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医療・介護のよもやま話

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2011.6.20 月曜日

真実は闇の中 165

医療・介護のよもやま話 — admin @ 18:12:50

●●Gさんの仏前Ⅲ●● 

病院内でGさんの訃報に対する職員の反応を確認した後、Gさんの実家に向かいました。
それにしても、医療従事者は死というものに対して畏怖の念が無いのか、あまりにも身近にある所為で死という事実に対して不感症になっているように思えて仕方ありません。
他人の死に対しては、生物が生存を続けて行く為のエネルギーを作り出すことが出来なくなったとしか思えないのかもしれません。
そこには、悲しみとか、嘆きとか、寂しさとか、慈しみといった感情が無いようにも見えますが、実際は感情があってもそれを表に出さない様に知らぬ間に訓練されてしまったのかもしれませんし、それほど、他人の死というものが日常的な職業であり、日常の光景であることの裏返しなのかもしれません。

病院を出る前に、隣の市にあるGさんの実家の場所をインターネットの地図で確認しました。
電車などの公共交通機関で行くとなると、丁度いい場所に最寄りの駅が無く、電車とバスを併用することになって予想以上に時間が掛かりそうですが、車を使えば20分くらいで着く場所にあることが分かりました。
ということで、病院からGさんの実家まで、N事務長は車で向かうことにします。
インターネットの地図で確認したところ、Gさんの実家は住宅街に位置する為に車の駐車場が見つかるか心配でしたが、バスに乗って何処で降りるのかを悩んだり、降りてから地図を見ながらウロウロするよりはましでしょう。

Gさんの実家は、インターネット上の地図のとおり住宅街にありました。
上手い具合にGさんの実家から100m程離れた場所にコインパーキングも見つかり、そうそうに駐車場の心配をしなくても済みました。
Gさんの実家は、小じんまりとしており、狭い敷地の中に目一杯建物が建っています。
周囲の家も同時期に建てられたのか、大体同じ大きさで、似たような造りをしています。
コインパーキングに車を止めてから、御仏前だけを背広の胸ポケットにしまい、徒歩でGさんの実家に向かいます。

Gさんの実家の玄関の前に着きましたが、黒枠で囲んで忌中と書いた張り紙も見あたりませんし、お線香の香りが漂っているようなこともありません。
前を通っただけでは、普段の生活と何ら変わることの無い平凡な住宅街の一角の光景です。
往来に人の気配はありませんが、昼時で住宅街ですから余計に人通りが少ないのかもしれません。

門など無く、道路と敷地の境界が判明せずに、道路からいきなり玄関となるGさんの実家のドアの柱に後から取り付けたのか、色が微妙に柱と違うインターホンのブザーを鳴らします。
ブザーを鳴らすとすぐにインターホンの受話口兼送話口から、N事務長を待っていたかのように 「はい」 という女性の声で返事が返ってきました。

「昨日、お電話させて頂きました、○×病院のNです」

「どうぞお入りください」

と言われたので、勝手にサッシで出来た引き戸をガラガラと開けると、小さな玄関にGさんのお母さんらしい年配の女性が佇んでいます。
家の中は想像以上に狭く、玄関を上がるとすぐに2階へと伸びる幅が狭くて急な階段が行く手を阻みます。
玄関を入ってすぐ左手に格子状の木にガラスが嵌っている引き戸があり、その奥からお線香の匂いが漂ってきますから、その部屋にGさんの遺骨が安置されているのでしょう。
よくよく考えれば、初七日も終わっていませんから、お線香を絶やさないようにしているのでしょう。

「失礼します」

「どうぞ狭いところですが、お上がり下さい」

「はい」
と言い、靴を脱いで玄関に上がります。

「どうぞこちらへ」 
とその女性の右腕が指し示したのは、やはり玄関を入ってすぐ左手にある引き戸の奥の部屋でした。
その右腕が誘導した引き戸の奥の部屋に 「お邪魔します」 と言ってから足を踏み入れると、引き戸の奥には真ん中で襖で仕切られた畳の6畳間が2部屋続いています。
襖は開いたままになっていて、奥の畳の和室は無理やり洋室使いをしているのが分かりました。
奥の部屋は、畳の上に部屋のサイズに合っていないカーペットを敷いているので、カーペットの端から畳の黒い淵がはみ出ています。
そのカーペットの上に2人掛けのソファーが無理やり置いてあって、そこには案内してくれた女性と同世代の男性の姿があります。
Gさんのお父さんでしょうか?
そして、そのソファーの向かいには、部屋のサイズに合っていない大きなサイズのTVがあって、その横に無理やり場所を作ったかのように白い布で覆われた小さい台が置いてあり、その上にGさんの写真と位牌、遺骨が置かれており、その前ではお線香が煙を上げています。

「初めまして、○×病院の事務長のNです。 この度はご愁傷さまでございます」
と定石通り語尾をムニャムニャとさせて、ソファーに座ったままの年配の男性に挨拶をします。

「どうもはじめまして・・・」

と言ったきり男性はN事務長から視線をそらします。
N事務長の後から付いてきた女性が、その男性の態度に気を使ったかのようにN事務長に話始めます。

「すみません、突然のことだったから・・・私達もどうしたらいいのか分からなくてね・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

なんだか微妙な空気が漂っています。

以下 ●●Gさんの仏前Ⅳ●● は166に続く


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