行き場のない患者146
●●O弁護士Ⅶ●●
出し惜しみではないけれど、ついにN事務長は伝家の宝刀を抜きます。
でも、宝刀はいいけれど、抜いてみたら錆びていたんなんてことにならなければいいですが・・・
「N事務長にTさんが、暴力行為を働いたというのですか?」
「ええ、まあ、そういうことになります」
「その現場には、どなたかいらっしゃいましたか?」
「当院は院長と看護部長、そしてTさんの付添の皆さまが見ておられました」
「もう少し詳しくお話を聞いてもいいですか?」
ここは、少し勿体ぶって・・・
「・・・あまり、思い出したくもないですが・・・」
「どうしてそうなったのか、触りだけでも結構です」
「そうですか・・・」
「宜しければ、怪我の状況なども教えて頂きたく思います」
もう少し、引っ張ってみようかな・・・でもここらが潮時かな・・・
「うーん・・・じゃあ・・・」
「しかと、お伺いさせて頂きます」
「あの日は、Tさんがどうして当院で診療をしてくらないのかときちんとした場所で聞きたいというので、院長が説明をするということになりました」
「病院の代表、そして医師としての見解ということですね」
「ええ、そういうことになります」
「そこで、暴力行為を働いたということですか?」
「まあまあ、焦らずに・・・この際、O弁護士を信用して、順を追って全てお伝えすることにします」
「有難うございます」
「あの日は・・・」
N事務長は、あの日のことを話し始めます。
1.日時
2.院長の見解
3.それに対するTさんの反応
4.Tさんの矛先がN事務長に向かったこと
5.何故か、N事務長に謝罪を要求したこと
6.これで、Tさんが納得するのならと謝罪をしたこと
7.落とし所、気持の持って行き場の無くなったTさんがN事務長に暴行を働いたこと
8.N事務長は全治2週間の打撲、及びシャツが破れたこと
9.暴行現場の机、椅子なども散乱したこと
10.その時の状況証拠として現場の写真、カルテ内の受傷写真は保存してあること
と順を追って、手短にではありますが、あくまでも第三者的、事務的にO弁護士に話しました。
話を聞き終えたO弁護士は、視線を天井に向けながら、頭は右に傾けています。
何事か、頭の中で考え事をしているに違いありません。
「以上ですが、何かご質問はありますか?」
「もし宜しければ、その写真を見せて頂くわけにはいきませんか?」
「ええ、いいですよ」
そう言って、N事務長は立ちあがり応接室の内線電話を取り上げます。
「Nですが、申し訳ありませんが、私のカルテを応接室まで持ってきて頂けますか・・・はい・・・はい、お願いします」
「お手数かけます」
「いえ、構いません。あと、その時の報告書を事務室から持ってきますので、暫くお待ち頂けますか」
「はい・・・」
そう言って、N事務長は応接室を出て事務長室に入ります。
事務長室の書類棚からリスクマネージメントのファイルに収納してあるTさんに関する報告書を取り出し、小脇に抱えて応接室に戻ります。
以下 ●●O弁護士Ⅷ●● は147に続く