大阪・兵庫・神戸・京都、関西で、医師・看護師・薬剤師など転職・求職を希望される医療従事者の方へ病院・医院等医療機関の求人をご紹介

Home  »  医療・介護のよもやま話

医療・介護のよもやま話

関西の医療転職・求人サイト メディコプロ プログ

2011.5.31 火曜日

真実は闇の中 149

医療・介護のよもやま話 — admin @ 13:29:01

●●Iさんの息子さんⅦ●● 

Iさんに、Iさんの息子さんを交えた話し合いが始まりました。
H先生から提案された再手術については、Iさん本人も納得の上、その方向で進むつもりだという返事を頂きましたが・・・ただし、いろいろと・・・Iさんなりの条件があるようです。

「足代ですか」

「そうよ、この○×病院ならば、送迎の車があるからお金も掛からないけれど、H先生の紹介してくれる△△病院っていえば・・・電車に乗って、それも乗り換えがあって、最寄駅からもバスでしょ?」

「そうなりますねえ」

「それに・・・それ以前に、私の場合、家を出て電車に乗る為にバスを使って30分以上掛かるわ」

「そうですか」

「バスに乗って、電車に乗って、またバスに乗って・・・病院に着くまでに2時間くらい掛かるじゃないの」

「確かに、その通りです。 この病院からだと、車でも30分ですから、公共交通機関を使えばそうなりますねえ」

「それについては、どう思いますか?」

「そうですねえ・・・」

「息子に送って貰おうと思ったけれど、息子も仕事をしてますからね」

「はい・・・」

「息子の嫁は、車の運転出来ないしね」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「どう、何か方法はある?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「タクシー使って、タクシー代を出してくれるとか」

「分かりました」

「じゃあ、タクシーを使わせて頂くわ」

「いえ、そうじゃなくて・・・」

「そうじゃない?」

「ええ、まだ確認はしていませんが、Iさんの場合、△△病院ではこんな診察の形になると思います」

「どういうこと?」

「完全に紹介での診察ですから、時間も指定されると思います」

「それは、そうよね」

「初回の診察で腕の状態を確認して、手術日、入院日が決まるということです」

「ですから、1回目の診察と入院の当日は、当院の車で送迎します」

「家まで来てくれるの?」

「ええ、ご自宅でも構いませんし、この病院からでもいいですよ」

「そ、そう・・・」

「お母さん、いいじゃない」

「そうね」

「それなら、僕も仕事を休んだり、仕事の都合をつけなくても済むし、そうして貰ったら?」

「分かったわ」

「それでは、初回の通院日や入院日が決まり次第、手配をさせて頂きます」

「お願いするわ」

「了解しました」

「これで、足は確保出来たわ」

「お役に立てて良かったです」

「でもね・・・問題はここからよ」

「問題?」

「そうよ」

「何でしょうか?」

「何でしょうか? なんて惚けても駄目よ」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

ついに、今回の話の本題に突入のようです。
序盤は軽くジャブの打ち合いで済みましたが、中盤も序盤同様上手く話が進むことを祈ります。

以下 ●●Iさんの息子さんⅧ●● は150に続く


2011.5.30 月曜日

真実は闇の中 148

医療・介護のよもやま話 — admin @ 17:01:47

●●Iさんの息子さんⅥ●● 

N事務長がICレコーダーを使用して話し合いの録音をしたいと切り出したところ、Iさんの息子さんは、構わないと即答してくれました。
この発言から、Iさんの息子さんは話がきちんと出来る人だと、N事務長は確証を持ったわけですが・・・

「それでは、録音をさせて頂くということで宜しいですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「その方が、お互いに言った言わないということにならないから、是非そうしてください」

