません」

「そんなことは無いでしょう」

「いや、間違いありません。 これでは手錠や腰紐で結ばれてはいませんけれど、連行されている容疑者です」

「ふーん、そこまで言うとなると、ますます自分に何かの容疑がかけられているとでも思っているのですか?」

「そ、それは・・・」

「自分に何の落ち度もなくて清廉潔白ならば、私に呼ばれたからと言っても、事務長室に・・・何だか職員の中では事務長室を取調室なんて呼んでいる輩もいるようですが・・・連れて行かれたところで何の心配もないでしょうし、恐れることは何も無いと思います」

「確かにそうですけれど・・・」

「Gさんが何にも後ろめたいことがなければ、堂々としていればいいだけです」

「ま、まあ・・・」

「まだ何か言いたいことがありますか?」

「も、もういいです。 それよりも早く事務長室に向かいましょう」

この会話は立ち止まってしていました。
会話の内容までは聞こえないまでも外来診察が始まる時間ですから、他の職員達は忙しく動き回っています。
誰もが忙しいはずのこの時間に自分の持ち場では無い場所でN事務長と歩いていて、尚且つ話などしていれば他の職員からはN事務長に連行されていると思われても仕方ありません。
そんな状況を脱して、他の職員の好奇な視線から逃れるには、取調室だろうが何だろうが事務長室に早く入るに越したことはありません。

「そうですか・・・じゃあそうしましょう」

そう言うと、N事務長はGさんの横に並んでスタスタと歩き始めます。
事務長室は管理部門の並ぶ階にありますから、その階にさえ入れば患者さんや他の職員に出会う確立は小さくなります。
管理部門の並ぶ階に入った途端、N事務長は今度は立ち止まらずにGさんに話かけます。

「今日、何で呼ばれたかは分かっていますか?」

「え、ええ・・・」

「そう、分かっているんですね」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「どうしましたか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「あれあれ、事務長室で黙秘権は認められていませんからね」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「さあ着きました。 中に入って、どうぞお掛けになってください」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

以下 ●●N事務長の作戦Ⅲ●● は46に続く


2011.1.25 火曜日

真実は闇の中 44

医療・介護のよもやま話 — admin @ 12:27:48

●●N事務長の作戦●● 

Iさんが来院して診察を受け、診察の結果H先生に対してGさんの悪行の相談?・・・悪行を明らかにした翌日、即ちこの悪行と関係があるのか、午後になり突然Gさんが早退した日の翌日になりました。
昨日のことなど何もなかったように、いつものように粛々と病院の朝は時間を刻んでいきます。
N事務長も始業の15分前には席につき、5分前には朝礼へと向かいます。
N事務長のルーチンワークは医事課の朝礼への参加です。
しかし今日は医事課へは顔だけ出して挨拶を終えると、その足はリハビリ室へと向かいます。
昨日はお腹の具合が悪くなって早退したGさんですが、今日出勤していることはタイムカードの刻印で確認済です。
リハビリの職員は朝礼中なのでしょう、リハビリ室の扉は閉まっていますがリハビリ室の前には既にリハビリを待つ患者さまの列が出来ています。
患者さまの間を患者さまに朝の挨拶をしながら進み、リハビリ室のドアを開けます。
リハビリ室の中では、小さい円を作ってリハビリ職員が朝礼中です。

「おはようございます」

N事務長の挨拶にリハビリ職員は一様に顔を入口方向へと向けます。
「おはようございます」 「・・・ございます」 「・・・ます」 「・・・す」 「・・・・・」

昨日の内にN事務長は、朝からGさんを尋問する為に呼び出すことを責任者には伝えてあります。
その為に患者様に迷惑が掛からない様な職員の配置をするように伝えてありましたから、責任者だけはN事務長に軽く頭を下げただけの目礼を返します。
N事務長が室内に入ってきて、扉を閉めたことを確認してから今日の配置の確認が始まります。
「それでは今日の配置の発表をします・・・・・・・・・・・・・・・最後にGさんはN事務長の面談です。以上宜しくお願いします」

「お願いします」 「・・・します」 「・・・ます」 「・・・・・・・・・・・・・・・」

突然のN事務長の朝礼出席と責任者からの指示にGさんは固まっています。
「Gさん、こちらへどうぞ」

「何処へですか・・・」

「さあ他の皆さんは今日も宜しくお願いします。 もう患者さまが大勢お待ちですよ」

「はい」 「ハイ」 「・・・い」 「・・・イ」

「じゃあGさんはこちらに」

Gさんは、観念したかのような表情を見せてN事務長へ歩み寄ります。
「何でしょうか?」

「何でしょうかはないと思いますが・・・ところで体調はどうですか?・・・まさか突然腹痛を訴えたりしないですよね」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「返事がないところをみると、体調は大丈夫のようですね」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「こちらにと言いましたが、リハビリ室では話も出来ませんから私の部屋までお願いします」

