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医療・介護のよもやま話

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2011.7.2 土曜日

真実は闇の中 176

医療・介護のよもやま話 — admin @ 18:38:04

●●Iさんの決断●● 

Gさんの訃報を聞いたIさんは、Iさんの息子さんがそうだったように、最初はN事務長の悪い冗談だと思ったのですが・・・そんな冗談をN事務長がつくはずもないと思い直したようです。
思いのほか、Iさんは冷静にGさんの死を受け止めたようですが、その心中や如何に・・・

「嫌な話をしてすみません」

「そんなことN事務長が謝ってもしょうがありませんわ」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「でも、どうしてこんなことになってしまったのかしら」

「本当にそう思います」

「これで、Gさんが自分のしたことについて非を認めて、謝罪することも出来なくなってしまいましたわ」

「ええ・・・」

「もう、N事務長は気付いているかもしれないけれど、私もGさんから一言 『すみません』 という言葉が聞けたら考え直そうと思っていたのよ」

「そうでしたか・・・」

「いつまでも、Gさんと責任の所在について揉めてもいてもしょうがないし、気持ちよく再手術をして今までと同じ生活とまではいかなくても、固定具のない生活ぐらいは出来るようになって、今後の生活を楽しんだ方がいいと思うようになっていたのよ」

「はい・・・私がこんなことを言っていいのかは分かりませんけれど、確かにその方が建設的な考え方だと思います」

「だから、今度息子とGさんが話をする時に、Gさんが謝ったらもう面倒だから全てを水に流して終わりにして、もし謝らなければ再手術にかかる費用負担だけ請求して、それをGさんが払おうが払うまいが、もう全て終わりにしようと思っていたのよ」

「なるほど・・・でも、その本人が居なくなってしまったのですから・・・今後はどうしていきますか?」

「このことは息子も知っているのかしら?」

「ええ、大まかには話をしました」

「そう、それでなんて言っていました?」

「最初は驚かれていましたが、後の判断はお母様に任せるというような意見でした」

「勿論、私の問題だし・・・私のいいようにしてくれということなんでしょう」

「そのように私も受け止めています」

「分かったわ、Gさんの家族に責任を取れと言うのも気が引けるし、もう僅かなお金のことで揉めるのにも疲れたから、この辺で終わりにするわ」

「いいのですか?」

「ええ、Gさんへの香典のつもりで、もうGさんのご家族には請求しないし、話もしないわ」

「本当ですか?」

「その代わりに、N事務長は私の腕が治るまで面倒みて貰いますよ」

「え、ええ・・・」

まあ、ある程度のことはしょうがないでしょう。
入院中に何度かお見舞いに行って、転医先の病院の入退院時の送り迎え等・・・出来ることはそんなに多くはないでしょうが、その程度のことでIさんの気が収まるのならば、お安いご用です。

「なんだか、この病院で手術をして、リハビリ中に再骨折してから随分時間が経った気がするけれど、怒りをぶつける相手が居なくなってしまったら、どうしようもないわ」

「そうですね・・・そのことを証明するにしても、証明した後に責任を取らせるにしても、相手が居なくなってしまえば、なんのことやらさっぱり訳が分からなくて、私もどうしたらいいのか分かりません」

「もういいのよ、病院と揉める気はないし、これが私の運命だと割り切るしかないわ。 Gさんが亡くなったのも本人にしてみれば、もうこれで勘弁してくださいという意思表示と取れなくもないですしね」

「はい・・・」

「でも、こんな嘘みたいな話が本当にあるのね」

「私もそう思いました」

「死人に口無しと言うのか、最後の最後まで真実は私とGさんしか知らなかったし、分からなかったけれど・・・今となっては、これが本当のことと私が言っても、私だけの意見では証明することも出来ないし・・・Gさんが居なくなってしまったら・・・Gさんの死とともに真実は闇の中に葬り去られてしまったということかもしれないわね・・・」

「・・・真実は闇の中・・・ですね・・・」

=完=


2011.7.1 金曜日

真実は闇の中 175

医療・介護のよもやま話 — admin @ 17:59:07

●●報告Ⅶ●● 

普段ならば絶対にしないけれど、今日はIさんより先に応接室に入ってIさんが来るのを待つことにします。
事務長室から隣の応接室に移動して、部屋の照明や空調を入れます。
来客用の3人掛けソファーの上に落ちていた小さな糸くずをゴミ箱に捨てているとドアをノックする音が聞こえます。

「どうぞ」
とN事務長が答えると同時にドアが開いて、外来師長に連れられたIさんが腕を固定したまま姿を現します。
「こんにちは、1週間ぶりですね」

「そうね、時間はあっという間に過ぎていくわ」

「立ち話もなんですから、まずはお掛け下さい」
そういいながら、来客用のソファーに腰掛けるように促すと、付添の外来師長がIさんに話しかけます。

「Iさん、じゃあ私は戻りますね。 再手術上手くいくことを願っています。 手術が終わって落ち着いたらまた顔見せてね」

「ええ、今日までお世話になりました。 腕が完治するように頑張ってきます」

外来師長は 「じゃあ、頑張ってね」 と言いながら、Iさんの肩にそっと手を触れ、その後Iさんの元を離れると、Iさんから見えない様にN事務長にウィンクをしつつ 「失礼します」 と言い、応接室を出て行きました。

「N事務長、今日の話は何かしら? 転医先の事前の外来診察の時間の打合せはしましたし・・・送迎の手配も外来師長にして頂いたし・・・」

「Gさんのことです」

「Gさんね、そう言えば、息子と一緒に会うと言ったきり連絡がありませんけれど、連絡はついたの?」

「そのことなんですが・・・」

「もしかして連絡がつかないの?」

「結果的にはそうなるかもしれません」

「結果的には・・・そうなる?・・・一体どういうこと?」

「実は・・・Gさん、亡くなられまして・・・」

「亡くなった? 何を冗談を言ってるの? 彼まだ20代でピンピンしてるじゃない」

「そうですよね・・・普通はそう思いますよね・・・」

「どういうこと? Gさんと連絡が取れないから、N事務長が考えた冗談や嘘じゃないの?」

「もしそうであれば、その方が良かったかもしれません」

「・・・と言うことは、本当なの?」

「残念ですが、本当です」

「ど・・・どうして、そんなことになっているの?」

「先日、Gさんのご実家にお線香をあげに行ってまいりました」

「お線香・・・もう、そんなことになっているの・・・」

「ええ、私が知った時には、既に荼毘に付された後で、当然のことながらお通夜もお葬式も終わっていました」

「そ、そうなの・・・それで、何故? そんなことになったの?」

「Gさんのご両親にお聞きしたところでは、朝起きて来なくて、起こしに行ったら既に息をしていなかったということでした」

「寝ている間に・・・突然死ということ?」

「ええ、一応そんなことになっているようです」

「突然死か・・・そんなこともあるんだ・・・」

「驚かれるのも当然です。 私も悪い冗談かもしれないと思って、半信半疑でご自宅にお伺いしました」

「そうよね、誰だってそう思うわよね・・・」

「はい」

「なんだか、どうしたらいいのかしらね」

「え、ええ・・・」

以下 ●●Iさんの決断●● は176に続く