「Iさん、宜しいですか?」

「息子も賛成していますから・・・でも何だか、会話を録音されると言うのは、あんまりいい気はしないものだわねえ」

「そうですか?」

「お母さん、そんなことはありません。 話し合いをしっかりとする為にも大切なことです」

「そうかなあ」

「N事務長、どうぞお気になさらずに録音を開始してください」

「ご理解頂き、有難うございます」

と、N事務長はIさんの息子さんにお礼を述べてから、ICレコーダーのスイッチを入れて、机の真ん中にICレコーダーを置きました。

「それじゃあ、早速話を始めましょう」
Iさんは、ICレコーダーでの録音については納得出来たのか、話し合いを始める催促の声を上げました。

「はい、どうぞ始めてください」

「じゃあ、今日は息子にも来て貰ったから、今後の私の治療の方向性を決めて、それに関連することについて質問させて頂きます」

「Iさん、私は医療についての質問にはお答え出来ませんからね」

「そんなことは分かっています」

「それならば結構です」

「それと、特に今日は、今の私の腕の状態を病院がどう考えているかをお聞きしたいと思っています」

「分かりました」

「じゃあ、早速・・・」

「ええ・・・」

「今後のことだけれど・・・」

「はい」

「H先生にも勧められたとおり、再手術をすることにしました」

「そうですか」

「それで・・・」

「は、はい」

「H先生は、この病院での手術じゃなくて他の病院を紹介すると言っていましたけれど、N事務長はそのことをご存知なのかしら?」

「ええ、先日H先生から今後のIさんの治療方針ということでお聞きしました」

「そのことについてだけれど」

「はい」

「H先生からは、何故他の病院を紹介するのかという説明を聞きましたけれど、N事務長はそのことについて、どう考えていらっしゃいますか?」

「H先生からの説明と同じになるかもしれませんが、2つの要素があると思います。 まずは、セカンドオピニオンという観点で他の病院を紹介するということ。 第2にH先生の技術も間違いは無いけれど、この地域、この地方で再手術については第一人者といわれている医師を紹介するということが考えられます」

「そうね、H先生もそんなことを言っておられましたわ」

「その点については、Iさんに問題はありますか?」

「勿論、言っていることは理解できるけれど、この病院に通うようにはいきませんよね」

「それは、紹介する病院が遠いということですか?」

「ええ、足代も馬鹿になりませんし」

「足代ですか・・・」

以下 ●●Iさんの息子さんⅦ●● は149に続く


2011.5.29 日曜日

真実は闇の中 147

医療・介護のよもやま話 — admin @ 17:49:34

●●Iさんの息子さんⅤ●● 

受付職員に、IさんとIさんの息子さんの案内をお願いしたので、N事務長も用意を始めます。
今日は、今後の為にも話し合いを録音することにします。
勿論、Iさんの許可を得なければなりませんが、この録音の為のICレコーダーが会話を録音するだけでなく、話をする際に何らかの抑制機能を果たしてくれることがあります。
ICレコーダーの機能には、録音される人達の精神を安定させる機能があるのです。
無闇に感情を高ぶらせたり、精神が不安定になりがちな人には録音されているという事実がそうなることを抑制してくれることがあります。
Iさんもどちらかと言えば、感情が高ぶることが時々ありますから、今日は冷静に話して頂く為にもICレコーダーを用意させて頂くことにします。

ICレコーダーや、形ばかりですがノートや筆記具を用意していると、廊下を話ながら歩く人達の気配がします。
その気配は事務長室の隣で一旦消えてから、事務長室の隣の応接室のドアが開く音がしました。
IさんとIさんの息子さんが到着したようです。
暫くすると事務長室をノックする音が聞こえます。
「はい」 と返事をすると、静かにゆっくりと事務長室のドアが開き、受付職員が顔だけ出してN事務長に目配せをします。
普段からN事務長のお客様を事務長室の隣の応接室に案内した場合は、ドアを開けて目配せしてくれればいいと言ってあるので、今日も抜かりなくその指示を守ってくれました。
受付職員に軽く手を挙げて、了解と合図をしてから、スーツの上着を羽織ります。
胸ポケットに用意したICレコーダーを入れ、手にノートと筆記具を持ち、名刺入れが内ポケットに入っているかを確認してから事務長室を出ます。
隣の応接室のドアは閉まっていますが、中からは何やら話声が聞こえてきます。
お馴染みのIさんの少し甲高い声と、ゆっくりとした低い声が聞こえます。
どうやら、Iさんの息子さんは落ち着いた声色のようです。
顔はまだ見ていませんが、声色から判断すれば、冷静に話が出来るタイプのようです。

ドアをノックして、応接室のドアを開けると、応接室の3人掛けソファーに、IさんとIさんの息子さんが座っています。

「Iさん、こんにちは」

「こんにちは・・・N事務長、まずは私の息子を紹介します」

とIさんが言うと、息子さんは立ち上がって名刺入れを取り出して、挨拶を始めます。
「はじめまして、母がお世話になっております。 息子のIです」

N事務長も荷物を一旦ソファーに置いてから、Iさんの息子さんに正対して挨拶を返します。
「こちらこそ、本日はわざわざ御足労頂きまして、恐縮の次第です」

N事務長はそう言うと、名刺入れから名刺を抜き出してIさんの息子さんと名刺交換を始めます。
Iさんの息子さんから頂戴した名刺は、株式会社I商会 代表取締役と会社名と肩書が記されています。
Iさんが言っていたとおり、会社の大小は別にして、会社を経営されていることは確かのようです。
Iさんの第一印象は・・・
輩の類ではない。
普通に話は出来そう。 というところか・・・