「事務長室ですか?」

「何かご不満や不都合でもありますか?」

「い、いえ・・・」

Gさんが事務長室に行くことに難色を示すのには理由があります。
職員の間では、事務長室は取調室と揶揄されているからです。
事務長室に呼ばれるということは即ち、何か病院内で問題を起こしたということです。
それも呼ばれる時間が早ければ早い程、問題の重要度が高いということです。

「さあ、まいりましょう」

「は、はい・・・」

そう言ってN事務長はGさんの後ろに回り、Gさんの肩を手で押します。
まさかこのままGさんに逃げられることはないでしょうが、念には念をいれてGさんの後ろから注意深くGさんの動きを見守ります。

「私の部屋は分かっていますよね」

「え、ええ」

「じゃあ、先に歩いてください」

以下 ●●N事務長の作戦Ⅱ●● は45に続く 


2011.1.24 月曜日

真実は闇の中 43

●●N事務長の推論Ⅲ●● 

それにしても、実際にこんなことがあるとは・・・
普段から医師や看護師のミスによる事故については、ある程度まで想定しているのですが、まさかリハビリとは・・・

想定している部署では、やはりそれなりの対策を練っています。
ましてやそのような事態が本当に起これば、直ちに報告が上がってくる体制作りや、直ちに報告を上げるものだという意識を持って職員は働いています。

灯台もと暗し?
灯台ではないものの、やはりこういう事態は普段気にかけていないような場所で起こるものです。
ただし皆の意見を総合すると、Gさんについては起こるべくして起こったという意見が大多数でしたけれど・・・

「H先生の話を聞いていたら、事の重大さがどんどん増してきました」

「そうなんですよね」

「単に、職員が患者さんに怪我をさせたでは済まされなくなってきました」

「そういうことです」

「リスクマネージメント委員会の取り上げるべき問題の中でも・・・とりわけレベルの高い問題です」

「そういうこと、患者さまの身体に実害を与えた最上級の事象です」

「もし・・・私が考えていることがそのとおりであれば・・・リスクマネージメントの事象という範囲を超えて、これは間違いなく医療事故です」

医療事故という言葉に敏感に反応した院長が会話に入ってきました。
「医療事故ですか・・・」

「いや、もっとよく考えて、扱い方を変えれば医療事故というよりも事件、加害者と被害者のいる事件、過失致傷とも言えます・・・」

「確かにそのとおりですね」

「ここは気を引き締めてこの問題に取り組むべきだと思います」

「そうしないといけないようですね」

「はい院長、そうさせて頂きますし、そうするべきだと思います」

「ところでIさんの腕の治療については引き続きH先生に任せるとして、Gさんに関してはこれからどうしていきましょうか?」

「今日は看護部長にお願いしましたが、どうやら敵もさる者、こうなれば私にお任せ頂きたいと思います」

「看護部長はどうですか?」

「ええ、もうここまで来たらN事務長にお任せした方がいいと思います。私は後方支援をさせて頂きます」

「わかりました。 そうであれば今後、明日からはGさんに関することはN事務長に一任することにします。 H先生もそれでよろしいでしょうか?」

「ええ、それでお願いします」

「ではN事務長にお任せしますのでよろしくお願いします」

「了解しました。 くれぐれも皆さまのご期待に添えるように取組ませて頂きます」

「それで・・・N事務長はGさんに対してどのような対応を取るつもりですか?」

「そうですね・・・まずは・・・Iさんからは話を聞いたので、その話をGさんにさせて頂いてからGさんの思っていることを確認したいと思います」

「じゃあ駆け引き無しで直球勝負なんですね?」

「ええ、最初から駆け引きをすると相手も駆け引きをしてきますので、まずは直球勝負です。その球の見送り方や狙いを確認して次の球の配球を考えることにします」

「初球狙いではないことを確信しているんですね?」

「ええ、初球はまず見逃してくるでしょう。 だからこそ初球は直球勝負です」

「じゃあ後は、その方法についてなど全てにおいてN事務長にお任せすることにしましょう」

以下 ●●N事務長の作戦●● は44に続く


2011.1.23 日曜日

真実は闇の中 42

医療・介護のよもやま話 — admin @ 12:02:18

●●N事務長の推論Ⅱ●● 

院長、看護部長、H先生を前にして、N事務長はGさんとIさんに関する推論を話続けています。
この推論は、単なるN事務長の推論、それも考え過ぎによる妄想なのでしょうか、あるいは真実に近いのか・・・・それはこれから少しずつ判明していくことになるでしょう。

