真実は闇の中 60
●●N事務長の報告Ⅱ●●
Gさんの事情聴取の報告を院長にするN事務長ですが、Gさんは限りなく黒に近い灰色(グレー)だと聞いた院長の落胆振りは目を覆うものがあります。
院長である前に一人の医師であり、医療従事者であるという自負がそうさせるのでしょう。
IさんとGさんの2人から話を聞いた限りでは、2人の間に何やら胡散臭く、生臭い話しや約束のようなものまで見え隠れしてきました。
まだ決定的な証拠は無いものの、2人の間に何らかの申し合わせがあることは事実でしょう。
「で、これからN事務長はどうするつもりですか?」
「まずGさんから聞いた話しについては、Iさんに直接ぶつけてみることにします」
「Iさんは、いつ病院に来るのかね?」
「昨日は1週間後ということにしていましたが・・・」
「もっと早い方が良くないかね?」
「そうですね・・・後々になって対応が遅い、対応が悪いと言われるかもしれませんから・・・今日中に連絡してみることにします」
「そうだね、最悪のことを考えると先手、先手を打った方がいいねえ」
「分かりました。 院長の承諾も頂けましたのでIさんに連絡して、明日以降で会える日を調整してみます」
「ところでIさんは、どうやって病院に来ているのかね?」
「それは交通機関のことですか?」
「ああ」
「当院の送迎車を利用しています」
「そうかね・・・じゃあ今後も病院に来て貰う時はなるべく費用負担の掛からない様にしてあげて下さい」
「了解しました。 そのように手配致します」
「その辺りのことについては、N事務長のことですから抜かりは無いでしょうが・・・今後のことを考えて・・・どんなことがっても病院は出来る限りのことをしているという認識をIさんにして貰える様にお願いします」
「はい」
院長が心配するのは理解出来ます。
N事務長が赴任するきっかけにもなった患者さまの大クレームも、病院サイドがもう少しクレームを言った患者さまに歩み寄ったり、誠意を見せていたら、あそこまで事は大きくならなかったでしょうし、そのことで責任を取って前任事務長が辞職することもなかったでしょう。
これは気配りというよりも・・・もちろん今後の展開にもよるけれど・・・万が一病院側に問題があった時に相手に与える病院の印象を良くする為のリスクマネージメントの一環です。
「それで、Iさんの診察はどうするのかね?」
「診察は1週間様子を見て、再検査となるようです」
「そうかね・・・診察についてはH先生と話をしておきます」
「お願いします。 私は、まだ少し2人の意見に相違がありますから、そこを埋める作業をしていきます」
「そうだね・・・どちらかが嘘をついている・・・若しくはどちらかが自分の利益を考えて言動しているとしか思えないから、そこのところを解明して貰えれば助かります」
「まずはIさんに再度リハビリ時の状況を確認します」
「Gさんの言ったこととの正誤性の確認かね?」
「そのとおりです。 どんな状況だったかも含めてお聞きするつもりです」
「それがいいでしょう」
「それと、GさんがIさんに言ったことの確認もです」
「それが、最も大切なことですね」
「はい」
以下 ●●N事務長とIさん●● は61に続く