Iさんの息子さん、年齢は40歳半ば・・・
服装は、ダークグレーのスーツ。 それ程高価な生地ではないけれど、好感が持てる程度の価格帯のイージーオーダーであるような気がします。
ネクタイも派手ではないけれど、安っぽいネクタイではありません。
シャツも綺麗にノリがかかっているところを見ると、クリーニングでしっかり仕上げがしてあるようです。
履いている靴も、綺麗に磨きあげられています。

身長は170cmくらい、太ってはいませんが痩せてもいない、中肉中背という言葉がぴったり当てはまる体型です。
髪の毛は短く切り揃えて、自然な形で横分けにしています。
まさに、中小企業の若社長という表現がぴったりです。

Iさんは、ソファーに座ったままですが、Iさんの息子さんは名刺交換の為に立ったままでしたから、N事務長はIさんの息子さんにソファーにお掛けになるように勧めます。
「どうぞ、お掛けになってください」

N事務長に促されるまま、Iさんの息子さんはIさんの隣に腰掛けました。
N事務長は、一旦置いた荷物を持ち上げてから、Iさんの息子さんではなく、Iさんの正面になる位置の一人掛けソファーに腰を下ろします。
「何度も足を運んで頂いて申し訳ありません」

「いえ、いいのよ」

「それでは、さっそくお話をさせて頂きたいのですが、今日の話し合いは録音させて頂いてもいいでしょうか?」

「録音?」

「はい、今後の為にもしっかりと記録を取った方がいいと思いまして、レコーダーを用意させて頂きました」

そう言ってN事務長は、スーツの胸ポケットから一目見た限りでは携帯電話にでも間違いそうな程コンパクトな形のICレコーダーを取り出しました。

「それで、話を録音するの?」

「ええ、許可さえ頂ければの話ですが・・・」

「いいんじゃないですか」

いきなり、Iさんの息子さんが話に割り込んできましたが、この発言から、Iさんの息子さんは話がきちんと出来る人だと、N事務長は確証が持てました・・・

以下 ●●Iさんの息子さんⅥ●● は148に続く


2011.5.28 土曜日

真実は闇の中 146

医療・介護のよもやま話 — admin @ 18:53:54

●●Iさんの息子さんⅣ●● 

病院としてはIさんに金銭的な補償は一切しないつもりであると、N事務長は院長に伝えますが・・・院長は、それでIさんが納得するのかと疑問をぶつけます。
しかし、院長の懸念にもかかわらず、N事務長はその考えを当たって砕けろの気持ちでIさん親子にぶつけるつもりであると院長に宣言します。
そんな宣言をN事務長からされれば・・・本当に当たって砕けてしまわないことだけを、院長は願わずにはいられません。

「じゃあ、N事務長はその考えで、Iさん親子に対応するのですね」

「ええそうです。 それが一番適切な対応だと考えています」

「どうしてそれが、一番適切な対応だとお考えになったのですか?」

「ここのところ何回かIさんと話をしましたけれど、Iさんの負の感情はGさんに向かっていて、今のところ・・・現段階ではですけれど・・・病院に対してはGさんに対するほどの悪い感情を抱いていないと感じたからです」

「それが、この対応をすると決めた理由ですか?」

「はい、なんだか直感というのか、この方法が一番いいような気がしました」

「N事務長の第六感ですね・・・」

「理由になっていない理由で申し訳ありません」

「いえ、当事者しか分からない空気感や距離感と言った感覚もありますし、そこは当院におけるリスクマネージメントの第一人者であるN事務長の皮膚感覚を信用するしかありません」

「でも・・・そんなに立派な代物じゃありませんし・・・単なる経験値です」

「経験に基づく感覚というのは、職人芸みたいなものですから、それは大切にしなければいけないでしょう。 そしてその感覚は決定における重要なファクターとなり得ます」

「はい、そう言って頂ければ、有り難い限りです」

こうなると、院長はIさんに対するN事務長の対応方法に対して心配しているのか、N事務長を信用しているのかよく分からなくなってきましたが、N事務長の対応方法については一応の理解は示しているようです。

