真実は闇の中 163
●●Gさんの仏前●●
昨日は何が何やら分からないまま1日が終わりました。
Gさんに連絡が取れないので、Gさんの保証人であったお父さんが住んでいるGさんの実家に電話を入れると、その受話口からGさんの訃報が飛び込んできました。
その訃報をN事務長に伝えたのはGさんのお母さんでしたが、まさかGさんを逃がす為にそんな不謹慎な嘘を言うことは考えられません。
それ以前に今日の午後、Gさんの仏前にお線香をあげに伺うことを了承してくれたことから、嘘をついていることはまずありえません。
そう言えば、昨日は電話だったこともあり、Gさんの死因などは聞けませんでした。
病気・・・それも退職までは元気だったから突然の病気? 事故? まさか・・・自殺?
何はともあれ、今日Gさんの実家に伺えば、N事務長が知りたいこと、知っておかなければいけない全てのことが判明するでしょう。
昨日、N事務長はGさんのお母さんからGさんの訃報を聞いてから、確認や報告に始終しました。
確認は、○×病院の職員の誰かがGさんの訃報を知っているかということです。
報告は、GさんとIさんの問題に関係している院長、H先生、看護部長にGさんのことを報告することです。
確認については、Gさんの職場であったリハビリ科を中心に行いました。
リハビリ科の責任者であるAさんに電話を掛けると・・・
「Aさん、Nですけれど」
「お疲れ様です」
「その後どうですか?」
「ええ、新しく入職した人も慣れてきて一生懸命仕事に取り組んでくれていますから、その一生懸命さが患者さまに伝わるのか、前任者と比べたのか・・・評判はすこぶるいいです」
「それは何よりですが・・・」
「何でしょうか?」
「その前任者のことですけれど」
「はい、連絡はありませんし、以前にも言いましたように近隣の病院からも転職の話は聞いていません」
「そうですか・・・」
「他に何か?」
「何かGさんのこと、転職のこと以外で聞いていませんか?」
「いえ、全く何も聞いてませんけれど・・・」
「そうですか、それじゃあ結構です」
「何かあったのですか?」
「そうですね、何かあったと言えばありましたが・・・Aさんに関係ないと言えば関係ありませんし・・・」
「何ですか?」
「お聞きになります?」
「聞いていいのなら、お聞きしますけれど」
「Gさんの訃報を聞いてませんか?」
「Gさんのご家族の誰かが亡くなられたのですか?」
「いえ、ご家族じゃなくて、Gさん本人のです」
「ええっ・・・ど、どういうことですか?」
「リハビリ科のどなたか聞いていませんか?」
「ですから、な、何をですか?」
「Gさん、本人の訃報。 Gさんが亡くなったということをです」
「し、知りませんでした」
「どなたも、誰も聞いていませんか?」
「そんな話は出ていませんし、話題にもなっていません」
「そうでしたか・・・」
「それで、どうして亡くなったのですか?」
「そこまで聞いていませんけれど、明日お線香をあげに行ってきますから、その時にでも詳しいことは聞いてきます」
「そうでしたか・・・また、詳しいことが分かったら教えてください」
「そうします」
と、こんな調子でしたが、院長、H先生、看護部長への報告はもっとドライなものでした。
以下 ●●Gさんの仏前Ⅱ●● は164に続く