真実は闇の中 171
●●報告Ⅲ●●
Gさんの実家を訪問したことを院長には報告しましたが、問題はこれからです。
一番の問題はGさんの死をIさんがどのように受け止めるかです。
Iさんに直接伝えた場合にIさんがどんな反応をするかは全く想像出来ません。
何となくではあるけれど・・・あくまで想像ですけれど、驚きつつも冷静に対応してくれるであろうIさんの息子さんに連絡をする方が現段階では正解のように感じたので、まずはIさんの息子さんに連絡をしました。
しかしIさんの息子さんは、N事務長からの電話の内容は、当然、昨日自分がお願いしたGさんとの面談日の連絡だと思っています・・・
「今、お時間宜しいですか?」
「ええ、早速Gさんとの面談の件ですね」
「え、ええ・・・」
「Gさんの様子はどうでしたか? 逃げ出したりしていませんでしたか?」
「逃げてはいませんでしたが・・・」
「いませんでしたが・・・とはどういう意味ですか? まさか連絡が取れなかったとか・・・でも、連絡がついていなければ私に電話してきませんよね」
「そうですねえ・・・」
「何ですか? その歯切れの悪さは?」
「実は・・・」
「実は?」
「Gさん本人にはお会いできませんでしたが、ご両親にお会いしてきました」
「Gさんのご両親に会ってどうするんですか? まさかGさんの代わりに親が話し合いに来るとかという面倒な展開じゃないでしょうね」
「ええ、今の段階ではそんなことにはなっていません」
「???、一体どういうことなのですか?」
「実は・・・Gさんは亡くなられていました」
「Gさんが、何を失くしたのですか?」
「いえ、Gさんが何かを失くしたのではなくて、Gさんが亡くなられていました」
「はあ? N事務長の言っていることが分からないです・・・」
「はい、Iさんが驚かれるのは理解出来ます・・・私も驚きましたけれど、Gさんに連絡をしたところ全然連絡が取れ無くて、それで勤務している頃の保証人であったご両親のところへ連絡をしたら、Gさんが突然亡くなられたということが判りまして・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「もしもし?」
「聞いています」
「すみません・・・」
「それは、Gさんが我々やN事務長から逃げようとして親を巻き込んで、一芝居・・・演技をしているとかではありませんか?」
「Iさんが疑る気持ちは理解出来ます。 私も電話で話を聞いた時は、まさかとか・・・冗談でしょうと思いましたが・・・今日の午後にGさんのご実家をお伺いしてきました」
「で、どうでしたか?」
「仏様になっておられました」
「そ、そうなんだ・・・」
「まさか、演技するにしても位牌や遺影、骨壷まで用意しないでしょうし、本当のことだと納得せざるを得ませんでした」
「そうですね・・・」
「突然のことで驚かれていると思いますが、嘘のような本当の話です」
「で、どうして? 死因は?」
「解剖まではしていないということですけれど、朝、起きて来なくて、どうやら寝ている間にお布団の中で息を引き取られたようです。所謂、突然死というものです」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
以下 ●●報告Ⅳ●● は172に続く