「N事務長」

「院長何ですか?」

「GさんがIさんととそんな約束、責任を持つなんて言ったとしても・・・IさんはGさんとそのような約束をしたと言えなかったのかなあ?」

「どうでしょうか・・・言えなかったのか、それとも伝家の宝刀として鞘に収めたままにしているのかもしれません」

「そうだよね、後者の方が正解じゃないかと私は思うよ」

「そうですね、今後どのような展開になるか分かりませんし、そもそも今日は、また骨が折れてしまったという現実に向き合わなければいけませんでしたから・・・」

「そうだね、その現実を受け入れることは、Iさんにとって大変辛かったはずですよ」

「なかなか完治しなかった腕が、少しずつ良くなっていたのに・・・元の状態、術後の状態まで後戻りですものね・・・」

「N事務長、もしかすると術後の状態まで後戻りではなくて、それ以上に悪くなっているかもしれませんよ」

「H先生そうなんですか?」

「ええ、来週もう一度再検査しようと思っていますが・・・」

「あーあ、それは大きな問題ですねえ」

「そうなんだよなあ」

「院長もそのことはご存知でしたか?」

「ああ、H先生から聞いています」

「H先生の見立てはどうでしたか?」

「手術で、固定する為に入れたボルトが緩んでいると思います」

「断言ですか?」

「さっき、術後のレントゲン写真と見比べてみて確信しました」

「あーあ・・・」

「まさにあーあです」

「それは、そのままにしておいて治るものですか?」

「そうですねえ、普通ならば固定さえしっかり出来れば問題ないとおもいますが・・・」

「思うけれどなんですか?」

「Iさんのこれまでの経過を考えると・・・」

「考えると何ですか?」

「もしかすることもあるかも」

「もしかする?」

「ええ、治るにしても今までの倍以上の時間が掛かるかもしれないなあと・・・」

「それが最悪のシナリオですか?」

「いや、最高、最上のシナリオです」

「最高、最上?」

「ええ・・・」

「じゃあ、最悪は?」

「リオペ」

「えっ?」

「もう一回手術をしなければいけません」

「もう一度手術・・・それだけは避けたいですね」

「勿論です」

以下 ●●N事務長の推論Ⅲ●● は43に続く


2011.1.22 土曜日

真実は闇の中 41

医療・介護のよもやま話 — admin @ 12:03:46

●●N事務長の推論●● 

実はGさんとIさんが何らかの条件交渉をしていたのではないかと考えるN事務長ですが・・・実際はどうなのでしょうか?

「そう言えば、先週のリハビリ中にGさんとIさんが何やら話し込んでいたと、他のリハビリの職員が言っていましたわ・・・その話し込んでいた内容がN事務長が考えているとおりだとすれば・・・何と恐ろしいことを・・・病院の職員が自分のミスに対して、報告や連絡や相談もせずに責任を取るなんて軽々しく口にするとは・・・」

「看護部長の仰るとおりです。 まさかとは思いますが、皆さんの話を聞いているとGさんがそんなことを言ったり、してもおかしくないような職員に思えてきました」

「私もです。 Gさんの人となりやN事務長の話を聞くうちにそうかもしれないと思うようになってきましたわ」

「院長、看護部長の話を聞いて私もそんな気がしてきました」

「H先生もそう思われますの?」

「ええ、私は院長や看護部長よりもリハビリの職員達と接する機会が多いですから・・・普段のGさんも知っているつもりでしたが、さもありなんというのが今の感想です」

「さもありなんですか」

「はい、院長」

「困ったわね」

「ところでN事務長はどうしてそう思うようになったのかな?」

「Gさんに関しては人事考課の結果や、日頃の勤務態度からですし、Iさんについては午前中の話の内容からもしかしてと思いました」

「そうですか・・・」

「勿論あくまで私の推論です」

「それは分かっているけれど、N事務長の推論の方がなんだか納得出来るから不思議だよ」

「そうね、なんとなく辻褄が合うから不思議だわ」

「院長、看護部長のいうとおり、私もそんな気がしてきました」

「お三方とも、あくまで私の推論ですから、参考意見程度にしてください」

「でも意外にN事務長の推論は当たりますから」

「そうですわ」

「確かにね」

「それでN事務長の推論をもう一度まとめて話してくれないかね」

「はい、そうさせて頂きます」

「じゃあ聞かせてくれるかな?」

「Gさんは、Iさんの1週間前のリハビリ中に施術のミスをして、Iさんに受傷させた・・・しかしその場で、Iさんに1週間は様子をみた方がいいとか何とかと言って丸めこみ、その場での診察を回避させた」

「うんうん」 「そうかもね」 「あり得る話です」

「そして、もし何かあったら私が責任を持つと言って更に納得させた」

「そうだろうな」 「そうかも知れないわね」 「言いそうだ・・・」

「そして今日、Iさんは診察前にリハビリ室に行き腕の痛みが引かないから診察を受けることをGさんに伝えた」

「確かに、Iさんは今日の診察前に職員の確認の為にリハビリ室に行ったと言ってましたわ・・・でも職員の名前の確認と言っていたけれどね」

「まさか、Gさんとそんな約束をしたとは言えないからじゃないですか?」

「リハビリの職員は、今日Iさんがリハビリ室に来たとは言っていませんでしたが・・・」

「中に入らずとも、抜け目のないGさんならばIさんが来たことに気が付いて廊下で話したことも考えられます」

「確かにそうだわ・・・そこまで考えていなかったから、今日のGさんの仕事中の様子まで聞いてこなかったわ」

「それで、Iさんの痛みが引いていないということは・・・これはまずいと思い、今日のところは早退した・・・」

「なるほど」

「あり得る話ね」 「ありがちだけれど、本当だとすると情けない話です」

「全くそのとおりです」

以下 ●●N事務長の推論Ⅱ●● は42に続く


次のページ »