「分かりましたが、くれぐれもその対応方法に固執せずに臨機応変に対応してください。金銭的な面でも、必要と思えばN事務長が判断して頂いて結構ですからね」

「有難うございます。 しかし、なるべくそうならないようにしたいと思っています」

「分かりました」

と、院長への報告と院長からの意見を頂戴して、N事務長は事務長室に戻ります。
事務長室に戻ってきたN事務長は、再度明日に向けて、今日までにIさんが再骨折したことについての経過やGさんの発言、Iさんの要望などの確認を始めます。
面談は出たところ勝負でも、それに対応する為には、念入りな事前準備が必要です。
Iさん親子との面談の前日は、事前準備で午後の仕事が終わってしまいました。

翌日、午前中は普段と同じ様にルーチンワークに精を出し、午後は早めに昼食を済ませて、Iさん親子との面談に備えます。
昨日、まとめたIさんに関する資料を見直し、今日の面談のシュミレーションを頭の中で繰り返します。
口では出たところ勝負だとか、当たって砕けろなどとカッコイイことを言っていますが、事前の準備に余念はありません。
いろんなパターンでシュミレーションを繰り返しているうちに、時間はどんどん経過します。
あっという間に、時計の針はIさんと約束をした16:00になろうとしています。

時計を見て、もうそろそろだとN事務長が思っていると、机の上の内線電話が鳴り始めます。
多分、Iさん親子の来院を伝える受付からの連絡でしょう。

「はい、Nです」

「受付ですが、Iさんがお見えになりました」

「分かりました。 事務長室の隣の応接室まで、ご案内お願い出来ますか?」

「かしこまりました」

「それと・・・Iさんだけじゃないよね?」

「ええ、40代の男性の方もご一緒です」

「どんな方?」

「普通のサラリーマンのような方です」

「そうですか・・・じゃあ、ご案内お願いします」

「はい」

Iさんの息子さんは、受付の職員の見た目では普通のサラリーマンのようだということですが・・・今日の面談のキーマンであるIさんの息子さんは、果たしてどんな人なのでしょう?

以下 ●●Iさんの息子さんⅤ●● は147に続く


2011.5.27 金曜日

真実は闇の中 145

医療・介護のよもやま話 — admin @ 14:41:50

●●Iさんの息子さんⅢ●●

IさんとIさんの息子さんとの話し合いを明日に控えたN事務長は、病院としての対応を院長に確認していますが、これから院長に伝えることが、N事務長の考えている病院としての対応の重要な点のようです。

「じゃあ、聞きましょう」

「はい」

「IさんやIさんの息子さんの気持ちとしては、病院の誠意ということでは・・・やはり金銭、治療費のことになるのじゃないのかね?」

「はい、多分、そうなると思いますし、病院として非を認めてしまえば、治療費を請求しないのが普通だと思います」

「どうするつもりかね?」

「Iさんの息子さんがどんな方かも分かりませんし、後ろにどんな組織やどんな人が付いていて、良からぬ入れ知恵をするかもしれませんので、治療費については、病院として対応しないことにします」

「そんなことで、納得しますか?」

「しないかもしれませんが、して頂きます」

「大丈夫かな?」

「大丈夫じゃないかもしれません」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「もしものことがあったら、骨を拾って頂けますか?」

「ええ、骨ぐらい拾わせて頂きますけれど・・・」

「そんなことにはならないと思いますが、病院として金銭的な負担は超音波骨癒合促進機器以外はしないことにします」

「そうですか・・・その根拠を教えてくれるかね?」

「まず、時系列にも、IさんやGさんの発言から考えても、Iさんの再骨折にGさんが絡んでいることは、ほぼ間違いありません」

「そうでしたね」

「しかし、再骨折したと思われる時点で診察等をしていませんから、断定や特定は出来ません」

「そのようですね」

「従って、病院としてはIさんに出来る限りのことはしますが、金銭については補償しないという方針を取ります」

「本当に大丈夫かね?」

「出たとこ勝負の感は拭えませんが、その方向で進めていこうと思います。 それに、自己負担分だけを病院で負担するというのも変な話です。 自己負担分を補償するなら、慰謝料もということになりませんか?」

「まあねえ、最近は保険者もうるさいですし・・・病院での事故であれば、保険請求するなと言ってこられれば、そちらの言い分が正しいですしね。 慰謝料についてもそう、一度非を認めたら骨の髄までしゃぶられないとも限りません・・・」

