職業は?Ⅱ-⑫
●●医療相談室室長補佐Dさんの電話●●
T君の報告を看護師との雑談の合間に軽く受け流したN事務長。
T君の心配を余所に、事務室に戻ってからも別の仕事に没頭しています。
心配性のT君は、N事務長の様子をそーっと伺いに行きます。
そろりそろりと事務長室の中を覗くと・・・
「T君、何してるの?」
N事務長の≪人の気配感知アンテナ≫に捕えられたようです。
「えーっと・・・先ほどの件で・・・」
「先ほどの件?・・・あー、○×市民病院の何とか相談室の室長補佐の何とかさんの電話の件?」
「はい、何とかじゃなくて、医療相談室の室長補佐Dさんです」
「だって、いつ電話して来るか分からないんでしょ?それに話の内容も・・・」
「まあそうですが・・・少し話いいですか?」
「またしても、T君の話相手ですか?忙しいんだけれど・・・」
「そこを何とか・・・」
「全く心配性ですね。リスク管理上はその方がいいですが、そんなに心配していると胃に穴が開きますよ」
「胃に穴が開かない為にも、お話をしたいので・・・」
「しょうがないな、それじゃあ、T君の胃に穴が開かない為にお話聞きましょう」
「恐れ入ります」
「で、何でしょうか?」
「何やら嫌な予感がします」
「そう」
「そうって・・・そんな物ですか?」
「ええ・・・顔も知らない、話したことも無い、ましてや話の内容も分からないのに気を揉んでもしょうがないでしょ?」
「そ、そうですが・・・」
「以上!」
「えー!終了ですか?」
「まだ何か?」
「対策とか、今後の方針は・・・・」
「じゃあ、電話が掛かって来るのを待つ。以上!」
「それだけですか?」
「そう、それだけ。電話を掛けろって言われたわけじゃないでしょ?」
「はい・・・」
「しょうがないですね・・・じゃあ、担当のT君の意見でも伺います」
「は、はい。先方の病院で再吐血したと言われましたから・・・何か医療について文句付けて来るんじゃないかと思っています」
「さっきも言ったけれど、再吐血して患者さまが亡くなられた訳じゃないでしょ?」
「はい・・・」
「この病院で止血してから、1週間も経ってからの再吐血だよ・・・そんなの知らないよ・・・って誰でも言うでしょ!」
「まあ、そうですけれど・・・相手は室長補佐とか言うし・・・」
「室長補佐なんて、室長にも成れない肩書きだけ付いている人です」
「は、はい。そうですか?」
「そうなの! 補佐でしょ、あくまで補佐! それも仕事の補佐が出来ない補佐! 分かった?」
「ええ・・・なんとなく・・・」
「大体、電話掛かるの待ってろなんて言う人は仕事出来ない人です」
「・・・大丈夫ですか?」
「大丈夫!・・・もちろん仕事の出来ない人に限って、余分なことを考える時間はあるし、いらぬことを企んだりするけれど・・・」
「じゃあ、この件はN事務長にお任せしていいですか?」
「先方が事務長を指名したんだから、しょうがないです・・・T君の胃に穴が開いてもしょうがないし・・・」
「す、すみません。何かありましたら何でも言いつけてください」
「了解。さあ、これで気が済んだでしょう。仕事に戻ってください」
「はい。失礼します」
お昼ご飯が終わり、昼休みを利用した会議が終わり、午後の来客を1件こなすと・・・
事務長室の壁に掛かっている時計は午後3:30を示しています。
事務長室の電話が鳴り出します。
受話器を取ると・・・
「N事務長。○×市民病院の相談室?の師長?補佐・・・すみません、ややこしくて聞き直さなかったのですが、Dさんと言う方からお電話です」
「分かりました。繋いでください」
終に掛かってきました。○×市民病院、医療相談室、室長補佐Dさんからの電話です。
受付にまで、肩書き込みで取次を願い出たところを見ると、やる気満々のようです。
以下 ●●室長補佐Dさんからの電話の内容●● はⅡ-⑬に続く