行き場のない患者142
●●O弁護士Ⅲ●●
N事務長とO弁護士はお互いに腹の探り合い、ジャブの応酬を繰り返します。
そろそろ本題に入るのでしょうが、先陣を切るのはどちらでしょう?
「病院にとっては恐い弁護士であるO弁護士の来訪を受けたわけですので、ここは気を引き締めてお話をお伺いするとします」
「気を引き締める様な不都合なことでもあるんですか?」
そうきましたか・・・
「いえ、弁護士という職業の方にはこれまでも何度か嫌な思い出がありまして・・・あっ、申し訳ありません。一般論で、別にO弁護士のことじゃありません・・・」
「そうなんですよね、弁護士を法の番人ではなくて、法を扱う悪人と思っている方が多いんで、困ります」
「そうそう、その意見には同意出来ます。O弁護士が後者でないことを願っています」
「さあ、どうでしょうか・・・」
「要するに、O弁護士はどちらにでも成れるということですね?」
「ご想像にお任せします」
「じゃあ、勝手に想像しておきます」
「ハハハ、N事務長は中々、弁がたちますね」
「とんでもありません。言葉で勝負される弁護士の先生方には勝てません」
「そんなこともなさそうですが・・・」
「それは、買いかぶり過ぎです」
「N事務長は職業選択のミスをしたかもしれませんね」
「いえいえ、私には今の職業で十分満足しております」
「世が世なら、法廷で対峙していたりして・・・」
「弁護士資格を取れるほど賢くもありませんし、そんなに勉強も好きではありません」
「でも、資質は十二分にあるとみました。そこいらのヘナチョコ弁護士なんかより、よっぽど頼りになりそうです」
「まあそれは、自分でもそう思う時があります。弁護士費用や顧問料なんて無駄だなって・・・文章を書くことさえ嫌いじゃなければ、世の中の人達は皆、自分で訴訟すればいいんです」
「確かにそうですね・・・でも、それだと弁護士はますます食えなくなりますから困ります」
「裁判所に相談に行けば、結構丁寧にいろんなこと教えて頂けるし・・・」
「よくご存知で・・・経験あるんですか?」
「それは、言えません」
「秘密保持ですね?」
「まあそういうことです・・・ところで、そんなお出来になる弁護士のO弁護士が今日は時間を取って病院を訪問された目的はなんですか?」
「そろそろ本題といきますか」
「ええ、時間幾らで仕事をされる弁護士の先生に、あまり無駄話もなんでしょう」
「お電話でも、お話しましたとおり、Tさんの件です」
「Tさんが、どのようなご依頼をされたんですか?」
「現段階では依頼と言うのは正確な表現ではありません。相談ということにしてください」
「相談ですか?」
「ええ、お電話でお話しましたとおり、Tさんの親御さんとも懇意にしておりまして、その関係で相談に来たと思って頂いて結構です」
「じゃあ、正式な依頼を受けて契約を結んでいらっしゃるわけではないんですね」
「ええ、そう考えて頂いても結構です」
以下 ●●O弁護士Ⅳ●● は143に続く