「最近の患者さんは、保険請求の仕組みなんかもよく勉強されていて、そんなところをついてきて病院をちくちく責める事例も出てきたと、病院協会の事務長会議で報告がありましたし、院長の仰る通りで、自己負担分だけでも病院が支払うということは、病院に非があると認めてしまうことにもなります」

「そうですか・・・じゃあ、超音波骨癒合促進機器の取扱いはどうするのかね?」

「当院は施設基準の申請もしていませんから、どちらにしても全額自己負担になります。 当然保険請求は出来ませんし、していません。 これについては、H先生が治験的な要素も含めて無料で貸出しただけというスタンスでいきます」

「なるほど」

「そして、当院での外来治療費、これから他院で掛かるリオペに伴う入院費などについては、Gさんと話し合いをするようにお伝えします」

「Gさんにですか?」

「ええ、GさんがIさんに 『責任を取る』 と言ったことは事実ですし、言ったことをGさんも認めていますから、そうして頂きたいと思っています」

「Gさんに払えますかね?」

「払えようが払えまいが、払うも払わないも・・・まずはGさんを交渉のテーブルに乗せることが重要で、それが病院として出来るIさんに対する誠意の一つであることをお伝えしようと思っています」

「上手くいくことを祈っていますが、本当にそれで納得されるかなあ・・・」

「当たって砕けろの心境です」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

以下 ●●Iさんの息子さんⅣ●● は146に続く


2011.5.26 木曜日

真実は闇の中 144

医療・介護のよもやま話 — admin @ 21:11:31

●●Iさんの息子さんⅡ●● 

翌日にIさんと息子さんとの話し合いを控えて、N事務長は院長に今後の病院の方針を確認しに行くことにしました。
Iさんも、息子さんも病院に言いたいことは山ほどあるでしょうが、そこはぐっと堪えて頂いて、是非とも大人の対応をお願いしたいところです。
何が大人の対応かは、それぞれの判断にお任せすることになりますが、何卒、無茶な要求は控えて頂きたいものです。
もしもN事務長のささやかな願いを適えて頂けるのならば、どうか治療費のことで揉めないで頂きたいと思っていますが、それが一番難しい注文かもしれません・・・

そろそろ、院長と約束をした時間が近づいてきたので、Iさんの治療費をまとめた書類を手に院長室に向かいます。
院長室のドアは開けたままになっていて、N事務長の来訪を待ち兼ねているかのようです。

「院長、Nですが宜しいですか?」
開いたドアの前に立って、院長に声を掛けます。

「ああ、お待ちしていました。 どうぞ中へ入って、お座りになってください」

院長はまだ事務机で何やら書類を確認していますが、N事務長はその机の前にある応接セットのソファーに腰掛けます。
「院長、仕事中でしたら時間をずらしましょうか?」

「いえ、大丈夫です。 もう終了します」

「そうですか・・・」

そんな会話をした直後に院長も事務椅子から立ち上がり、応接セットに移りました。

「お待たせしました」

「いいえ、こちらこそ早く来すぎましたかもしれません」

「そんなことはさて置き、明日のIさんとの話し合いのことでしたね」

「ええ、そうなんです」

「それで、N事務長はどんな風に考えているのですか?」

「病院としての考えは一任して頂いていますが、一応、院長に確認をして頂きたくて参りました」

「そうですか・・・それで、どうするの?」

「院長もご存知のとおり、リオペという方向で決まりそうですが・・・問題は・・・リオペとなると治療費も馬鹿になりません」

「それはそうだね、入院費も掛かるしねえ」

「はい、そしてIさんの負担は重くなっていくばかりです」

「ちなみに、今のIさんの外来の治療費はどうしているの?」

「普通に頂戴しています」

「ああ、そうでしたか・・・」

「その明細がこちらになります」

そう言って、N事務長は用意してきた資料を院長に手渡します。
資料を受け取った院長は、資料にざっと目を通してからN事務長に向き直り、また話始めます。

「予想以上の金額になっていますねえ」

「そうなんです。 塵も積もれば山となるといったところでしょうか・・・」

「そのようですねえ」

「それで、この治療費について、Iさんは何も言ってないのかね?」

「ええ、敢えて私も触れませんでしたが、Iさんも現時点では何も言ってきていません」

「へえ、そうなんですか」

「ただし・・・」

「何でしょうか?」

「こちらに関しては、病院で払っていますので、院長の決済を頂きたいと思います」

N事務長はそう言って、もう一枚用意していた書類を手渡します。

「ああ、H先生の言っていた超音波骨癒合促進機器の請求書ですね」

「そうです」

「これについては、保険請求も出来ないのでしたか?」

「はい、そのとおりです」

「分かりました。 これについては病院で負担するということで、決済します」
院長はそう言うと、決済欄にボールペンでサインをします。

「有難うございます」

「それで、その他のことについては?」

「そうです、ここからが確認事項です・・・」

以下 ●●Iさんの息子さんⅢ●● は145に続く


2011.5.25 水曜日

真実は闇の中 143

医療・介護のよもやま話 — admin @ 17:39:10

●●Iさんの息子さん●● 

以前から、市内にIさんの息子さんが住んでいるとは聞いていましたが、お会いするのは初めてです。
看護部にもIさんに息子さんのことを聞いてみましたが、Iさんの入院中によくお見舞いに来ていたのは息子さんの奥さんで、息子さんは来ていたかもしれないけれど、回数も少なかったようで、看護師達の記憶にないということです。
けれど・・・記憶に無いというのも、今回のような場合は良し悪しです。

病院内での揉め事と言えば、強面の方々が思い出されがちですが、強面の方々に次いで揉め事が多いのは先生と呼ばれるような方々。
そして、どちらかと言えば、一般的に世間で高い立場にいる人達も、よく揉め事を起こします。
勿論、病院サイドと患者さまのどちらに非があるかと言えば、病院サイドの場合が多いのは事実ですが、その仲裁をするN事務長にしてみれば、何もそこまで揉めなくてもいいのにというような思いがあることも確かです。

Iさんの息子さんは自営業者ということですが、Iさん曰く、日々忙しくしているということです。
となれば稼いでいる、つまり、世間で言う高い立場に近い位置にいる人であることが推測出来ます。
例えそうであっても、N事務長の意見を、冷静に理解して頂ける人であることを願うばかりです。

Iさんから連絡を受けた週は、あっという間に過ぎ去りました。
週が明けて、明日の午後16:00にはIさんとIさんの息子さんとの話し合いをしなければいけない月曜日の午後、Iさんと息子さんに会う前に、N事務長の考えを院長にも報告しておくべきだと思い、院長に連絡を入れました。
内線電話で院長室を呼び出すと・・・

「院長、Nです」

「どうされましたか?」

「明日、IさんとIさんの息子さんに会うことになっています」

「ああ、あのリオペのIさんのことだね?」

「そうです」

「リオペのことや現在の状態については、H先生から話を聞いています」

「そうですか」

「リオペは、△△病院のB先生にお願いするようですね」

「そうですか、他院とは聞いていましたが、病院も先生も決まりましたか」

「今日の午後・・・これからB先生を訪ねて、直接写真を見て貰って、お願いをしに行くと言っていました」

「決定はまだ、これからということですか」

「いや、電話での承諾を得ているようですよ」

「今日は、仁義を通す為に、直接出向くということですね」

「そういうことです」

「H先生も仁義を通す為に汗をかいていらっしゃるのですから、私も院長に確認を取りたいことがありますし、これから院長室にお伺いさせて頂いてもよろしいですか?」

「構いませんが、今からですか?」

「ええ、院長さえ宜しければ今すぐお伺いします」

「そうですか、じゃあ、30分後で構いませんか?」

「分かりました、30分後にお伺いさせて頂きます」

「お願いします」

院長との面会の時間も押さえたので、後はIさんについての資料の準備をします。
まずは、これまでに○×病院でIさんが支払った金額をまとめた資料と病院が支払いをする超音波骨癒合促進機器の請求書を用意します。
病院が支払う金額は大したことはありませんが、ついでに院長決裁印を貰うことにします。
資料を整理して気がついたことと言えば・・・
1回目の手術に関する入院を除いたIさんの自己負担額は、意外なことに、塵も積もれば山となっています。
考えていた以上に、金銭的にも、Iさんに負担が掛かっています。
そうは言っても、全てのお金を病院が支払うのは可笑しな話です。
院長にも伝えるつもりですが、このIさんの自己負担額は、このままIさん自身に支払って貰うつもりです。
また、その支払った自己負担額を、Iさんに対して 『責任を取る』 と言ったGさんに支払わせるかは、Iさんに任せようと思っています。
そしてIさんとGさんの話し合いには、一切口を挟まないということも院長に伝えるつもりです。
勿論、Iさんが望めば、2人の話し合いに立ち会いはするつもりですが、それ以上のことをするつもりはありませんし、Gさんが○×病院を辞めた今となっては、当然のことですが、Gさんの味方をするつもりは全くありません。

以下 ●●Iさんの息子さんⅡ●● は144に続く


2011.5.24 火曜日

真実は闇の中 142

医療・介護のよもやま話 — admin @ 18:22:06

●●Iさんからの連絡●● 

H先生から再手術を勧められた診察の後、その足でN事務長を訪ねたIさんは、家に帰って家族と再手術をするかどうかを相談すること、再手術を含めた治療費について病院がどう考えているのかを息子と一緒に聞きたいと言い残して帰っていきました。
その息子さんの予定を確認してから、N事務長に連絡するということでしたが・・・

翌日の午後、早速Iさんから電話が入りました。
「N事務長、昨日はお邪魔さまでした。突然お邪魔したから、本当にN事務長にとって私はお邪魔虫よね」

「そんなことは、決してありません」

「そうなの? 本当かしら・・・」

「ええ、本当に本当です」

「それならばいいけれど・・・」

「今日のお電話は、昨日の話であった、Iさんの息子さんの都合のことですよね?」

「そうそう、その件よ」

「どうでしたか? 忙しくてお会い出来ないとか?」
ちょっと、希望的な発言をそれとなくしてみましたが・・・

「あら、そんなことはありません」

「そうですよね・・・」

「時間が無くて会えない方がよかったかしら?」

「いえ、そんなことは・・・」

「そうよね、息子も、N事務長にお会いして話が聞きたいと以前から言ってましたから」

「そ、そうなんですか?」

「勿論よ、聞きたいことが山ほどあるって言っていましたわ」

「そうですか・・・」

「どうされたの? 声が沈んでいるように聞こえますけれど」

Iさんの息子さんは、N事務長と会う気満々、N事務長に聞きたいことが頭の中に満ち満ちて、うずうずしている様子がIさんの言葉からも伝わってきます。
「い、いえ、そんなことはありません。 それで、何時がよろしいのでしょうか?」

「曜日で言うと、火曜日か水曜日がいいと言うことです」

「お時間はどうですか?」

「息子は自営業者ですので、時間は比較的自由になりますけれど、出来れば午後遅い時間がいいようです」

「午後遅い時間がいいというのは、夕方に近い方がいいのですか?」

「そうです、そんなことを言っていました」

「それでは、来週の火曜日の午後4時は如何ですか?」

「曜日も、時間も問題ないと思います」

「それでは、来週お待ちしております」

「火曜日の16時にお伺いさせて頂きます」

「はい、病院の受付に伝えておきますから、受付でお名前を言ってください」

「そうさせて頂きます」

「それでは、来週の火曜日に」

「それまでに、病院の考えをまとめておいて頂戴」

「は、はい・・・」

Iさんと、Iさんの息子さんとの話し合いの日が決まりました。
来週の火曜日です。
何とかして、病院の考えを2人に理解して頂かなければなりません。

以下 ●●Iさんの息子さん●● は143に続く


2011.5.23 月曜日

真実は闇の中 141

医療・介護のよもやま話 — admin @ 19:51:03

●●Iさんの反応Ⅴ●● 

他の病院で再手術することをH先生から勧められたIさんは、N事務長に 『問題はここからなのよ』 と言いますが、それに対してN事務長は 『何でしょうか?』 と惚けます・・・更にIさんは、N事務長に対して 『もう、分かっているでしょ』 と返すのですが・・・
狐と狸の化かし合いのようですが、これも儀礼的な掛け合いです。
儀礼的なやりとりが終わり次第、お互いに気持ちの整理も着き、本来話し合うべき話題に変わっていくのでしょう。

「もう、N事務長、分かっているでしょ?」

「何ですかIさん、はっきり言ってください」

「はっきり言わなくても。、分かるでしょ?」

「大体の予想はつきますけれど・・・」

「その大体の予想でいいから、言って頂戴』

「Gさんのことですね」
ここは敢えて、治療費と直接言わずに、Iさんの一番嫌いなGさんの名前を出すことにします。

「Gさん? まあ、最終的にはそうなるけれど・・・その前に確認したいことがあるのよ」

「何でしょうか?」

「何でしょうか、じゃなくて、私が確認したいことと言えば分かるでしょ?」

「もう腹の探り合いは止めましょう。 はっきり言ってください」

「そう、じゃあ、言わせて貰うわ」

「どうぞ、仰ってください」

「私が他の病院で再手術をした場合は、その手術代を含めて治療費はどうなるのかしら?」

「ああ、そのことでしたか」
少し、焦らす為にそっけなく対応してみます。

「そのこと以外にN事務長に何の相談があるの?」

「それ以外でも、何でも相談に乗りますけれど・・・」

「N事務長が相談にのるつもりでも、私にその気はありません」

「そうですか・・・それは残念です」

「それで、どうなのよ?」

「どうとは?」

「はっきりして頂戴。 病院としては私の今後の治療費についてどう考えているのかしら?」

「はい」

「はいじゃなくて、どうなの?」

「現段階では、骨折の超音波骨癒合促進機器の代金は病院で持たせて頂いております」

「そんなことは分かっているわ。 でも効果は無かったけれどね」

「確かに・・・」

「それ以外の診察代や薬代は、私が普通に払っています」

「ええ、そうでした」

「そうでしたではなくて、どうするつもりなの?」

「そんなに高い金額にはなっていませんよね?」

「自己負担分だけだったら、大したことないわ」

「今後のことも含めて、どうするかはこれから考えさせてください」

「これから考えるの?」

「ええ、私はIさんの骨折は治ると思っていましたし、祈っていましたから・・・」

「まあね・・・それが一番良かったけれど・・・」

「はい、残念でしょうがありません」

「どちらにしても、再手術については息子とも相談してみるわ」

「そうしてください」

「今度、息子も連れて来ますから、今後について病院の考えを聞かせて頂戴」

「息子さんと一緒にですか?」

「ええ」

「わ、分かりました」

「じゃあ、息子の都合を聞いて電話させて貰うから、宜しくね」

「はい・・・ご連絡お待ちしています」

以下 ●●Iさんからの連絡●● は142に続く


2011.5.22 日曜日

真実は闇の中 140

医療・介護のよもやま話 — admin @ 13:32:31

●●Iさんの反応Ⅳ●● 

H先生との電話中に、IさんがN事務長を訪ねてきました。
Iさんを案内してきた総務の女性事務員に、Iさんを応接室に通すように言った後、H先生との電話に戻ったN事務長は、H先生からIさんの今後の治療方針を確認してから、応接室に向かいます。
応接室を外からちらりと見やると、Iさんは来客用3人掛けソファーの真ん中にくつろいだ様子でデンと座っています。
H先生に再手術に関しては、家族と相談してから返事をすると言ったそうですが、座っている様子は、もう再手術を受けることについては決心したかのように見受けられます。
その決心の上、N事務長に何やら確認に来たものと思えてしょうがありません。
IさんがN事務長に確認することといえば・・・多分、治療費のことでしょう。

「Iさん、お待たせしました」

「あら、もういいの?」

「ええ、電話だけでしたから」

「突然お伺いして、お邪魔じゃなかったかしら?」

「いえ、大丈夫です」

「そうよね、N事務長のことだから、今日私が診察に来ることくらい知っていたでしょ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「それに、今日はH先生から今後の治療についての話があったのですけれど、それだって当然知っていますよね?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「もしかして、さっきの電話もH先生じゃなくて?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「あら、ダンマリのところを見ると・・・図星だったかしら?」

このIさんの推測には恐れ入ります。
やっぱり、Iさんは一筋縄ではいきません。

「そ、そんなことは、あ、ありません」

「慌ててどうしたの? そんなに噛んで!」

「は、はい・・・」

「まあ、そんなことはどうでもいいの」

「はい・・・それで、お話は?」

「そうそう、話はね・・・もう知っていると思うけれど、私のこの腕・・・このままじゃ治らないみたいなの」

「えっ、そうなんですか?」
しらじらしく、初めて聞いたような演技をするN事務長に対して、Iさんが駄目だしをします。

「N事務長、もうそんな演技はしなくてもいいですよ、H先生からそのことを聞いていないはずがないですし、逆に聞いていない方が私にとっては不都合です」

「そ、そうでした・・・仰る通りです」

「そうでしょ・・・まあいいわ、話を続けましょう」

「はい」

「それでね、ご存知とは思うけれど、今日H先生から再手術を勧められたの」

「そうですか・・・」
知っているのに、そうですかは可笑しな返事です・・・でも今はこんな返事しか思いつきません。

「それでね、再手術はこの病院でH先生がするのではなくて、別の病院を紹介するって言われたの」

「はい・・・」

「どうして他の病院で再手術をするのかと聞いたら、失敗が許されないからですって」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「それで、問題はここからなのよ」

「何でしょうか?」

「もう、分かっているでしょ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

以下 ●●Iさんの反応Ⅴ●● は141に続く


次のページ »